探偵ノート

第030号 – Guggenheim Bilbao 万歳!

Update:

Frank O. Garry の設計したBilbao Guggenheim Museum を積年の思いで訪ねました。なぜ積年かというと、そこを訪れた誰もが「大変いい美術館でした」という賛辞を送るばかりで、あのぐじゃぐじゃした不可思議な形態の美術館を悪く言う友人に会ったことがなかったからです。どうしてか・・・。あのぐじゃぐじゃした・・・・。う~ん・・・・。自分の目でしっかり見なければ。

というのも、私は半ばこのF. O.Gerryという鬼才の臭いを嫌っていた感があり、美術館というのはできるだけ楚々として、かの Louis I. Kahn の名作のように強く自我を主張しないものだ、と信じていたからです。特に現代アートを収めるための美術館という器は、極力シンプルに機能的に展示空間のフレキシビリティを保証すべきで、Gerryの建築はあまりにそのものの芸術性を狙いすぎている、と批判してました。彼の押し付けがましく有り余る個性を好きになれなかったのです。だから、かのFrank L. Right 設計の本家NYCのGuggenheimでさえ、建築的には見事だけれど、螺旋状のスロープ展示室は、やはりいただけない・・・と思っていたし、HansHolain のいくつかの名作でさえ、好みではなかったのです。

しかし、この美術館には脱帽しました。私の浅薄な想像は打ち砕かれました。すばらしい美術館です。建築は人を自然に回遊させるすばらしい彫刻作品になりえました。こんな複雑怪奇な寸法と形態をしていながら、そこに安置されている多くの現代アートより以上の迫力ある造形美を見せています。切り取られた空間の形とボリュームに引き付けられます。これは建築家が芸術家の端くれとして十分に認められるべき成果です。

私は偶然、ほぼ1年前にNYCで開催されたGarryの建築作品展を見る機会を得ました。おびただしい数の設計プロセスを示す図面や模型が展示され、その設計にかかるエネルギーに圧倒されたのですが、それよりも、こんなにたくさんのゴミのような建築模型を、しかも何十年も捨てずに保存していることにびっくりしました。普通だったら「そのゴミ捨てろ!」というようなものまで丁寧に展示されているのです。つまり、自分たちのデザインの結果だけでなく設計の格闘そのものを、かなり重要に誇りを持って語る機会を待っていたに違いないのです。とてつもなくエネルギッシュな展覧会でした。

Bilbaoでは1階から3階までの展示室を細かく回遊してきました。残念なことに館内での写真撮影が禁止されていました。なんと心の狭いことでしょう。もちろんいくらかは黙って撮影してきましたが。照明はすこぶる簡素で十分な効果のシステムに集約しています。天井直付けにされた箱型のウォールウォッシャー器具と、低電圧スポットライトがペアになったもので、色々な展示に対応しています。それと建築構造を少しライトアップしているスポットは梁と同色(グレー)に塗られた低電圧スポットです。ERCOの自信作だそうで、彼らのPR誌に詳しく紹介されています。とても複雑な建築にシンプルな照明システム。照明器具の存在は目立つのですが、それをわずらわしく感じさせないほどの迫力ある内部空間でした。ひたすら脱帽、眼からうろこ・・・の体験報告まで。

020807 Bilbaoにて

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