照明探偵団通信

照明探偵団通信 Vol.13

Update:

発行日:2002年7月1日
・海外調査レポート/~ベルリンカフェ事情~
・海外展示会レポート/~フランクフルトメッセ~
・面出の探偵ノート
・探偵団倶楽部新規会員募集・継続手続き
・“Eyes in TOKYO”/~外国人のみるショッピングエリア~
・照明探偵団倶楽部活動1/街歩き報告(お台場・日本科学未来館)
・照明探偵団倶楽部活動2/研究会サロン報告
・探偵団日記

ベルリン・カフェ事情

  
Berlin, Germany 2002/04/17-20

1.ベルリン・ポツダム広場
ベルリン・ポツダム広場

今回訪れたベルリンは、統一ドイツの首都として進化をし続ける、ヨーロッパの中で今最も注目される街のひとつ。1989 年のベルリンの壁崩壊後、急速に新しい建築も増えていて、街中どこを歩いていてもタワークレーンが見えるといった様子。 ポツダム広場・再開発地区の建築群も見ずには帰れないけれど、ベルリンならではのあかりはどこにある?ベルリンっ子はどこにいる??ということで、旧東ベルリン中心部・ミッテのまわりを街歩きしながらのぞいて来たカフェについて、ご報告します。

2.高架下のクラシカルなカフェ
高架下のクラシカルなカフェ
3.歩道幅の広い大通りに面したオープンエアのカフェ
歩道幅の広い大通りに面したオープンエアのカフェ
4.窓際の席から埋まっていく\
窓際の席から埋まっていく
5.骨董屋街の通路の途中になんとカフェが・・・
骨董屋街の通路の途中になんとカフェが・・・
6.夜カフェに誘われて街へ出る
夜カフェに誘われて街へ出る
7.あたたかなペンダントが店内を照らす
あたたかなペンダントが店内を照らす
8.東京のオシャレなカフェ
東京のオシャレなカフェ
9.都会の一角の古いマンションで隠れ家的カフェを発見
都会の一角の古いマンションで隠れ家的カフェを発見

●ベルリンカフェ事情

ポツダム広場周辺にも観光客向けのカフェはたくさんありますが、地元の人たちが集っているのは旧東ベルリンの中心部。まだ肌寒さの残る4月のベルリンだったけれど、少しでも天気のいい日には長い冬の間ずっと待ち侘びた太陽を楽しむように、人々はオープンエアのカフェで時間を過ごしている様子でした。
最初に足を踏み入れたのは、イタリア人の経営するカフェ。やはりイタリア人のコーヒーはどこで飲んでもおいしい。座る場所は奥にもたくさんあるはずなのに、席は通りに面した窓際から徐々に埋まっていきます。
夕暮れにはまだ少し時間のある午後のゆっくりした時間を楽しむ人たち。窓際の席に差し込むどんよりした柔らかな光は室内にあるのにオープンエアのカフェと同じ印象を与えていて、居心地のよい半屋外?半室内?どちらとも言えない空間を構成しています。店のあかりはまだ点いていません。
ミッテの中心、フリードリッヒ・シュトラーセ駅高架下の骨董屋の建ち並ぶ通路の一角に面白いカフェをみつけました。ドーム状の天井には一面にアンティークの看板が埋め込まれていて、美しいアールを描いています。クラシカルなペンダントやステージライトが空間のアクセントとなり、まるでタイムスリップしたかのような黄金の空間にしばし酔いしれてしまいました。カフェだけれど骨董ストリートの通路でもあるので、お茶をしていると横を人が通ります。それがとても不思議な印象。ガラスを通して差し込む曇り空の青白い光と金色のドームから構成される場所。このコントラストが何とも言えない安堵感と心地よさなのです。いつまでも飽きることなく長居していたいカフェに仕上げています。

