照明探偵団通信

照明探偵団通信 Vol.11

Update:

発行日:2001年10月25日
・海外調査レポート/~ロンドン最新建築事情~
・こうべ照明探偵活動レポート/こうべ照明百選
・海外の照明事務所で働く
・照明探偵団倶楽部活動1/街歩き報告(横浜みなとみらい)
・照明探偵団倶楽部活動2/研究会サロン報告
・探偵団日記

ロンドン最新建築事情

2.壁面におちたトラスの影
壁面におちたトラスの影
3.グレートコート
グレートコート
4.ブルーの光で満ちたエントランス
ブルーの光で満ちたエントランス
5.ラインの美しいエスカレーター
ラインの美しいエスカレーター

[イギリス・ロンドン]

 NY ワールドトレードセンターのテロの悲劇から戦争へと緊張が高まるさなか、危険を承知でロンドン探偵を決行。かなり意を決して空に飛び出したものの、何事もなく無事到着。東京で想像していたピリピリとした緊張感はなくて、東京から連れてきた騒がしい心はそれで落ち着いた。
 探偵の調査目的は都市照明が多いけれど、今回はちょっと趣を変えて建築照明が主題である。ロンドンでは豊かな歴史を背景とした伝統的な美しい建物が織りなす街路空間の中に、所々スチールやガラスで構成された現代建築が対照的に挿入されている面白い表情がある。ノーマン・フォスターやリチャード・ロジャースなど世界的な現代建築家を多数輩出している粋な街だ。

●偉大なる大英博物館グレート・コート

 イギリスでは2000 年を記念にミレニアム・プロジェクトとして全土に新築・改築工事を展開している。後述のミレニアム
ブリッジやテート・モダンと同じく、大英博物館も大改修プロジェクトがコンペをスタートに行われた。コンペを勝ったのがイギリスNo.1 の建築家、”サー”ノーマン・フォスターで、雨ざらしであった中庭に大きなガラスの天蓋をかけ、動線の核となる大きなオープンスペース(=グレート・コート)を提供する案である。ツタンカーメンがやって来た10 年ほど前に訪れたことがあるけど、さてどれほど劇的に変化したのだろうか。
 薄暗いエントランスホールで館内マップを購入し正面を見ると、真っ白に輝く曲面の壁が強烈に飛び込んでくる。天蓋の中央で象徴的に扱われている図書室の壁面だ。白い光に誘われふらふらと足を進めれば、改修の目玉のグレート・コートにすぐに出ることができる。
 四方の展示室へのアプローチからなる矩形平面の中央に、円形平面の図書室があり、□から○へ見事な複曲面のラチストラスのガラスのドームが覆っている。ガラスは紫外線を60%カットするクリアのペアガラスからなり、ガラスを透かして空も見えるし、流れる雲も見える。定かでないが、ドットプリントなどでうまく減光し、見ても眩しくないように空の輝度を調整しているようだ。幸運にも館内にいる間に晴→曇→大雨と天気が変わり、空も存分に鑑賞させようという設計者の意図を心行くまで感じることが出来た。当然帰りはずぶぬれだ。
 フォスター卿が描いたドームのフォルムは秀逸で、どこから見てもトラスの疎と密のコントラストが美しく現れる。自然光はペアガラスを透過してやや青味がかった光になるものの、晴れの時の陽射しとトラスの影の競演と、曇りの時のなんともいえないルーズなモワモワ感はともに新鮮な感動を呼ぶ。グレート・コートを取り巻く既存の展示室は、外光が抑えられた閉鎖的な空間の連続であり、グレート・コートと各展示室を行ったり来たりする時の光のシークエンスも楽しい。
 さて、いいことずくめのグレート・コートだが、残念な点が1つあった。図書室の曲壁に沿うように大階段を昇った先に、驚くほど細いテンションで吊られた膜天井をもつレストランがあるのだが、そこのBENTO(弁当)はひどく不味い。おかゆの海苔巻と、炊けてないご飯はどうにかならないものか。これで2 千円也。

●テート・モダン=ライト・モダン?!

