照明探偵団通信

照明探偵団通信vol.88

Update:

発行日:2018年5月16日
・照明探偵団倶楽部活動1/第60回街歩き:自由が丘 (2018/04/06)
・照明探偵団倶楽部活動2/第58回照明探偵団サロン (2018/04/16)
・照明探偵団倶楽部活動3/照明探偵団総会&入門講座 (2018/05/08)

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第60回街歩き:自由が丘

2018/04/06  小口尚子 + 坂口真一+三浦大輔+張文源

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街歩きMAP

おしゃれな街として名高い自由が丘。各通りにはそれぞれ自由通りや学園通り、マリ・クレール通り、メイプル通り、女神通りなどの名前がついており、思わず立ち寄ってしまいたくなる雑貨屋、カフェ、スイーツショップが密集しています。
その評判のとおり夜もおしゃれな光環境になっているのかを調べてきました。

住みたい街ランキングも上位に入る自由が丘。今回は自由が丘の駅から延びるいろいろな通りを“おしゃれ”を切り口に街歩きしました。

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街歩き概要を説明する小口団員
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英雄との声が多かったヒロ・ストリート
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しらかば通りの住宅に添架された街灯
写真8脇道(横丁)
脇道には提灯にひきよせられそうな横丁も
(写真5)グリーン・ストリートのアンバランスな街灯
グリーン・ストリートのアンバランスな街灯
(写真4)グリーン・ストリートでくつろぐ人々
グリーン・ストリートのベンチでくつろぐ人々
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住宅街の街路灯 色温度:4300K、床面照度: 19lux
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壁面に過剰なスポットライトが設置
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街歩き後の懇親会の様子

■A班(しらかば通り、学園通り、住宅街)
A班はまず駅前ロータリーの間の小道、しらかば通りを歩きました。新旧の店舗が混在している通りで、古くからある街灯が住宅の壁に添架されている日本では珍しい光景もありました。街路灯・看板・店舗から出る光の色温度は高い上に眩しい印象でしたが、歩く際の安心感はありました。
次に学園通りを歩きました。各店舗のファサードからの光は華やかながらも電球色で落ち着いた印象を与えているのに対し、規則的に設置されている街路灯が高色温度でグレアの強いLED光源に交換されていて景観を損ねていました。しかし、ファサードから漏れる光の面積の比率が高くなると街路灯の眩しさは若干軽減されるようにも感じました。
学園通りから少し入ったサンセットアレイ通りの街路灯は他の通りと同じく色温度の高いLEDに交換されていましたが、下方向にのみ照射するフルカットオフ型のポールヘッドが使用されており、通行人に眩しさを与えないように配慮がされていました。またそれぞれテナントから漏れる電球色の光が柔らかく通りを照らしていて心地よい明るさだと感じました。
唯一通った住宅街は自由が丘らしさというものは特に感じず、比較的どこの街でも見られるような光環境でした。優しい光を放つ行灯のようなものがあれば、夜道も心地よいものになると感じました。
最後に歩いたヒロ・ストリートでは、街路灯にアール形状の通りの名前を記したサインを組み合わせていたのが通りとしての輪郭を作っていて、デザイン意図を感じ取ることができました。
最先端の店舗がめまぐるしく変わる中、古い住宅も意外と多く、様々な文化が混在している自由が丘。「おしゃれな街」という印象を光の観点から再考できる街歩きでした。(小口尚子)

■B班(女神通り、カトレア通り)
自由が丘はどこの通りもそれぞれ特徴的かと思いきや、街灯の種類は様々でしたが、色温度はみんな高めで白い光があふれていました。これをもっと暖色系にという意見が多かった気がしますが、私個人的には車が多い通りならこれもありかなと思いました。(車が通らない通りなら暖色系がいいとは思いますが)また通りをつなぐ小さな脇道が随所にありますが、同じように街路灯の色温度が高い。これは暖色系に変えてもいいのではないかと感じました。そんな脇道も大通りと比べるといい雰囲気だったのは、レンガ調や石畳など道路の舗装に工夫があったからだと思います。舗装を変えるだけでも雰囲気はだいぶ変わります。(駅のホームもそうです)舗装に合わせて街路灯の色温度も決めるといいのにと思いました。
個々のお店はどれも自由が丘というブランドを意識してか温かみのある、人を(特におしゃれや流行に敏感な人を?)ひきつける魅力ある明かりの店舗が多いと感じました。最近では、虎ノ門ヒルズ周辺や、前回街歩きした柏の葉キャンパス周辺など、各所で駅周辺の街づくりも行われています。そういう意味では自由が丘は昭和の時代に作られた、ある意味ちょっとひと昔まえの街だと感じました。駅の近くの昔からのデパートや居酒屋が並ぶ通りでその雰囲気を感じられます。個人的にはかつての勢いは感じられなくなってきた印象の自由が丘。今後どのように変わっていくのでしょうか。自由が丘も昭和から平成そして新しい年号へ。これからの変化が楽しみだなと感じる街でした。(坂口真一)

