世界都市照明調査

世界都市照明調査: ドーハ&バクー

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世界都市照明調査 in Qatar/Azerbaijan

2018/02/12-02/17  岩田昌大 + 木村光

2月12日から2月17日までの6日間にわたりカタールとアゼルバイジャンを調査した。どちらも石油原産国でありオイルマネーで経済発展してきた国である。日本人にとってあまり馴染みの無い国ではあるが、多くの富裕層が集まる独特の経済や文化のある街を照明という視点で調査を行った。

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カタールとアゼルバイジャンは世界地図で近い経度上にありながら、それぞれの歴史の過程で異なる都市景観を形成している。
カタールはオイルマネーの恩恵を受けた事を機に、何も無い広大な砂地の中に突如高層ビル群を建設し、海外の富裕層を呼び込む為に湾岸開発をしている新興国家である。
一方でアゼルバイジャンは、カタールと同様に豊富なオイルマネーの恩恵を受けてはいるが、バブル景気で活気のある現在でも、過去の戦争により難民となった数多くの人々が苦しい生活を送っている。都心部では世界遺産でもある旧市街を取り囲む開発を景観に配慮しながら進めているのが特徴である。
両国とも豊富なオイルマネーのおかげで電気代は無料という中、新しい街を作り出していくカタールと、過去の遺産と共存しながら発展していくアゼルバイジャンという2つの国の照明の姿について記録・比較調査を行った。

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道路スケッチ

■カタール 首都ドーハ
「世界一退屈な都市ドーハ」と言われ、以前は閉鎖的な政策が行われており、宿泊施設や娯楽施設もない退屈な街だったようだが、現在は豪華なホテルや大きなショッピングセンターなど賑やかになっていた。政府所有のビルや首相のポケットマネーで建設されている建物が各所にあり、外壁には大きく現首相の顔の絵が描かれている不思議なビルなどが多く存在した。
夜間のライトアップは海岸沿いの新市街で集中的に行われており、湾の対岸にある公園からはその摩天楼が眺められ、街の明かりが水面に映り美しく、多くの人が集まっていた。ライトアップはドット光源を外壁の全面に取り付け輝度を見せる手法が多く、カラー照明なども様々だが、色変化や動きも緩やかで、豪華であるが落ち着いた光となっていた。ただし少し残念なのは同じような手法ばかりで少し単調だったことだ。また日が落ちて少し暗くなった6時ごろに点灯し、8時頃には新市街のビルのライトアップがすべて消灯されたのは、退屈な都市の名残なのかもしれない。
日中は暑く人もまばらだったが、夜の公園は少し肌寒くなるものの多くの人で賑わっており、明りの下で楽しそうに談笑する人や、走り回る子供たちで賑わっていた。照明はボラードと低めのポール灯で構成され、部分的にリニアな足元間接照明が設置されている場所もあった。ポール灯が少し過密に感じる場所もあったが、夜間もこれだけの人が集まる公園としては良好な明るさだった。
道路の殆どはナトリウムの道路灯でオレンジ色に明るく照らされており、街灯も電球色のものが殆どだった。居住地域は白色照明が多く、中東特有の白い石の住宅は肌寒いドーハの夜には少し寒々しく感じられた。
照明の多くにすりガラスがはめられており、おそらくは砂漠の砂が入らない為や汚れることを見越しての設計であり、その風土特有なものだと感じた。(木村光)

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道路写真
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イスラム美術館
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海岸沿いの公園

■アゼルバイジャン 首都バクー
カスピ海に面したアゼルバイジャンの首都。中東のイメージとは違い2月のバクーは、雪は無いもののダウンジャケットが必要なほどの寒い街だった。新市街は西欧風の石造りだが、広場には大きな人物の石像がありロシアの影響が見られる町並みとなっていた。新しい建物もあまり高層なものはなく主張の強いデザインも少なく、古い町並みになじんでいるものが多い印象だった。町の政策としてなのか古い建物はほぼすべてライトアップされていた。街灯はナトリウム灯か2700K程度の光が多く統一感がありライトアップにより鉛直面も明るく、夜でも快適に過ごすことが出来た。寒さにも関わらず、夜の22時過ぎまでお店も開いており多くの人で街が賑わっていることに驚いた。

街は海岸から緩やかに傾斜しており、湾の南側の高台には「フレームタワーズ」という炎の形を模した3つの高層ビルが建っており、バクーの象徴的なランドマークとなっていた。高級ホテルとオフィスとで構成され、各階の層間に照明が取り付けられていた。夜間はビル全体で、赤い炎・青い炎・流れる水・国旗カラーの単色・国旗・を振る人・きらめき、の6パターンが流れていた。赤い炎の映像など日本では批判もありそうだが、ここでは油田の国として昔から火が身近にあったことからか、受け入れられているようだった。

