探偵ノート

vol.07 技ありの和風ライトアップ ~新宿高島屋~

Update:

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私たちは西新宿・パークタワーの最上階あたりに昇ってみた。確かこの辺に来ると、あちら方面にぽつんと都市行灯が見えるのだけれど……。希望的観測は見事にはずれ、巨大な都市行灯のように見えるはずのライトアップされた新宿高島屋は、その後に工事の進んだJR東日本本社ビルの影になってしまっている。あ~残念。新宿御苑の暗闇を背景に、美しく輝く高島屋を見下せるビルの窓はいずこに……。

例外なき経済不況を生きのびるには、デパート自体のコンセプトや商環境の作り方にも大変革が必要だ。デパートで買い物をすることのステータスシンボル性は消えて、生活密着型へ、そして総合的な生活文化型、エンターテイメント型へ、の志向が読みとれる。従来の価値を革新する、そのためのランドマークづくりに高島屋は一石を投じた。

光の喧噪を誇る新宿には従来的なライトアップは流行らない。東西南北、全てのファサードを全面的に行灯仕掛けにする発想は実にユニークだ。日中に太陽のエネルギーをしっかり受けて輝き、日が暮れだすと蓄積した太陽のエネルギーを放出するかのように建築全体が発光する。夜に内部から発光する様子は、自然な共感を呼ぶ。これぞ和風ライトアップの原点だ。

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この洗練された照明効果の仕掛けには多くの苦労があった様子。それぞれ使い勝手の異なる事情を持ったフロアーを、和紙を貼り付けた特殊ガラスと内部からの蛍光灯ウォールウォッシャー器具で統一している。デパートの裏動線になるところも多いので、在庫商品などを窓側に置かないようなルールを作っているとか……。この執拗さには脱帽するしかない。この真っ白な和紙障子風のファサードは、仮設のアートワークにも利用されていた。赤い矢印のグラフィックスは、建築自体に軽快な動きを与えている。

デパートの店内も「美術館デパート」「ハイテクオフィス・デパート」というコンセプトの照明計画がされている。新時代への脱皮をはかるデパート業界に、さて出口が切り開かれるのだろうか。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 5 4 3 4
あかりの量/適光適所・明るさ感 5 4 5 4
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 3 3 3 3
あかりの個性/照明デザインの新しさ 4 4 3 4
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 3 3 3 3
合 計 20 18 17 18
総合評価 ★★★
(18.25点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

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