■C班(マリクレール、グリーンストリート)
今回C班は自由が丘駅の南側エリアを担当し、どの通りが一番おしゃれと思うか、メンバー各自おススメの「通り」とその理由を探しながら街歩きをしました。街歩きした経路は、自由が丘駅を出て、マリ・クレール通り、自由通り、すずかけ通りを経てグリーン・ストリートから最後ヒロ・ストリートを通って自由が丘駅に戻るルートでした。
自由が丘の通りはそれぞれ特徴があります。通りが変わると街路灯のデザインや色温度が異なり雰囲気がガラッと変わるので、全く退屈しませんでした。また近くで寄ってみたり遠く離れてみたりするなど、見る角度を変えることによって英雄と犯罪者が変化し、一番おしゃれな通りを選定するのはなかなか難しかったです。英雄と犯罪者がカオスに混ざり合う街の中で、班のメンバーからマリ・クレール通りやグリーン・ストリートなどがおススメとして挙げられましたが、街全体や通り全体もさることながら、自由が丘に各々点在するお店の照明に対するこだわりや工夫がたくさん見られて、通りに面した小さい路地の中にも自由が丘らしさが出ていて素敵だという意見も出ました。
全体を通して自由が丘の街は古くからの街が自然に発展した様に感じられます。新しいお店が並んでいる中に昔ながらのお店も並んでいたり、一つ通りを外れると静かな住宅街が広がっていたり、駅前にお洒落な美容院があれば学習塾も並んでいたり、その間で駅を眺めながら花見宴会が行われていたり、おしゃれな商業空間と日常生活の空間がボーダーレスに存在しており、それぞれの光が集まって街を創っているところに自由が丘の“オシャレ”さがあるのではないかと感じました。
興味がある方は、英雄と犯罪者がカオスに存在する魅力的な街、自由が丘を街歩きしてお気に入りの「通り」を探してみるのも面白いかもしれません。(三浦大輔)

■D班 (メープルストリート、すずかけ通り)
D班はわかくさ通り、しらかば通り、メープルストリートとすずかけ通りを歩きました。低層棟の商業施設の賑やかさと高級住宅街の穏やかさに応じて光の色を使い分け、緑が茂っている街の美しさを際立たせるような明かりがありました。
メープルストリートでは、 低い色温度の照明が主に用いられていて統一感がありました。多くの建築にファサードを照らす為のスポットライトやブラケット照明が取り付けられており、ストリート全体の賑やかさや華やかさが演出されていました。 ただし、スポットライトが過剰に設置され、色温度が低い空間の中に高い色温度の明かりが混在する箇所もありました。例えば、多くのメンバーが「英雄」と評価したパテイオは、キラキラしている小さなLEDの光が、店舗の中の明かりと一体化。色温度は2700K、床面照度は50lux。それに対して、色温度が4000K、床面照度が320luxもあるスポットライトが配置され、グレアを感じる場所もありました。メープルストリートをしばらくいくと、閑静な住宅街になります。 店舗照明の代わりに、スパイク式スポットライトで樹木をライトアップすることで、 緑と建築が調和する雰囲気を演出していました。ただし街路灯が仄暗い中で白く悪目立ちしている所も。街全体に配置されている高い色温度の街路灯は非常に残念な犯罪者に感じられました。
すずかけ通りは商業施設が比較的に少なかったのですが、エスニック風、古民家風など特徴的な店舗があるおかげで、ドラマチックな雰囲気と心地の良い暗さになっていました。
光に対しても意識を向けてそれぞれの店舗や建築が作られている印象でした。緑のにぎわいと光のコントラスト、調和の中に生まれてくる建築と人のドラマが、自由が丘の魅力なのかもしれません。(張文源)

第58回照明探偵団サロン

自由が丘街歩きレビュー
2018/04/16  山本幹根+東悟子

東京でも人気の町自由が丘。街歩きの最中もたくさんの人で賑わっておりその噂は本物。“おしゃれ”をテーマとした今回の街歩き。各班、おしゃれなストリートを発見できたのでしょうか。

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LPAの2階に24名が集まり、街歩きレビューを開催

4月6日に開催した自由が丘街歩きのレビューを行いました。街歩きのテーマは”おしゃれストリートを探せ”。想像していたとおり自由が丘の夜はおしゃれだったのでしょうか。街歩きで分かれたAからD班、それぞれが選んだベストおしゃれストリートを発表しました。

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発表用PPTからの抜粋
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各班毎に街歩きの感想や意見がまとめられ、プレゼンテーション
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発表資料は工夫が凝らされている
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軽食をとりながらの和やかな会に