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海岸沿いからの夜景とフレームタワーズのファサード照明パターン

町の南西側には世界遺産になっている城壁都市があり、旧市街の雰囲気に合うブラケット照明が設置され、ナトリウム灯のオレンジの光がノスタルジーを感じさせ美しく、古い町並みの間から見えるフレームタワーも新旧が上手く交わる街ならではだと感じた。
また新しいものとして、2017年より街中でF1のレースを開催している。レース会場になっている道路では大きな縁石と丈夫な柵が設置されており、街灯もナトリウム灯で直下370lxとしっかりと明るく照らされていた。この街灯は設置間隔は場所により異なるものの市内外共に同じデザインのものが使われていた。夜間に多く人が出ていることもあるが、この明るさはアゼルバイジャン特有の交通マナーに関係するところも有るのかもしれない。信号のない横断歩道でも人が渡ろうとすると絶対に車が止まるというもので、慣れないうちは驚いたが、このような人間優先のマナーを守る為の明るさが本当の安全を作るのだと感心させられた。(木村光)

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城壁都市(旧市街)の外側
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茶葉からペットまで売るバザール
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夜11時頃でも多くの人で賑わう新市街の広場

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城壁都市(旧市街)の内側
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拝火教寺院(紀元前から自然に天然ガスが出続ける)
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F1開催時にはコースになる道路脇の歩道

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新市街の立面スケッチ
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新市街の断面スケッチ

■街の光
新市街は西洋風な建物が多く立ち並び、建物の1階は店舗、2階以上は住居となっている。広場に向かう人やショッピングを楽しむ人が多く集まり、最も賑わいのある場所の一つである。照明としては電球色の蛍光灯が用いられており、温かみのある空間であった。ファサードの形状によって照明器具を使い分けており、細長い面に対してはナローなスポットライト、広い面の装飾に対しては長いリニアライトで照らすなど、丁寧に照らしていこうという意識を感じ取る事が出来た。照明器具はほとんどが壁付けのむき出しであったが、人の目に留まるような場所ではスポットライトに斜めフードが取り付けられ、グレアに対しての意識を感じられる所もあった。道の中央にはカテナリー照明が吊られ、街の賑わいを演出している。ポール灯によるベース照明は道の中央で50lxであったが、鉛直面の明るさ感がしっかりとしている為、ポール灯は不要だと感じた。
大通り沿いの建物も同様の手法で丁寧にライトアップされていたが、柱に対しての照明手法のみ異なり、地面の埋め込みウォールウォッシャーが柱前に配置され、歩行者にとってはとても眩しい空間であった。バクーの店舗は22時以降でも営業している所が多く、それに合わせてかファサードのライトアップも夜遅くまで点灯していた。
その他にライトアップされた建築としてはバクーの光り輝くヘイダルモスクが最も有名である。2014年に建立された、まだ歴史の浅いモスクである。ファサードはライトアップされており荘厳な雰囲気を醸し出していた。竣工時期が最近の為か照明器具には全てLEDが使われていたが、フリッカーを起こしている器具が多く見られて残念であった。アゼルバイジャンの景観や歴史に対する配慮は高く、照明に対する意識も総じて高いと感じた。

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バクー新市街の賑わい

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ファサードライトアップの器具
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眩しいウォールウォッシャー

■有機的な光
ヘイダルアリエフセンターは前大統領のヘイダル・アリエフの名が掲げられた、ザハ・ハディド設計の、ミュージアム、コンサートホール、展示ホールなどが入った総合文化施設である。ファサードライトアップは一部行うのみで、インテリアからの漏れ光が大きな開口部から見えて建築の形状が認識できるようになっている。昼間はこの大きな開口部から昼光が取り込まれてグラデーションが美しい。インテリアは曲線状の面発光と間接照明で構成されており、有機的な形状を活かす為にダウンライトはあまり使われていないのだと感じた。

■調査まとめ
カタールとアゼルバイジャンはオイルマネーの恩恵を受けた国という共通点を持ちながら、照明に対しての意識は大きく異なっていた。
カタールは新市街に見られるような近未来的な高層ビル群のファサード照明で新しい国の権威を示しているのに対し、アゼルバイジャンは歴史に寄り添う光として都市計画レベルで照明が整備されているという興味深い調査結果となった。
カタールの街は街明かりが早い時間帯で消えてしまうが、アゼルバイジャンは夜遅い時間まで点灯して賑わっており、照明が観光地の発展を促す物と成り得るという事を改めて実感できた。今後、都市計画が進んでいく中で違った発展を遂げていく2国の海岸線上の風景に期待が高まる。(岩田昌大)

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迫力あるヘイダルモスクライトアップ
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ヘイダルアリエフセンターの外観
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有機的な建築と照明

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