●夜カフェの魅力

夜カフェの魅力も大人文化の成熟しているヨーロッパならでは。きっと東京では見られない夜の世界がそこには広がっているのでは?!、と私たちは某雑誌の一枚の写真にまんまと誘惑されて、とあるカフェにやってきました。人がシルエットとなって闇に浮かび上がる何やら怪しげな雰囲気。
うーん、これは行ってみたい!
しかし、一歩足を踏み込んで拍子抜けしてしまいました。写真で見たような闇と人間が渾然一体となった暗く怪しげな雰囲気は一切無く、健全なにぎわい、ざわめきがそこには存在していました。
自分の好きなようにテーブルを組み合わせて席に座り、自分たちの時間をみんなが楽しんでいる様子。写真にすっかり騙されてこのカフェにやって来た訳ですが、裏切られたという気はしませんでした。なぜならそこには確かに人が主役の心地よい夜の空間が広がっていたので。
この店の自慢はオーナーのコレクションだと言うペンダントライト。フォルムもひとつひとつが特徴的で、全く統一感など出なさそうなものなのに、あたたかな白熱の調光されたあかりがこの店に見事にマッチ。
店内の喧騒と相まって夜カフェの魅力を引き立てています。

●それではTOKYO はどうだろう?

こうしてベルリンのカフェをすっかり堪能して、目が肥えてしまった私たちは、東京に帰ってきて街歩きをしながらやはりカ
フェに入ってみました。
東京にだって今やヨーロッパの香りが漂うカフェはいくらでもあります。でも本場のそれとはやっぱり違うんだよな~。人が違う、そこで話されている言葉が違う、目の前に広がる街が違うのだから当たり前のことかもしれません。でも本当にそれだけなのか?
東京のカフェに入ってまず最初に気付いたのは、そこがほぼ完全に20 代から30 代の限られた年齢層に独占されたいわゆる“オシャレ”な場所になっているということ。新聞を読んでいるおじさんや散歩途中の地元のおばあさんなどはいるはずも無く、オープンカフェの窓際の席にはかなり気合いの入った服装をしてバッチリお化粧をしたお姉さん達が並んでいる。
東京のカフェは競って気合を入れて出かけていく場所であり、こじゃれたカフェでお茶をすることが一種のステータスにさえなりつつあるように思いました。
そういうカフェではスノッブな雰囲気の漂う柔らかな間接照明が結構見られます。
日本のカフェは生活に根付いたみんなのための場所というよりも、限られた世代のライフスタイルを投影した空間になっているように感じます。ヨーロッパのカフェの役割を果たしている場所を日本で探すとすると、それはファミレスか居酒屋か。もちろん最近のカフェブームに乗って、東京でもいろいろなタイプのカフェが登場してきました。例えば自分の家でくつろいでいるような印象の、座り心地の良いソファを無造作に並べたカフェ。本が自由に読めるように置いてあって、フロアスタンドなどを使って照明の位置も低くなっているので、心地よさからついつい長居してしまいがち。気合カフェもいいけれど、やっぱり落ち着くヨーロッパホームスタイル風リラックスカフェが、東京にももう少し増えてもいいのではないでしょうか?(田沼 彩子)

建築見本市 in ポツダム広場 !

街を歩いていて一際目を引くのがポツダム広場を中心とした再開発地区。ソニーセンター、ダイムラークライスラーなどなど、世界の著名な建築家の建物がずらりと軒を連ねて、さながら未来都市の建築見本市といった様子です。建築マップ片手にめぐってみてはいかが?!

1. SONY CENTER / Helmut Jahn
2. Hi-Rise Tower / Hans Kollhoff
3. Office / Renzo Piano
4. Office / Richard Rogers
5. Housing / Richard Rogers
6. Housing / U. Lauber + W. Wohr
7. Volksbank Headwuarters / Arata Isozaki
8. Residential Hotel / U. Lauber + W. Wohr
9. Housing / Renzo Piano
10. IMAX Theater / Renzo Piano
11. DEBIS Headquarters / Renzo Piano
12. Office / Rafael Moneo
13. Hotel Grand Hyatt / Rafael Moneo
14. Musical Theater + Casubi / Renzo Piano

