世界都市照明調査

東京:目黒川

東京調査:目黒川

2015.11.04  岩永光樹 + 荒木友里 

目黒川といえばお花見の名所であり、おしゃれな店がたち並ぶ人気のエリアであるが、夜にこの場所を訪れるとその暗さに驚く。それでもこの川沿いの道を好む人は多く、暗くても怖さを感じさせない。
東京の他のきらびやかな街とは一線を画く、目黒川の愛される暗さの秘密を調査した。

DSCN4695
目黒川の俯瞰写真。川自体は真っ暗で、両サイドには街路灯の明かりが等間隔に見える。また、周辺の建物は高さが低いため遠くまで見渡すことができ景色が良く見渡せ、住むにも人気のエリアであることがよくわかる。

■目黒川沿いの景観について
今回調査した目黒川沿いの通りは、池尻大橋駅~中目黒駅の約1km程の区間。池尻大橋駅近くではマンションが多く、中間地点には衣料販店、中目黒駅に近づくにつれて飲食店が増えていく。また、このエリアは「景観軸特定区域」とされており、目黒川に対する眺望を確保し歩くことが楽しい空間になることを目指した景観への取組を行っている。

■街路灯について

DSC_0040
DSC_0064
上の写真は水銀灯が使用されたポール灯の区間で、下の写真は電球色のLEDが使用されている区間。ポール灯の電球色とお店の明かりが調和されており明るさも丁度良く、心地良い光環境である。

目黒川の街路灯について特筆すべきことは、ポール灯とその光源の多様さである。
ポール灯は、目黒川を横断する道ごとに5m前後の高さのあるポール灯があり、その間に3mほどの低いポール灯が等間隔に並ぶ構成となっている。驚いたのは、高さのあるポール灯には7つも種類があったことだ。外観から察するに、おそらく同時期に設置されたものであるが、少しずつ変化が加えられており、非常にバリエーションに富んでいた。
池尻大橋側のポール灯の光源には100W程度の水銀灯が使用されており、路面照度はポール灯真横の道路中心で3.6lx、ポール灯間では0.6lxとなった。『道路の移動円滑化整備ガイドライン』(国土交通省)では、高齢者や身体障害者等に対する視認性を配慮して、「水平面照度10 lx以上を確保することが望ましい」とされているため、非常に暗い路面となっているといえるが、後述するように店舗等の照明によって非常にうまくカバーされていた。
興味深かったのは、ある一つのポール灯にのみ反射板が取り付けられていたことだ。おそらく反射板は付近のマンションを考慮してあとからつけられたものだろうと推測される。
さらに、中目黒駅に近い区間では、ポール灯の光源が電球色のLEDとなっていた。輝度が9000cd/㎡近くあり、まぶしいことは確かであるが、川沿いの店舗照明とよく調和していて非常に落ち着ける空間となっていた。路面照度はポール灯の真横の道路中心で22lx、ポール灯間では3lxあり、水銀灯で照らされていた区間より明るくなっていた。
また、一部区間では色温度の高いLED電球が光源として使用されているなど光源の種類は実に多様であった。
(荒木友里)

街路灯
7種類あるうちの4種類のポール灯写真。高さはほとんど変わらず、素材も一緒であるが、すこしずつデザインに変化が加えられており、バリエーションに富んでいた。

■明るさを補うあかりについて

151126_目黒川断面スケッチ

目黒川をはさむ通りの断面スケッチ

目黒川沿いを構成するエレメントは非常に多い。
マンション、オフィス、工場、飲食店、アパレル、文房具屋、美容院、本屋・・・このように列挙すればまるで商店街のようだが、商店街ほどのにぎやかさや雑多な印象はない。日が沈むとそのエレメントが各々のかたちで光をまとい通りを彩る。統一感はないが薄暗い無機質な道路に光のリズムをつくる。
マンションは路面照度約10.0lx以上の光のウェルカムマットをつくり帰ってくる住人を出迎える。飲食店も店先の路面照度を約50.0lx程度とり通行人の足をとめる。店内の様子がのぞけそうな窓は約20~40cd/㎡のやわらかい光を放ち客を店内へ誘う。食物販や美容院の看板はすこし強気に約80cd/㎡の輝度で通行人の注目を集める。
たまに通りかかる車のヘッドライト以外にまぶしさを感じさせる光はなく、各々のエレメントが調和しあっている。

DSC_0029
帰ってくる住人を出迎えるマンション前の光
DSC_0032
有名カステラ屋は甘い香りと高輝度看板でアピール
DSC_0013
有名カステラ屋は甘い香りと高輝度看板でアピール

■まとめ
目黒川沿いの通りは街路灯にしても飲食店や物販店などの店舗にしても、明るさや色温度や輝度はばらばらで一見無秩序な光を設えた通りだと感じる。しかし、住宅やオフィスもあるせいか明るすぎたり、まぶしすぎたりする野蛮な光はまったくなく、街路灯+アプローチライトで適正路面照度をつくるような一体感は川沿いを通して感じられる。
目黒川沿いの照明計画は総じて、その地域から自然発生した照度基準をもっていて、明るい=目立つという安直な考え方は感じられない。
通りの真ん中をながれる目黒川も暗がりのままなのは車も通らず、人も通らず、覗き込まなければ見えないようなところにあかりは不要だからだと推測できる。その代わりに、目黒川の桜が花開く頃はライトアップされた木々が光を放ち、通りや川をやわらかく照らす。
不要な光がほとんどない目黒川沿いの通りの姿は隣を並走する山手通りをはじめとする都内さまざまな通りの手本となりうると考える。街路灯だけではなくその通りに並ぶ建築郡が放つ明かりも含めた適度な明るさが目黒川の愛される暗さの正体なのかもしれない。
(岩永光樹)

関連する投稿

おすすめの投稿

PAGE TOP