 セント・ポール寺院からテムズ川を越えた対岸に、火力発電所を改修して作られた現代アート美術館「テート・モダン」がある。もとの火力発電所の外観とレンガの素材を残しつつ、対比をなすように現代的なテイストの展示ボックスが挿入された改修計画だ。
 内部の光は、改修の狙いである新旧のデザインの対比を鋭く強調するかのように、蛍光灯の直接的な表現によって支配されていた。ブルー蛍光灯の光とプロジェクションの光に満たされたエントランスや、サイン的な蛍光灯の直線、そしてシャープなラインを携えたエスカレーターの上下動線が空間にスパイスを与えている。がらんどうの巨大なヴォイドであるエントランス・ロビーは、発電所時代の工場を思わせる質感だが、そこに発光する現代的な発光するボリュームが面して浮かべられていて強烈な対話を見せる。日本のせんだいメディア・テークで表現された光と同じく、直接的な表現と発光する表現
が現在の世界の潮流であることは間違いないようだ。確かに何かを照らして光を見せること、また建築に照明器具を隠していく思想はすでに広まった常識であり、テート・モダンでの光のスパイスの効いた表現はまさしく「現代」のように感じられる。
 ただ、だしの利いていない蕎麦を七味唐辛子で食べているような、なこか誤魔化されているような疑念が常について回った。その疑念の正体を明らかにしていくことが、今後の光のデザイナーに問われているのだろう。
 1つ悲しいお知らせが・・・じつはテートモダンからセント・ポール寺院に向かって、フォスター卿デザインのミレニアムブリッジが開通したのだが、構造的な欠陥が見つかり現在改修中。華々しくデビューしただけに悲壮感が漂っていた。

6.昼のホルボーン・プレイス
昼のホルボーン・プレイス
7.夜のホルボーン・プレイス
夜のホルボーン・プレイス

●これぞガラスマジック

 ここで、小粒ながら照明の観点から興味深い建築があるので紹介したい。地下鉄のホルボーン駅からすぐの交差点の角に建つホルボーン・プレイスはフォスター卿のデザインによる柔らかなカーブを描くガラスに包まれたオフィスビルである。
 日中はガラス面に大空を映し込んで周囲に溶け込む表情を見せるが、夜間になると表面をくるむガラスのファサードの存在感は消えてなくなり、内部の扇の形に穿たれたヴォイドの形が闇に浮かび上がる。執務階ではベースライトの光がブラインドを柔らかく発光させ、交差点の角にあるこの建物を都市の行灯へと変貌させている。反射制御にこだわった照明器具を使用しているために、外から見て余計な輝度を感じさせることはなく大変美しい。
 ガラス建築による昼夜の表情の変化は、ルーブル美術館のピラミッドなどお馴染みだけれど、単なるオフィスビルが都市に劇的な光のアクセントを加えていることに驚かされた。日本でもガラスを全面に使用したオフィスビルが次々と発表される今日この頃だけど、ぎらぎらした光じゃなくて疲れを癒してくれるような優しい光はいつ登場するのだろうか。

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●その他の光のオススメポイント

 ロンドンはその高貴な感性から生まれた優れた建築が実に多く、新旧合わせれば最低一ヶ月は建築三昧を楽しめる。さらにミレニアム・プロジェクトの機運によって現代建築が競って完成してきており、テムズ川を中心とした景色の美しさとともに豪華な建築博覧会の様相を見せている。光のテーマも同時に沢山あって、昼夜市内を散歩しているだけでも興味を引くものはゴロゴロ。その中から光や照明といった観点から現代建築のオススメを4つ紹介する。

[ロンドン・アイ] 
 ミレニアム・プロジェクトの一環としてテムズ川に面して設立された観覧車である。高さ315 m ・定員800 人のビッグなスケールもさながら、テムズ川の上で観覧車が回るように片持ちの構造で支えていることが不思議でたまらない。さらに観覧車自体が自転車の車輪の様に非常に細いケーブルで結ばれているものだから、遠目には輪が浮かんでいるように見えて極限の機能美を見せてくれる。観覧車の籠は風力計算から導かれた卵形の形をしていて非常にユニークである。まさしくハイテクの塊。
市内で3番目に高い構造物でロケーションも抜群だから、さぞかし美しいロンドンの夜景を拝めるだろうと期待していたものの、丁度前日から終わりの時間が早くなったとかで轟沈・・・最終メンテナンスのために嫌味たっぷりに回る観覧車を見ていたが、白い光で素直にライトアップされるロンドン・アイのエレガントな姿は、日本でのどこも同じ商業的な光とは全く趣が違う。日本の観覧車もそれはそれで嫌いではないけれど、文化と感性の違いをまざまざと見せつけられてしまった。
 なお乗り場は夜になるとブルーの光に染められ、ロマンチックな雰囲気を演出している。負け惜しみではないが、ロンドン・アイのふもとの夜景もなかなか雰囲気があってなかなか良かった。