“2002 Light + Building” フランクフルトメッセレポート

Frankfult, Germany 2002/04/15-19

イタリアで開催される照明器具見本市、ユーロ・ルーチェとインテルはヨーロッパのなかでは多少イタリアンローカルな色が
濃いが、フランクフルトで毎年開催される、この照明・建材展は規模、出展者数ともにこちらの方が大きい。
 ドイツは日本でも照明設計者にはなじみの深い、ERCO 社やBEGA 社を有する国でもある。もちろん先のルーチェやインテルへの参加企業も、ほとんどがこの展示会には参加している。欧州照明事情を知るための唯一最大のイベントである。

■アウトドア・スタンダード

 今回のエポックはERCO 社のアウトドアシリーズの発表であろう。ERCO 社そのものは昨年にこれらをすでに発表しており、むしろ興味深いのは追随する他のメーカーの動向である。
 ERCO 社は高品質なスポットライトと洗練されたトラックシステム、またダウンライトで知られるメーカーである。ヨーロッパ各地の有名美術館などで採用されている照明界のリーディングカンパニーなのだ。永らく屋外用の照明器具には手を出さなかったERCO が満を持して発表したものは少なからず他社に影響を与えているはずだ。屋内のエルコに対して双璧をなす、屋外のBEGA 社だが、品質の高さは主に耐久性にあり、形態のバリーションこそ多いが、配光のそれに乏しく質も高いとはいえない。ERCO 社が屋内照明で培った光の質を屋外に持ち出せば、それらは自ずから屋外照明のスタンダードとなるに違いないからだ。
 昨年発表の今年であるから、本当の影響はまだ現れてはいないと思われるが、散見された状況を報告する。
 
 投光器は配光の質に加えて、レンズ・フィルター・ルーバーなどのアタッチメントシステム、それと小型HID ランプ全盛の
今は安定器を収納する取り付けベースのシステム整備が必須であるが、その点において競合はWe-ef 社であろう。We-ef 社は創業50年で、じつは投光器システムの開発・販売はERCO 社に先駆けている。製品ラインナップもERCO 社より多い。一部製品は日本でも輸入・販売されている。

一方、イタリアのiGuzzini 社が今年、ERCO の対抗製品ともいえるWoody シリーズを発表した。ColorWoody(マルチカラーチェンジャー内蔵型)などをはじめとして、多様な展開を見せているが、むしろ目を引いたのは、直管型蛍光灯を用いたLenealuce というシリーズだ。
 iGuzzini 社と対抗する、同じイタリアのTARGETTI 社の今後の動向が気になるところ。

■新光源LED

 LED(高輝度発光ダイオード)そのものは珍しくも何ともないものだが、現在世界的に照明業界が注目し、開発競争を繰り広
げている。このメッセでもたくさんのメーカーが応用製品を発表していた。しかし応用といっても、その絶対光量の少なさから「照らすための照明」ではなく「見せるための照明」器具が多い。つまりインジケータライトなどである。ERCO 社でさえもこれを製品群に加えている。(ERCO 社はオリエンテーションライトと呼んでいる。)同じ「でさえも」はPH ランプで知られるlouis poulsen 社にもあてはまる。さすがにlouis poulsen 社には独自の解釈を求めたいところだが、どのメーカーをとっても開発アプローチは似たり寄ったりである。むしろランプメーカーのOSRAM 社がLED を照明用光源としてユニット化したことの方がインパクトが大きい。
 

■インターネット

 われわれ照明デザイナーにとって、海外の見本市での重要な仕事の一つはカタログ収集であった。紙のカタログは、パソコンの普及でCD-ROM になるか?などと思っているうちにあれよあれよという間に、その媒体をインターネットに移してしまった。もちろん紙もCD もある。展示会場でこれらを直接受け取ることはなくなって久しいが(後日、送られてくる。)紙とCD のどちらもまだ同じように供給されている。しかしたいていのメーカーはWeb 上の情報アップデートの方が早いし、充実もしている。紙やCD などの物質媒体の存在意義は日に日に薄れていくだろう。
 書籍一般の価値も情報媒体から、一種の工芸品的価値へと移行すると言われているが、ベルギーの新進メーカーModular の紙カタログがおもしろい。内容や装丁がカタログと言うよりも写真集や画集のそれに近いからだ。
 