自由が丘でよく見かけられる石畳やレンガ調の通り。見た目がおしゃれで、アスファルトで舗装された通りと比較すると、何もしなくてもおしゃれな雰囲気を醸し出しています。そのような通りの街路灯はグレアや光害防止のためか下向き方向だけに光がでるようなシェードが使用され、通行人に対しての配慮が感じられたとのコメントが聞かれました。
自由が丘の街路灯は全般的に色温度が高く、反対にお店からの漏れ光は色温度が低いものが多い。色温度に差はあるものの、夜歩くのに心地よい明るさだと感じた団員が多いようでした。ただし住宅街や大通りなどにはまだまだ眩しくて明るすぎる照明があり、雰囲気を壊している印象を受けたとの声もありました。
次々に新しいお店がオープンし流行を発信している印象の自由が丘ですが、古くからある自由が丘デパート、ひかり街、昭和の赤ちょうちん街を彷彿とさせる横丁のような通りも意外と多く広範囲で存在しています。高い建物もあまりなく個性的な商店街や路地、公園、落ち着きのある住宅地などヒューマンスケールに沿った環境が自由が丘の魅力だと言う意見も。夜間も店先に置かれた看板の照明や店舗からの柔らかい光など、小さな光の群集が心地良さを生み出しているのではないかという感想も聞かれました。
通りの中央が遊歩道になっていて街路樹やベンチが配され、掃除も行き届いている通りでは、夜でもテイクアウトした食事を外で楽しむことのできる居心地のよい空間になっていたようです。
おしゃれで新しいお店と昭和から続く古くからのお店や住宅などボーダレスで混在している街だという意見も。面出団長からは自由が丘ができた頃は、新しいものが溢れていて西洋風の石畳の通りなど積極的に取り入れた街づくりが行われていたが、それも古くなってきて、今は“昔おしゃれだった街”という印象になっているという感想が挙げられました。

最終的には、おしゃれという印象より、居心地のいい通りや夜でも人が外で時間を過ごすのに心地いい空間が点在し、まち全体として“いい街”という印象だったという結論でした。
毎回サロンは街歩き班のリーダーを中心に感想や意見を活発に出し合い、問題点やよかった点についてディスカッションできる場になっています。まとめていただいた資料も素晴らしいので、WEBでも積極的に公開していきたいと考えています。(東悟子)

■サロンに参加した感想
10年ぶりに参加した照明探偵団の街歩き。報告会(サロン)には始めて参加しました。
今回は自由が丘の街歩きの報告会で、4つのチームから調査報告と感想などの発表がありました。
通りの特徴や英雄と犯罪者について写真やコメントなどで丁寧に説明されていたこともあり、街歩きで見てきた場所の雰囲気が伝わってきました。
団員の街を見る視点やコメントも個性的なものからプロのようなものまで様々でした。
また、街が良くなるような提案なども出てきていたのでとても刺激的で内容のある報告会でした。(山本幹根)

照明探偵団総会&入門講座

2018/05/08  黄思濛+東悟子

団員の声を直接聞く機会が少ないと感じていたので、照明探偵団史上初となる“総会”を開催しました。美味しいお酒とお料理も楽しみながら、会話が弾む会となりました。

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夜の街歩きの際に知っておくべき写真撮影のコツなどをわかりやすく解説
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照度計や輝度計なども紹介
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入団のきっかけなどを発表
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探偵団で訪れたい街などの意見交換も

渋谷LPA事務所にて照明探偵団総会&街歩き入門講座を行いました。総会は初、入門講座は2014年に一度開催してから4年。団長含め24名の参加者となりました。また今回は全過程をフェイスブックとインスタグラムで映像を同時配信し、会場に来られない方も参加可能に。終了時には総勢160名を超える方に視聴いただきました。
まず面出団長から照明探偵団の発足から今までの活動や出版物などを紹介。1995年に6名で結成した照明探偵団は今年で会員数980名という大きな団体へと成長していることが報告されました。
その後七つ道具(光学機器、測量機器、ノート&メモ用品)の紹介や測定の仕方、測定場所やコツなどの詳しい説明がありました。
次に街歩きの記録として重要になる写真の撮影方法の解説がありました。照明の写真は夜の暗い環境で撮る事になるので、撮影のテクニックが重要になってきます。三脚を使用した綺麗な夜景写真を撮る場合や、手持ちでスナップ写真を撮る場合等、様々な状況で上手く撮れる技術と推奨設定の説明がされました。
最後に街歩きのまとめ方について、懇親会やサロンだけでなく、パネルを作成したりホームページで投票したり、データベース化したりと街歩きで得た資料の活用の仕方が紹介されました。
入門講座に続いて総会(懇親会)を行いました。探偵団の2018年度の活動計画が説明された後、参加者全員の自己紹介。それぞれ照明探偵団に入ったきっかけと意気込みを発表してもらいました。全く違う畑の方が光の人に及ぼす影響を探るために参加していたり、建築畑の方が、団長の講演に参加したことをきっかけに、今まで照明にはあまり注意を傾けていなかったことを反省して参加されたりと、入団理由もバックグランドも様々で探偵団の層の厚さを再認識。
また今年のナイトウォッチングツアーの行先が未定だったので、街歩きしたい場所と合わせて意見を聞きました。日本の伝統的な祭りや花火大会、自然光の観賞など、都市の光環境を見に行くというより火や自然光を見に行きたいという意見が多く聞かれました。都内の街歩きでは赤羽や谷根千などの下町、三軒茶屋や池袋などが挙がりました。今後の企画の参考にさせていただきます。沢山の意見・提案を直接聞くことができ、事務局としても意義深い会となりました。ご参加&ご視聴ありがとうございました!(黄思濛+東悟子)

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