[ロイズビル, 大和ヨーロッパビル]
 フォスター卿と並んでイギリスを代表する建築家がリチャード・ロジャースである。「ハイテク建築」で有名な彼の建築は市内に多くあり、夜景として重要なビルも幾つか残している。
 1986 年に建てられたロイズビルは15 年経った今も変わらず強烈な存在感を示してくれる。金属の鎧と裸の設備ユニットに身を包んだロボットのようなボディは、ブルーの光で暴力的にライトアップされ、円形からのアイキャッチになるほど異彩な輝き方をしている。夜中でも頂上の排気塔からは煙が出ているし、まるでSFの世界に入ってしまったかのような錯覚を起こさせる。
 セント・ポール寺院の北側には大和ヨーロッパビルがある。ロイズに比べてガラスを主体とした軽やかな最近の作風の建築で、2 本のクリアなガラスのケースに収められたエレベーターシャフトが特徴である。このエレベーターシャフトは、中央の換気パイプに設けられた蛍光灯によって天井面が明るく照らされ、それがタワー状に積層して夜間の美しい光の柱となる。内部の照明の機能と外観照明を見事に合理的にまとめた模範生である。

[サックラー・ギャラリー]
 ピカデリーサーカスの側に、ロイヤル・アカデミーという由緒ある芸術空間がある。ロイヤル・アカデミーはバーリントンハウスと背後の展示棟からなるが、フォスター卿はその間の幅5 mの深い光庭を魅力あるギャラリースペースへと昇華させた。歴史を感じさせる古い壁面に挟まれながら、専用のシースルーエレベーターでじっくり上昇すると、真っ白なフロストガラスに包まれた美しい彫刻が出迎えてくれる。
 幅わずか5 mの彫刻ギャラリーは、竹を割ったように鑑賞者スペースと彫刻群が直線的に配された、極めてシンプルな構成をとっている。空間表現もそれに倣い彫刻のまわりをフロストガラスが覆う。このフロストガラスの透過の具合がなんとも絶妙だ。太陽の光は曇でも思いのほか強いものだが、緻密な検証からはじき出されたガラスの透過率が、美しい輝度と透明感で美白空間へと導いている。大英博物館のグレート・コートといい、フォスター卿は自然光を実に美味く料理する。
 私が訪ねたときは模様替え中で、ダンボール箱に埋もれての鑑賞だった。あと自然光に満たされたギャラリーであるためにサウナのようだった。皆様、是非展示期間中に行こう。
 さて、ここまで駆け足で紹介してきたけれども、他にも地下鉄ジュビリー線の新駅プロジェクトやドックランド再開発(ミレニアム・ドームもその1つ) など非常に多くの興味深い建築が次々と誕生している。ロンドンの新しい建築に共通するのは、それぞれが個性を表現する光を身につけていることだ。その新しく個性的な光が歴史的な街並みの中にバランスよく配され、図と地のような光の模様を描いている。ミレニアムを迎えて現代的な建築と光が新鮮に表現された今、ロンドンは新旧のコントラストが最も美しい時期を迎えているように思う。今がロンドンの食べ頃だ。(戸恒 浩人)

こうべ照明探偵活動レポート

日本全国から照明探偵団事務局に寄せられる、”私も照明探偵活動やってます!!”という声。
今回は神戸で照明探偵活動を行っている方々からの活動の紹介です。

12.夏祭りイベントでの行灯屋準備風景
夏祭りイベントでの行灯屋準備風景
13.相楽園夜間ライトアップ、和紙の部分は絵手紙
相楽園夜間ライトアップ、和紙の部分は絵手紙
(絵手紙行灯)
14.ファンタジア神戸(小学生制作のペットボトルのオブジェライトアップ)
ファンタジア神戸
(小学生制作のペットボトルのオブジェライトアップ)

1.こうべの照明探偵活動とは?

 阪神淡路大震災(H7.1.17) で甚大な被害を受けて全国・世界の注目を浴びた神戸。つらい被災体験をきっかけに、人々の助け合いやまちづくりへの大切さを多くの市民があらためて実感をしました。その中で、「光」をテーマに、心の元気付けや癒しなどを求めて、神戸市役所の声がけでスタートしたのがこうべの照明探偵活動です。H12.7.7 に結団式を行ったのが最初の活動で、団員数は約100 を数えます。会の名称はH13.10 現在、「こうべ照明探偵団(仮称)」ですが、改定する方向で検討中です。