 最近になって、コンピュータの3D ソフトウェアでは有名な3Dstudio というやつがバージョンアップし、同じく3DCG と照明解析ソフトで有名なLightScape を機能の一部として取り込んだ。先のERCO 社はWeb サイト上の製品アイコンを、この3Dstudio のモデリングウィンドウをドラッグ&ドロップすると器具の3D モデルデータと配光データがいっぺんに取り込まれるという機能(というよりはサービス)を大々的にデモンストレーションしていた。
 
 ハノーバーメッセから分離してもなお広大で1日や2日で回りきれない印象のフランクフルトだが、個々のメーカーのプロダクトよりも、通貨統合による照明業界への影響が今後は興味深いと思われる。インターネットによる情報流通の均質化との両輪で、欧州の照明業界人は今よりもっと忙しくなるのだろう。
(澤田 隆一)

10.ERCO のアウトドアシリーズ
1. ERCO のアウトドアシリーズ
11.BEGA の展示ブース
2. BEGA の展示ブース

面出の探偵ノート

●第29号 2002年7月1日(月) ワールドカップ最終戦観戦記

5 月末に北京大学の招きで建築家の原広司さんと一緒に「光会」というテーマの講演をしてきました。2 泊3日の忙しない日程でしたが、原さんは「光的形態」(本当は様相としたかったのですが、様相は中国語にない・・・とか言われて仕方なく) というテーマ、私は例のごとく「21世紀的都市環境照明」というお決まりテーマでの講演でした。この珍道中もなかなか面白かったので、探偵ノートにはこの「北京物語」をレポートするつもりでいましたが、いつものように締切ぎりぎりになってしまって、今となると昨夜の横浜スタジアム、ワールドカップ最終戦のほうが旬になってしまいました。今回は「北京物語」を先送りして、昨夜の興奮を語りたいと思います。最終戦、思いつくままに・・・。
どうして私なんかに貴重なワールドカップの最終戦チケットが手に入ったのかは未だ謎ですが、とあるオフィシャルスポンサーの招きでありました。照明デザイナーの近田玲子さんと二人だけで盛り上がっていた感じなのですが、実はその他の招待者は殆どが会社のお偉いさんたちで、照明業界の社長さん連を除いては殆ど知る由もないご一行です。先ずは日の出桟橋に2時半集合。豪華クルーズ船を借り切っての飲み食い前哨戦で、横浜大桟橋に着いてからバスに分乗して横浜スタジアムに入ったのが6時少し過ぎ。私の席はUS$750(9 万円)とチケットに印刷さ
れた[E12,10 列268] という良い席でした。
メインスタンドの反対側で、貴賓席と対峙した場所です。両方のゴールが同じように見ることができて選手にも近く迫力満点の席なのですが、いつもTV カメラのアングルで観戦しているので最初は少し違和感がありました。フィールドも思いのほか狭く感じたし、選手の動きを追う視線には必ず全方向からの投光照明のグレアが入ってくるし、選手がゴール前に固まっているとどれが誰の足なんだか分からなくなるし、霧雨はかかってくるし。
低い位置からの視線がいかにTV 視線と違った感動と不便さの両方を伴うものかを実感しました。そして更に発見したのは競技場では「誰も試合を解説してくれない」ということです。慣れた人は携帯ラジオを耳にして実況解説つきで楽しんでいました。なるほど頭良い。
私が最も興味を持って観戦したのはボールを追わない人たち。ドイツに攻め込まれている時のロナウドなんて、とんでもなく暇そうに休んでいる様子です。フォワードとはそういう仕事なのだと感心しました。しかし、味方がブラジル陣深くに攻め入っている時でさえ、ドイツのキーパー・カーンの目の鋭いことといったらない。これはロナウドとカーンの性格の違いもありそうですね。
