世界都市照明調査

東京 TOKYO : 豊洲・二子玉川・高島平

東京における、集合住宅エリアの光の多様性

集合住宅こそ実は、東京の主役である。都市が大きくなり繁華街が発展するほど、それを支える住宅の密度も高くなり集合住宅の割合が増えてくる。住宅土地統計によれば、東京23区内の住戸のうち集合住宅の割合は実に7割に達するという事である。今回はいつもの調査対象である喧騒を離れて、3つの大規模かつ高密化された集合住宅を訪れた。数多くの東京の集合住宅エリアの中から、今回はあえて都心からの距離や歴史がばらばらに異なる場所を選んだ。複雑に異なる環境が、窓明りの色味の割合や、住宅周辺の街の光にどのようにな特徴を与えるのか、単純な問いではないが考えてみたい。

豊洲

global-research_tokyo_53

global-research_tokyo_44

工業用の埋め立て地であった豊洲は、2003年から本格的な再開発がスタートし、2006年に居住区として「まちびらき」を行った。新しい街であるため、若い家族世帯の流入が多い。数多くの集合住宅が建設されており、大規模であるだけでなく、超高層タワーマンションも非常に多い。 

global-research_tokyo_47

窓から見える光の色温度:
オレンジ:80%
白:16%
青み:4%

global-research_tokyo_48

駅を出ると建ち並ぶタワーマンションの数々。都会のタワーマンションがもてはやされる時代に作られたのかそれぞれに豪華なエントランスや光輝くクラウンなどデザイン性はあるが、街としての統一感はない。建物内の居心地は良いだろうが、周辺環境までは行きつけなかったのか近くのホームセンターは、1344(lx)5300(K)と暴力的な光だ。深夜営業しているのは良いが、仕事帰りに立ち寄った際には体内時計が狂ってしまいそうだ。

二子玉川

global-research_tokyo_54

global-research_tokyo_45

比較的低層の住宅街が広がり緑の多く残る二子玉川だが、駅東側では大規模な再開発が行われた。居住区域のうち3棟は超高層となり、2010年から入居が開始された。駅側には商業棟、オフィス棟の区域が既に営業を開始しており、反対側には大型の公園が隣接して建設中である。 

global-research_tokyo_49

窓から見える光の色温度:
オレンジ:86%
白:11%
青み:2%

global-research_tokyo_50

スクラップアンドビルドの時代に壊してしまった自然をもう一度復活させたいという思いなのか住居の周りにとても自然が多く緑の面積が大きい。建物そのもののデザインにこだわるのではなく、全体の環境ごとデザインしているのであろう。街全体に穏やかな電球色の光が漂っており、ふと散歩をしてみたい気持ちにさせられる。犬を散歩させている人が多いのも納得だ。駅も200(lx)3000(K)と優しい光で疲れたサラリーマンを迎えてくれている。

高島平

global-research_tokyo_55

global-research_tokyo_46

農地であった高島平では、日本住宅公団(今の都市再生機構)によって団地の建設が行われ、1972年から入居が開始された。多くの建物が、いわゆる「団地」然とした14階建ての同タイプの棟になっており、整然と並んでいる。1992年をピークに人口が減少し、少子高齢化が進みつつある。 

global-research_tokyo_51

窓から見える光の色温度:
オレンジ:14%
白:24%
青み:62%

global-research_tokyo_52

規則的に建て並んだ団地、ベランダには布団が干され生活感が溢れている。今にもそれぞれの食卓のカチャカチャという食器の音が聞こえてきそうだ。団地内のスーパーもLED化などなんのその蛍光灯で活気強く営業している。誰も照明の事など気にしていない。しかし独特の活気がある。この場所できっと色々な事が起こり、出てゆく人がいて、入ってくる人がいるのだろう。底はかとない重みが出ている。こういった街並みも残していきたい文化である。

おすすめの投稿