2.これまでの活動内容

 夜景ウォッチングはもちろんのこと、市の主催する神戸21 世紀復興記念事業(震災後6 年が経過し21 世紀を迎えた記念) の各種イベントとのタイアップや、団員の発案による独自活動などが主な活動です。
(1) 夜景ウォッチング: 三宮・元町、秋の京   都、新長田商店街など
(2) 参加イベント;・夜景百選マップ作成(現地取材や写真撮影 は団員が行う)
 ・相楽園(日本庭園) の夜間ライトアップ(ランプシェード製作)
 ・各種夏祭りでの照明演出、手作り行灯屋出店など
(3) 独自企画等:
 ・X 知as 手作りイルミネーション(神戸市役所 玄関前に100 灯設置)
 ・桜ライトアップ兼お花見会(夙川沿いにて)
 ・日本の灯りを創る会(和紙や竹を使ったラン プシェード製作)

3.これからの活動内容

 市主催の記念事業はH13.9 末で終了しますが、過去1 年の活動経験を無駄に終わらせたくない!という声が多くの団員から寄せられたため、新しい運営体勢について、有志スタッフで活動費用を含めて現在検討しているところです。今の段階では下記のようなことを計画しています。また、今後はさらに積極的な情報発信をおこないつつ活動の場を広げていきたいと考えています。
・機関紙発行、HP作成
・照明学習会、夜景ウォッチング
・「鎮魂の灯り」など、イベント参加
・まちづくりや都市景観づくりの企画・提案

4. 今後の抱負など

・10/5 のサロンでは「こうべPR タイム」を設けていただきありがとうございました!なお、KOBE ルミナリエの開催は12/12 ~ 25ですのでこちらもどうぞよろしく! (河崎・高橋)
・それぞれの生きてきた中で感じる光の経験において、こんな綺麗な瞬間を見たと記憶にしまっている人が集まって 美しいものを作り上げられる事に喜びを感じる。それをする事が私のしたいことです(山本)
☆団員&協賛会社、大募集です!
<問合せ先>
078-436-6580 (山本、Tel ・fax 兼)
<掲示板URL >
http://db.zaq.ne.jp/asp/bbs/kcc_dfabk702_1

こうべ夜景百選

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~素敵な光の風景心に残る神戸のあかり~

団員自らによる現地取材と写真撮影を経て100 シーンに凝縮した神戸の夜景スポットマップ。6 つのエリアに渡り、所在地、写真、推薦者のコメントを記載。中身の充実したパンフレットです。
(発行: 神戸21 世紀・復興記念事業)
15.灘・東灘区NADA & HIGASHI NADA AREA
▲灘・東灘区/NADA & HIGASHI NADA AREA
16.兵庫区HYOGO AREA
▲兵庫区/HYOGO AREA

海外の照明事務所で働く

Grenald Waldron Associates 
目黒朋美さん
[Philadelphia, USA]
1.事務所にて Principal のSandra さんと
事務所にて Principal のSandra さんと

2.Grenald Waldron Associates の皆さん
Grenald Waldron Associates の皆さん
3.LED を用いて演出されたBenjamin Franklin Bridge
LED を用いて演出されたBenjamin Franklin Bridge

映画ロッキーの駆け登った大階段がある。水面が視線に近い川が流れている。芝生が広がる公園が見える。大きな並木道を車で抜ける。これが、私の毎朝の通勤風景である。1年と3 ヶ月前に日本に居た時とは打って変わったこの風景。私の勤めている照明デザイン事務所は米国フィラデルフィアというニューヨークから車で南に2 時間、全米第5位の人口を持つ街を拠点としている。フィラデルフィアと言ってもピンと来ない方には映画「シックスセンス」や同じくブルースウィルス主演の「アンブレイカブル」そして「ロッキー」の舞台と言えば街のイメージが湧くだろうか。事務所は街から車で30分近く行った住宅地にあり、古い石造りの建物である。この建物と毎朝の風景が私はとても気に入っている。照明デザインの草創期を突っ走って来たRaymond Grenald が1968 年に興したGrenald Waldron Associates (当時はGrenald Associates) は現在の社長であるLee Waldron を含め所員12 名の事務所である。読者の皆さんが何に興味があるのか思いを巡らせつつも、コラムということなので徒然なるままに書かせて頂く。

