探偵ノート

第44号 – 真似から始まるデザイン

Update:

テーマ『真似から始まるデザイン』

Interviewer: 田中 謙太郎

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田中:今日は元々、個々の照明デザイナーの著作権がどのように守られていくべきか?という少々重いテーマを考えていたのですが、もう少し柔らかくとらえて「真似る」というテーマについて話してみたいと思います。
いきなりですけど、完全コピーはいけないことですが真似って大事ですよね?

面出:そうだね。真似される事は名誉なことだけど、真似るという行為は時には下品さだけが目立つことがあるよね。
謙太郎さんは今まで人の真似をしてきたことある?僕はずいぶん人の所作を真似してきたよ。

田中:そもそも真似っていうのはデザインの世界ではいっぱいあると思うんですよ。マークだとかプロダクト、ファッションなどで、よくその手の話がありますよね。

面出:それは、「真似」ではなく「盗用」っていうんだよ。明らかに著作権侵害になるという、超えてはいけない一線っていうのはある。しかし、どんなに偉大な設計者やデザイナーも、つまり先人を乗り越えようとしてきた。

田中:確かにそうですよね。明らかな悪意がある行為は「パクリ」でしょうね。そこの線引きが難しいところです。学ぼうという意識の人はまだ良いですが、使っちゃおうという意識の人は良くないですよね。
デザインを仕事としてやっていると、どこかで見た景色が記憶に残っていて、それを違う形に変化させて表現してしまう。デザインって意識のどこかで何かをミックスさせる作業なんだと思います。完全に宇宙の彼方からやってきたようなモノはなかなか出てこないと思うんですよね。

面出:でも真似されるようなデザイナーになりたいね。僕は美術を志した高校生のころ、たくさんの世界的な名画を模写したよ。模写は大切だね。おそらく全ての先人たちが先人の真似をして学んできたんだと思うよ。真似っていうのは「まねぶ」という語源で「学ぶ」という意味があったらしい。昔、 Philip Johnson設計のAT&Tビルの外観照明でビルトップに出ているわずかな煙を照らしている照明があって、それがとても素晴らしかった。忘れられない光景だったよ。それ以降はいつも、わずかな煙を見るたびに美しく照らしたいなと思ってしまう。

田中:デザインをしていると、記憶に残る場面がありますが、それはなぜ美しかったのか?という奥底の秘めた部分を記憶していると思うんです。その点、照明デザインは物体として見えないものだから判断が難しいですよね。

面出:そうだね、光の効果はおぼろげにしか記憶をしていないことがあるね。
話を戻すと、僕はよく先人の所作も真似てきた。田中一光さん、杉本貴志さん、そして原広司さん、伊東豊雄さんたちだ。

田中:所作もデザイナーの大切なスパイスですよね。僕も打合せとかで出会う人のプレゼンテーションの声とかスピードや手の動きなど、いいなぁ、と感じたことはすごく記憶に残っていますし、気が付くとその真似ごとをしている事がよくあります。最近ではプレゼンテーションで内容を聞くというよりは、全ての所作を観察していることも多いです。

面出:でも、いろいろな所作を見ていてもあまり自分では真似できないな、合わないな、と思うこともあるから、無意識に選別しているんだろうね。

田中:大袈裟かもしれませんけど、そういう場面に遭遇できたことは人生においてとっても有益なことですよね。本当に最近そう思います。所作を素晴らしいと感じさせる人っていうのは、結局その人の生き方に素晴らしさがあって、自分自身の物事への捉え方に良い影響を与えてくれると思うんです。人生論みたいな話ですけど影響を受けるって大事だと思います。

面出:自分を変えたいと思うなら生活スタイルを物理的に変えていかないと駄目なんだろうね。
小さな事でも所作を変えると自分が変わる。色々と好奇心をもって、良いと思ったことを真似してみるのは楽しいと思う。スケッチも良い線を何回も真似ることで、今までとはまったく違う良いスケッチが描けるようになってくる。昔の画家の模写と同じだよね。

田中:そうですよね。最初の頃、先輩デザイナーから同じ事を言われたことを思い出しました。でも完全に真似できないものだと思うので、最終的にはそのミックスされた所作がそれぞれの個性となっていくのでしょうね。
デザインは真似したり、真似されたりする事の連続だと思いますが、そこに埋もれるのではなく、好奇心を武器に冒険することが真似されるような新しいデザインを生み出す原動力だと改めて気付きました。

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