探偵ノート

第031号 – ことばって難しい!でも大切ですね。

Update:

テーマ『ことばって難しい!でも大切ですね。』

Interviewer: 峪田 晴香

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たまには辞書を読んでみることも大切。

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街歩き。写真を選びながらキーワードを挙げていく。

峪田:香港や中国の仕事では、メールだと時間がかかるといって電話が好まれることがあります。図や絵を使わずに言葉だけでどう正確に伝えるかを考えさせられます。

面出:峪田さんは言葉は得意なの?小さいころから日記を書いたり、おしゃべりだったりしていた?

峪田:不得意ですね。とくに文章が、分かりにくいものになってしまいます。そして、擬態語や擬音語に頼ってきちんと言葉に置き換えて説明することを怠っていたなと思います。英語で仕事をするようになって、そのことに気づきました。「ふわっとした」とか「ふんわりした」とか、感覚で言っていたものを、どう説明したらいいんだろうと。
英語が母国語でない同士で話すときは、英語の力量もばらばらです。文法にも話し手の癖のようなものがあって意味を取り違えたり、単語の解釈も違うことがある。相手に思いを正確に伝えるには、話し方や言葉の選び方があると思います。
面出さんは言葉で気を付けたり、意識していることはありますか。

面出:聴衆がたくさんいるレクチャーでは自分が発する言葉のどこかに感じてくれれば良い…とだけ思っているけど、それと仕事上の会話は違う。誤解ないように伝えるのはけっこう難しいよね。たとえば”Glare”という言葉はよく使うけど、その度に注釈を付け加えるべきかもしれない。「うん、うん」とうなづいているけど、正確に解っていないことが多いと思うよ。とりわけアジア諸国では伝わればいい英語を話している。細かな機微や意味を伝えづらく、ボキャブラリーが理解できないだけでなく、英語を文化として理解できないという課題がある。

峪田:そうですね。シンガポールでも香港でも、ローカル英語は伝えようとする勢いがあると思います。

面出:英語を話すときに気を付けていることは、分かりやすく伝えることです。だから日本語より英語のレクチャーのほうがいい時がある。日本語だと細かな機微を伝えられるから、いろんなニュアンスを言い過ぎたり、抽象的になったり。自分の思いが相手に伝わらないことがある。逆に英語の少ない語彙で伝えるには、ロジックもしっかりしていないといけないし、言いたいことを単純化しないといけない。それは使い慣れた日本語ではないための潔さかもしれない。

峪田:この間の香港で行った探偵団街歩きで、香港、フランス、南アフリカ出身の建築家たちが、光を表すキーワードやボキャブラリー、表現が多種多様でした。同じような意味でも少しずつ細かく言い分けている。自分がいかにいつも同じ言葉しか使っていないかに気づかされました。

面出:日本語も英語も上達しないといけないよね。母国語でない言葉で話すことはストレスを感じることが多いけど、トレーニングになる。ことばを楽しめるようになりたいね。

峪田:仕事上は理解しやすい言葉で簡単に話すことが大切です。でも思考は言葉で成っているので、ボキャブラリーが少ないということは豊かではないと思います。

面出:怒られちゃうかもしれないけど、言葉が苦手で、言葉を回避して絵で伝えちゃうタイプのデザイナーは多いんじゃないかな。唯一、建築家は言葉で自説を語ろうと努力する。光にしても音や味にしても非常に感覚的なので、言葉にするのは難しいから、僕もレクチャーでプロジェクト写真を見せて終わっちゃうこともある。でもそうするとそこにたいした批評が起きない。批評の対象になる主義主張ではなく、「かっこいい、かっこ悪い」の話になってしまう。

峪田:それは聞き手からの批評ということで、レクチャーの中でご自分で作品を批評することはないですか。

面出:もちろん自己批判はしますよ。何故そのようなデザインを目指したか、を語りたいと常に思っている。

峪田:私はそこにある建築のデザインから発想して、背景にある論説を持ててないかもしれません。

面出:実務に主義主張が求められるかどうかは分からない。だけど、どうあるべきかということは隠れた批評にはなるよね。
話を言葉の大切さに戻すと、照明デザイナーは言葉に対して意外に無頓着で無責任ということかな。仕事では明確に伝えることが大切だけど、日常生活では意味が不明瞭であるけど愛らしい言葉であったり、言葉のトーンや響きも重要だよね。明確でないものも私達は持ってるからね。

峪田:言葉にこだわって表現を豊かにすることは大切ですね。まずは今度のコンセプトプレゼンテーションでこだわってみたいなと思います。

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