 まず「日本とアメリカの事務所ではどんな点が大きく違うのだろうか」であろうか。私は2000年の7月までこの照明探偵団の協賛メーカーの一つでもある松下電工の照明デザイン担当部署にて件名の照明設計に携わってきた。つまり設計に落とし込む器具は分厚い見なれたカタログ数冊からか、あるいは特注器具のスケッチを描く。ここアメリカではMany というよりはHuge と形容したほうがイメージをつかみ易いだろうか、おびただしいカタログが壁一面を覆っている(横10 m縦2 m)。事務所で働き始めた当初はかたっぱしからカタログに目を通し、どんな器具があるのかを見てみた。最近になり大体よく使われるカタログ及び器具があることが掴めてきた。その商品知識もまた照明デザイナーとしての素養の一つであることは間違いない。多くの照明メーカーが存在するということは競争力を高め、また良い器具を生み出す原動力を生む。多くのメーカーが存在するが故、アメリカの照明業界にも、どこの会社がどこを買ったというような企業の買収と合併(M&A) が頻繁に起こっているようだ。
 この良質な器具の日本市場への進出を阻んでいるのが、日本独自の電圧である100 V/200V という壁であろう。将来的には安定器やトランスがユニバーサルに電圧に対応し、アメリカの器具が日本市場でも容易に使える日が来るのではないだろうか(私の希望でもあるが)。勿論日本の各社メーカーもそれに応じて益々良い器具を創り出して行くという好循環も期待したい。
 次に、照度計算についても便利なソフトが存在することを述べたい。北米照明学会によって統一されたフォーマットで作られた照明配光データが、各社の器具を同一空間上で用いた計算を可能にしている。日本の照明士クラスの知識と配光曲線等の数値データがあれば自分でもソフトを用いて配光データを作ることが可能である。また多くの照明メーカーのウェブサイトから配光データの取得が可能であるので非常に便利である。

 また、事務所の手掛けた最近のプロジェクトの写真も掲載させて頂く。75 周年を迎えたこの吊橋Benjamin Franklin Bridge はその誕生日に音と光のショーを花火と共に披露した。フルカラーLED光源を用いているので多彩な演出が可能である。第2 次世界大戦中に既に存在した大きな吊橋が最先端の器具で彩られ今直威厳ある姿を見せ、夜には美しさを増す。この姿を見ればアメリカに来ても照明に携われている事を嬉しく思う。現在事務所では米国の最高裁判所の照明やGAP 系の仕事などが進行中である。最後になったが、ニューヨークでの9 月11日の悲劇からついに始まってしまった戦争の早い終息を望み、悲劇に巻き込まれた人々のご冥福を祈りたい。(目黒 朋美)

