探偵ノート

第35号 – 照明デザイン学?

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テーマ『照明デザイン学?』

Interviewer: 荒木 友里

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荒木:今日は学問の視点からみた照明デザインというテーマでお話したいと思います。
私は大学時代に建築学専攻で勉強してきました。建築というのはとても古い時代からの知見で、建築とはこうあるべきなんだ、という確固たる主張や理論が一番最初にあって、それが時代の流れの中でアレンジされさまざまな様式が生まれて、というようにして発展してきました。照明デザインというのはまだ歴史が浅く、こうあるべきだという理論があるわけでもないですよね。明確なスタート地点がなく、これからどう進んでいくのかという疑問を持っています。
また、最近ではデザインという言葉がいろんなところで使われますが、芸大や美大での純粋なデザインの授業というものを受けたことがないので、デザインと学問が私のなかでは結びつきません。高度経済成長期に生まれた日本の白くて明るすぎる照明や、LPAのしばしば暗いといわれてしまうデザインスタイルも様式の一つといえなくもないですが、面出さんはその辺をどんな風に思っていますか。

面出:おおっ、今日は初めからかなり硬い質問だね。ううーん、照明デザインは荒木さんが考えているよりもっと柔らかい分野の仕事だと思うよ。よく料理人にたとえて話をするのだけど、すばらしい料理人は本当にたくさんの技や主張をもっている。だけど、その技を発揮するためには、一番大事なセオリーをしっていないといけないし、食べる相手のこともよく解っていないといけない。喜ばせたり楽しませたりするために・・・。

荒木:面出さんは照明デザインのセオリーを最初にどこで学んだのですか?

面出:80%の理屈は本に書いてある。照明学会発行の書籍で基本的な技術や視覚心理は学んだ。たとえば、色温度と照度やプルキンエ現象だったり・・・。照明ハンドブックはぼろぼろになるまで読み込んだよ。

荒木:照明学というセオリーがあり、それを自分の中で消化して、照明デザインが成り立つのですね。

面出:あなたは現在の照明デザインが学問として成立しないことにいらいらしていたりするの?

荒木:いらいらではなくて、私はもっといろんな人に照明デザインというものを理解してほしいと思っています。そのためには、やはりベースとして確固たる主張が必要で、それに対する批判があって発展していく、それは学問ですよね。でも照明デザインではそういう場が少なくて、とてももったいないと思います。面出さんは照明学と照明デザインは別のものであって、照明デザインというのは学問になりえないと考えているのですか?

面出:建築学会には建築学、照明学会には照明学とか建築学という学術体系が備わっているけど、デザイン学という分野がこれと同様に成り立つかどうか微妙だと考えている。音楽学や美学はいいけどね。しかし照明デザインは照明学を学ぶことで8割の仕事は理論で説明できる。あとの2割は、姑息な説明なく飛べ、と言っている。

荒木:飛ぶ、ですか?アイディアを飛躍させろということですか?

面出:自分の夢や感性を信じるということかな。理由がうまく説明できない部分が必要ということだね。

荒木:なるほど?例えば、東京駅のデザインでいうとその2割はどこですか。

面出:均一でなくわざと陰影をつけたことかな。あんなふうにメリハリをつけるということは全ての人が望んでることではないと思うんだよ。この部分は7:5:2の割合で、なんて、それをどうしてですかって質問する人もいないし、僕も「美しいでしょ」としか答えられない。グラデーションとには日本的な空間構成の理屈があるけれど、陰影はそうじゃない。あとは、2つのドーム屋根に動めく青い光かな。青いところがひゅっと回ってきたら素敵じゃないですか、みたいなね。
この2割を加えるところがデザイナーにとってとても大切だと思う。

荒木:私はLPAに入って、計算で詰めていく部分がとても多くて驚きました。もっと感覚的に進めていく部分が多いのだと思っていましたから。シンガポールオフィスにインターンとして行った際に、僕たちはアーティストじゃなくてデザイナーなんだ、と言われたことがあって、なるほどこういうことかと実感しました。面出さんは理性と感性を使い分けているのですね。

面出:それと最後に重要なのは、デザイナーのポリシーだと思うよ。「どんなものでも御要望に応えて仕事をします。」というのがデザイナーの基本姿勢だけれど、何でもやる、というものでもない。ポリシーをもって仕事したいよね。

荒木:セオリーがあって、ポリシーがあって、デザインがある、ということですね。私自身もポリシーをもって、これからもっと照明デザインが発展していくように精進します。

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