探偵ノート

vol.20 茶の間感覚のお洒落 ~東京西麻布のクラブ・スペース ラボ イエロー~

Update:

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地下2回のダンスフロアの片隅で、淺川さんが三脚を小さく立てながらシャッターをきっている。ここではストロボ撮影が禁止されているそうだ。こんな真っ暗な空間で、レンズを通して一体どんな画像が現れてくるのだろう。写真家の目は天井方向に向いている。出来上がりが楽しみだ。

ここ西麻布の「イエロー」は、今はやりのクラブの中でも老舗として知られる通の店。腕のいいDJが活躍するので、ことさら人気が高い。今日は給料日直後の金曜日なのに、期待したほど賑わった感じもない。サッカーのワールドカップ、日本VSジャマイカ戦が、ちょうど今始まったばかりだったためである。これ幸いとジントニック片手に少し体をくねらせながら、迷路のようなクラブ空間の探偵に入る。

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メインのダンスフロアはもちろん黒一色の内装の世界だ。かつてのディスコのようなレーザーやバリーライトのような手の込んだ照明装置は一切ない。シンプルなピンスポと、簡単なエフェクトマシン、パターンプロジェクターなどで構成されて、壁から天井にかけて斜めに吊られた白い紗幕のみが、闇に飛び交う光を拾っている。古臭いミラーボールも安易な働きをしている。何て単純な光の仕掛けだろう。また、このダンスフロアに隣接して気怠い光に満たされたバーラウンジがある。ほんのりと赤い光が、ブラックライトの青白い光に対比し、壁には弱々しく液晶のVTR映画が投影されている。ここに屯する人たちは踊るつもりもなく淡々としたリズムで飲んでいる。

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昔流行ったディスコには空間の斬新さがあった。光にも日々革新する技術が駆使されて、最先端の刺戟を与えることが要求されていた。しかしクラブには全くそれがない。ここはごく普通の安らぎを求める空間で、1メートル内外の切り取られた空間以外の背景は、皆おぼろに存在する。ここに来る人は、それぞれに孤独を癒している風だ。相互に無益な干渉を避けているように見える。ナンパもないのかも知れない。美しい闇に包まれたコンビニエンスストアのようだ。そう思うと茶の間風なぬるい光の照明演出が妙にいとおしい。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 4 3 4 5
あかりの量/適光適所・明るさ感 4 4 5 4
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 5 3 4 5
あかりの個性/照明デザインの新しさ 5 3 5 5
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 4 4 4 4
合 計 22 17 22 23
総合評価 ★★★★
(21.00点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

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