面出の探偵ノート

●第27 号 2001 年10 月13 日 土曜日

マンハッタンを散歩していて・・・

ショッキングなテロ事件の起こる2週間ほど前の8月末に、久しぶりにビジネス・ストレスの少ない時間をNYC ・マンハッタンで過ごしました。大学で教鞭をとる、これまた忙しい女房殿との久方ぶりのバケーションで、街歩きを楽しんだのです。会社にはもちろん出張半分、と申告していましたが・・・。私たちはアッパーウエストの80 丁目当たりにウイークリーのホテルをとり、近くのZabers (ニューヨーカーの台所と言われる商品の豊富なフードショップ) でノルウェージャン・スモークサーモンを数種類買ってきて、焼きたてのベーグルに挟み、クリームチーズをたっぷり添えての、のんびりした朝食。昼ともなればきっちりした予定もたてずに、足の向いた美術館やソーホーのギャラリーを覗いたり、お茶したり、ショッピングをしたり・・・。何年ぶりかの「気ままな時間」をマンハッタンで過ごしたのです。私たちには、長く日本で暮らしていたアメリカ人の友人家族がいたのですが、2カ月ほど前にNY に転勤して帰国したばかりでした。私たちは、彼らの住まいを訪ねました。奥さんのMichele は日本美術史の研究者、旦那のBill はWall Street Journal の記者、Jackson は日本で育った4歳の長男、Adel は6月に生まれたばかりの美人の赤ちゃんです。この4人家族はテロ事件のあった World TradeCenter(WTC) に近いウォール街に住んでいました。彼らの住まいはセキュリティのしっかしたコンドミニアム。屋上に出ると目の前にWTC が見えました。私たちは夕食前に、子どもたちを2台のベビーカーに乗せて近くのバッテリーパークを散歩することにしました。マンハッタン島の最南端に行くと海も広々見えます。秋の訪れを予感させる爽やかな海風。パークはここから東側へ、WTC を取り囲むようにして、シーザペの方に伸びています。昔は治安の悪かったこの辺が、見事に住職混在型の高級住宅地になっていました。たくさんの市民が散歩をし、ジョギングやローラーブレードを楽しでいます。ここから自由の女神を回る遊覧船も出ています。まるでNY 市民の典型的な豊かな生活を絵に描いたような環境の夕暮れです。西側クイーンズの方に茜雲が広がり、思わずカメラを構えたかと思うと、ハドソン川を越えたニュージャージーの空には、典型的なブルーモーメントが忍びよってきます。自由の女神がほほ笑みかける夕暮れでした。夕食はWTC のほぼ足元。カジュアルですがどれをとっても美味しいイタリアンレストラン。私たちにとっては親友との久しぶりの再開、楽しく心休まる一時でした。4歳のJackson は私との玩具遊びが気に入ったらしく、次の朝に「Mende-san、次はいつ遊びに来るの?」という電話がかかってきて嬉しくなりました。暫く電話口で子どもとの会話を楽しみました。そんな思い出を残して帰国してから2週間後に、あの目の前にそびえていたWTC があっという間に視界から消えてしまったのですから、もうびっくり。直ぐに彼らの自宅に電話しましたが繋がりません。仕方なしにe-mail。それも数日間過ぎて返信なしです。心配しましたが他州に住むご両親の連絡先が見つかって、やっとお父さんが捕まり、彼ら全員の無事が確認できました。Bill は勤め先のWorld Financial Center にいて、爆風で窓が全部壊れたそうです。直ぐに会社を出て煙の中を家族が住むコンドミニアムに戻り、一家4人がタオル片手にEast River Side を北へ北へと数時間歩いたそうです。おぞましい光景だったのでしょう。あの安らいだ夕暮れのバッテリーパークを取り戻すのに、これから何年掛かるのでしょうか。いや、もうNY の人々の心にはあの安らぎは永遠に戻らないのかも知れません。しかし、そのような悲惨な事件は今初めて地球上に起こったものではありません。アメリカ人にとって最大級に惨事は、これまで世界中に繰り広げられた多くの紛争や戦争の名を借りて、半ば合法的に起こされてきました。真珠湾しかり、広島、長崎しかり、ベトナムや湾岸戦争しかりです。誰もこれらの大量虐殺の犯罪を総括し、きちんと謝罪していません。ですからWTC に始まる象徴的なテロ行為を、私たちは単純な報復などで済ませることは出来ません。この重苦しい出来事を契機に、世界中の不幸に目を向けるべきなのでしょう。紛争や戦争がなくとも、毎日たくさんの人々が飢餓と病で命を落としてもいるのですから・・・。
今、Bangkok へ出張で向かう機内で書いています。探偵団通信の原稿としては、ずいぶん重たくなってしまいました。気分がそっちに行ってしまったものですから。たまには明るくない話題も大切に扱わなければなりません。私たちは世界中の文化の異なる友人と、照明文化についての言葉を交わす機会を持ちたいと思っています。言葉や、歴史や、宗教さえも異なる人たちが、それでも照明探偵団の視点に興味をもってくれています。震災の起きた神戸市も復興事業の一環として「こうべ照明探偵団」という名の活動を行いました。NYC にも近いうちに照明探偵団の支部が出来ることを期待しています。世界中の不幸は容易になくなりませんが、芸術や文化の交流は、私たちの心の不幸を救う役割も果たします。明るいことは元気のもとですが、暗さを直視し、影を大切にすることも、探偵団の心構えかと思います。
ずいぶん文章が長くなってしまいました。短く書くのは難しいよね。 (面出 薫)

第12 回街歩き「横浜みなとみらい編」

2001 年10 月01 日

4.横浜クイーンズスクエア
横浜クイーンズスクエア
5.汽車道
(下) 汽車道
6.横浜トリエンナーレの紹介ページ
▲横浜トリエンナーレの紹介ページ
http://www.jpf.go.jp/yt2001/
7.オノ・ヨーコ「貨物車」
(上) オノ・ヨーコ「貨
物車」 
8.草間彌生
(下) 草間彌生
「ナルシスの庭」
9.中華街にて集合写真
中華街にて集合写真

