探偵ノート

vol.12 光のペテン師と眠れぬ緑たち ~渥美半島/電照菊の里~

Update:

vol.12_01
vol.12_02

事件は愛知県の渥美半島で、秋の夜長に毎夜のように起きていると聞いていた。ひっそりと夜を迎えた闇夜の農村が、真夜中になると、あっと言う間に電飾に包まれる。野心的な照明デザイナーにとっては必見の環境だと・・・。

愛知県渥美半島赤羽根町は電照菊日本一の人口6千人ほどの町。東海道線の豊橋から車で1時間ほど走ると突然、数百棟もの電照温室が横たわる光景に出会う。ビニールハウスと思っていたが、実はガラスハウスの方が多い。中にはポリカーボネートの波板のようなものもあり、材質の僅かな違いによっても発光の仕方や雰囲気が異なって見える。以前からわれわれ照明探偵団の「光の事件簿」に登録された写真で、私はその絢爛たる美しさを目にしていたが、この環境に実際身を投じてみると興奮の度合いが断然増幅されてくる。毎夜11時から4時間ほど白熱ランプの光を照射して、光周性を利用した菊の開花時期を調節している。

私たちは車を捨てて人影の全くない光の海に吸い込まれて歩き出す。ここはまるで宇宙との交信基地、あるいはクリストの作ったアースアート会場か。輝く家々を前後左右に抱えながら整然と直行する道を海に向かって下りていく。何か通常でない気配を感じる。気持ちが少しドキドキする。何でこんなに高揚した気分にさせられるのだろう?

vol.12_03vol.12_04

ここ電照菊の里に住んでいる住民にとっては至って普通の夜の景色に違いない。毎日のように目にしていればそれが普通なのだから。私たち外来者が異常な興奮を覚えるのは電照温室の輝きの度合いではない。ここに横たわる[静けさ・暗さ・臭さ]の共演が原因している。シーンとした静けさでなく鈴虫の声。発光するハウスの輪郭をくっきりと表現する地の暗さ。農家の家畜小屋から流れてくる納得できる天然風。 こうしてみるとつくづく感動とは立体的なもので、4次元的なもので、五感全ての相乗効果であることを理解する。 ハウスの中を覗いてみると100Wの普通電球が吊るされているだけ。1日24時間を3日分ほどに偽られ騙され続けている幼い菊の苗が、ひっそりと呼吸していた。私たち貧欲な人間=光のペテン師は、かくも美しい夜を演出するか。いよいよ皮肉なものだ。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 5 5 5 5
あかりの量/適光適所・明るさ感 4 5 5 4
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 5 4 4 5
あかりの個性/照明デザインの新しさ 5 3 3 4
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 4 4 3 4
合 計 23 21 20 22
総合評価 ★★★★
(21.50点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

関連する投稿

おすすめの投稿

PAGE TOP