報告①

 この日はひどく雨が降っていたうえ風も吹いていたのでカメラを濡らさないように写真をとるのに団員の方々が非常に苦労していました。
 桜木町駅に集まりさっそく汽車道に向かいました。この場所はランドマークタワー・大観覧車など横浜の主要なあかりのランドスケープを眺めることができるスポットです。しかしながら反対側はさびしい工場などが並んでいて取り残されたように見えます。(現在計画中のようですが。)  
 また、この歩道には通常の水平面照度を保つ街路灯はなく、両脇に足元を照らす光が連続して設置されていて歩行者をやさしく誘導していました。最初のうちは温かみある光色であったのに途中から色温度の高い白い色になってしまいました。
 このようなところには現在ある日本の計画の限界がかいまみえてしまったかのようで少し残念な気がしました。
 横浜トリエンナーレにおいてはオノヨーコさんの光のアートを観ました。
 かなり遠くからも天をさす青い光はみえます。本体は古い貨物列車でできています。近づくとセンサーによって、おどろおどろしい曲が流れてきて、チョット笑いがこぼれました。車体に無数にあけられた穴からの光はプラネタリウムの星のようにみえます。聞けばこの穴は本物の銃弾によってあけられたものなのです。
 戦争の傷跡を表現したシンボリックな光。それを知ったときオノさんの平和への願いをはじめて感じることができました。

報告②

 今回の街歩きは、港町横浜・桜木町の調査を激しい雨の中決行しました。桜木町駅から汽車道を抜け赤レンガ倉庫に向かい、そこから関内方面に下り神奈川県庁や開港記念会館などを通って中華街へ…といったシナリオです。
 案の定調査は風雨に伴い難航。しかし深い霧のような雨景色の夜景に魅了され、団員たちは苦戦しながらも、しきりにシャッターを切っていました。なぜなら、この雨でランドマークタワーなどビル群から発される蛍光灯の明かりが、気中の水しぶきにより乱反射され、あたかも空気が発光しているような幻想的な光景を作っていたからです。
 桜木町駅周辺とは対照的に、汽車道に入ると歩道が主体なゆえ光は低い位置に集められ、夜景を眺望するに適した光環境を配慮しているように思えます。
 しかし残念なことに、足下灯や拡散光を発するボラードなどとの色温度差や多種照明器具の総合性などは照明設計に盛り込まれていなかったようです。
 赤レンガ倉庫や開港記念会館などレンガを使用した洋式建築には色温度の低い高圧ナトリウムなどの光源で投光し、レンガの色を際立たせるような配慮がなされていました。しかし、街路灯のような白色の光源との色温度の差が目立ち、特に開港記念会館正面の街灯は一際目立ってしまっていました。
 何はともあれ、横浜市は、桜木町周辺開発の計画段階から都市の光環境に配慮し、都市の夜景や歴史的建造物に対して、他に先駆け明確な照明計画を練り実行に試みた功績は、特筆するべきものがあると思います。
 今回の街歩きで、個々の建築だけではなくさらに視野を広げたスケールで、照明が持つ都市景観への影響力を少なからず感じられたと思われます。
 後半は税関などの威厳のある古建築のライトアップを眺めながら中華街へと向かいました。海岸沿いの街として東京幕張よりも横浜のほうが、親しみがあり心地いいという人がいます。今回、街歩きに参加してなるほどと思いました。
 横浜には歴史がある。横浜という都市は開発と同時に古い建築を大切に保存する計画を長く行ってきたという過程があり、そのことが美しい都市環境をつくっているということをあらためて実感しました。(井上大地)

第15 回研究会サロン【横浜みなとみらい調査報告/art-Link 上野- 谷中調査報告】

2001 年10 月05 日

少し日が短く感じられるようになったと思ったら外はすっかり秋の気配。今回のサロンは「芸術の秋」をテーマに行なわれた2 つの調査報告と団員による活動の報告が行なわれました。

10.田中団員作品「みんなのぼつぼつ。」
田中団員作品「みんなのぼつぼつ。」
11.プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子
12.art-Link 上野- 谷中のサイトマップ
art-Link 上野- 谷中のサイトマップ
http://artlink2001.tripod.com/
13.和田みつひと「光のかたち」公園灯プロジェクト
和田みつひと
「光のかたち」公園灯プロジェクト

まず、10 月1 日に実施された横浜みなとみらいの街歩き調査報告が行なわれました。
 当日はあいにくどしゃぶりの雨でカメラや計測機器の使用もままならない様子だったのですが、雨の中で撮影したみなとみらいの夜景はまた一味ちがう雰囲気。いつもの道路も路面が濡れて車のライトを映し込んでいたり、高層ビルの頂部が霧に包まれていたりと幻想的でした。
 面出団長曰く、「横浜は夜間計画を積極的に計画していて、実際汽車道などはなかなか良い計画がされているけれどまだ課題は残されている。多くの照明デザイナーが夜間計画に携わっているが、照明計画は平面図上で見るものと人間が実際に立った視線でパースペクティブに見るのとでは全く見え方が違うのだから、もっと計画時に実際に歩いたような気分で立面の見え方を重視しなければならない」とか。
 ウォーターフロントの計画は、たとえばパリのセーヌ川河畔などは川に向かっての見え方を重視した計画がなされているけれど、東京の隅田川は逆に川に背を向けた状態で計画がすすんでしまったため、今になって親水公園を計画してもなかなか面白くならないのだそうです。
 横浜の夜景も水際の景色を見て楽しめるような計画にすればもっと楽しくなるのでは、とのことでした。
 続いてアートフェスティバル「art-Link 上野- 谷中2001」の調査報告が行なわれました。「art-Link 上野- 谷中」は、1997 年にスタートしてから今年の秋で5回目を迎え、すっかり上野の秋のアートイベントとして定着してきました。照明探偵団では『art-Link98 「照明探偵団 谷中に現る」』でご存知の方も多いはず。 今回調査に行ったのは上野の森美術館の参加企画「和田みつひと〈光のかたち〉公園灯プロジェクト」です。
 場所そのものを作品化していく和田さんは、今回上野公園内の公園灯8 本を使って光のインスタレーションを行なっていました。 既存のポール灯のガラス面に黄色の透明シートを貼って風景を変貌させるというもので、またそのポール灯が上野駅から公園を訪れる動線上に位置していることから突然目に飛び込んでくるようになっています。
 薄暗い公園の中で生い茂る木々の間から漏れる黄色い光は、ついそちらに足を運んでみたくなるような雰囲気。主張しすぎることなく「あ、そういえばこんなところに公園灯があったんだな」と思い出させられるような、そんな光のはたらきかけを感じたのでした。
 最後はヒカリモノの紹介で、今回は探偵団倶楽部団員の田中盛志さんの作品が発表されました。
 コイズミ国際学生照明デザインコンペにおいて佳作を受賞した「みんなのぼつぼつ。」という作品で、視覚障害者のための黄色いサインブロックを光らせるという斬新なものでした。
 使用した材料のサンプルや、他の入選作品の紹介なども併せて行なわれ、関心をもった人たちの質問も多く寄せられました。こういった作品や気になるものを持ち寄って皆で話し合うとやっぱり盛り上がりますね。
 また、今回のサロンには遠く神戸で照明探偵活動を行なっている方2 名が参加してくださいました。神戸といえば夜景の美しい街。阪神大震災がきっかけとなって自分たちの街を復興させようと発足し、現在総勢約100 名と盛り上がっています。
 独自に制作したパンフレットにはきれいな神戸の夜景の写真が盛りだくさん。これらの写真もプロの写真家によるものではなく、自分たちで好きなスポットの写真を撮って持ち寄ったのだそうです。
 今後も活動内容を報告してもらえると嬉しいですね。(橋本 八栄子)

TBS「はなまるマーケット」で “ライトアップゲリラ”が出題!

2001 年9 月26

 9 月26 日(水) のTBS 「はなまるマーケット」ママダスコーナーで照明探偵団活動のひとつであるライトアップゲリラが問題として出題されました。「次のうちで、照明探偵団が実際に行っている活動はどれでしょう?」という問題で、①出張お助けライト②明るいコンサート③突然ライトアップ④インスタント日光浴、からゲストの皆さんが正解だと思うものをひとつ選ぶ、というものでした。
もちろん正解は③。以前に品川で行われたライトアップゲリラの様子が銭湯や川のライトアップの写真を使って紹介されました。

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照明探偵団日記

 2001年9 月11 日、この日が歴史に恐ろしく悲しい一日として記録されることになりました。長い間NY マンハッタンのシンボルであったワールドトレードセンターをはじめ、アメリカ各地がテロの攻撃に遭い、たくさんの尊い命が失われました。
 照明デザインの分野でも先駆者的な役割を果たしてきた街、NY。その街の景色が一瞬にして変化し、人々がパニック状態に陥っている光景は見るに堪えられないものでした。
 NY の街では教会で、公園で、そしてそれぞれの家庭で追悼の光としてろうそくのあかりが灯されている様子が報道されていました。闇にゆらめく暖かいろうそくの炎は不思議と人の心を落ち着ける効果があります。瞬時にして大切な人を失った人々の心が元の状態に戻るまでには長い時間を要することでしょう。小さなあかりが少しでも人々の心を癒し、明日への生きる希望を思い出させてくれれば、と思います。
 亡くなった方々のご冥福と世界平和を祈って・・・ (田沼彩子)

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