その他の普通TV カメラに映りにくい状況と言えば、報道カメラマンたちの熾烈なポジション争い。こと表彰式や会場パフォーマンスになると、何十人もの望遠カメラを抱えたカメラマンたちが、われこそ最高の場所確保とばかり、押し合いへしあいしながら撮影ポジションを争うのです。これまたプロだなあ、と思わせる場面でした。それと滑稽だったのは貴賓席に鎮座した方たちの態度。私はもっぱら双眼鏡で観戦している人たちの表情を観察したのですが、貴賓席では皇后陛下のみが隣の解説者に質問したり、天皇陛下に話し掛けたり、時々は笑みを浮かべたりして体の動きがあるのですが、天皇はもちろん、その隣の金大中ご夫妻などは何処が面白くないのか終始微動だにせずの観戦。お調子者の小泉さんなどはさぞ派手に騒いでいるのではと思いきや、金大中さんに付き合ってか、これもまたお静かに・・・。なんとも貴賓席というところは地獄だなと思いました。つまり軽率に喜んだり手を叩いたりしてはいけないルールになっているのだと推測しました。片方のチームや国を応援することが許されていないのだと。
双眼鏡がとても役立ちました。競技場には試合をする人だけでなく、報道や警備などの厳しい仕事をする人、スムーズな進行に気を配る運営関係者、そして試合の始まる2 時間も前から熱狂的に体をくねらせるサポーター、くねらせたい体をじっと我慢して役目を終える人・・・。色々な詳細表情がありました。
さて照明探偵らしく最終戦の光環境に触れなければなりませんね。ちょっと興奮していて照明どころではなかったのですが、隣で同じように興奮している近田さんとも「ちょっとこのグレアがひどいね!」というのが競技場照明の全てを語っています。そもそも私たちは照明デザインのプロなので、グレアをことさら敏感に感じたりする傾向もあるのですが、私などは持参したキャップのつばを深く下げて2階席上部の投光器の存在を視野から消して観戦していました。そうすると本当に見やすくなるのです。野球の選手はナイトゲームでも帽子をかぶっているのに、サッカー選手はどうして帽子をかぶらないのか??? 、と不思議に思いましたが、それではヘディングもできませんものね。直ぐに気が付きました。多分サッカー選手はずいぶんグレアに苛まれているはずです。それだけ鉛直面照度をとることとグレアをなくすこととは両立しずらい矛盾する要求なのでしょう。
最後に色々行われたイベントやアトラクションの感想。思い返してみると色々な隠し芸が披露されました。最初に和太鼓、そしてお神輿、参加国の国旗、ユニセフの子供憲章、唱歌、富士山、千羽鶴の雨・・・、こんなところですか。どれもどれも私には当たり前のメニューでセンスに欠けるものだなあ、というのが実感ですが、最後の千羽鶴が止め処もなく空から降ってくるのがちょっと面白かったです。もともと折り紙が空からくるくる回って舞い降りてくるような光景は普通では見られません。スタジアム2階席の先端に用意された大きな布の袋みたいなものを、ユサユサ揺すっているように見えたのですが、暗い夜空を背景に投光器に照らされた折鶴が体を回転させながらキラキラと舞い降りる瞬間は、雪の結晶のようでもあり、すべてを終了したワールドカップへの労いのようでもあり、しばし目を奪われるような印象的な場面でした。とはいえ数百万羽に及ぶ夢の折鶴は、最終的に退場者に踏みしだかれて落ち葉のように、拾うものもないほどでしたが・・・。
競技場をバスがでて品川へ戻り着いたのが12 時ごろ。私にとっての夢の最終戦はとても短く多少あっけなく過ぎ去りました。やはり競技場では照明探偵ごっこなどしていてはだめですね。ひたすらゲームにのめり込まなければ。何をやっても少し覚めたところがあるのは私の悪い癖です。少し反省の観戦記でした。(面出薫)

“Eyes in TOKYO” 第1回

外国人のみるショッピングエリア in トーキョー 【表参道】

2.オーチャード通り(Singapore)
オーチャード通り(Singapore)
3ガラスファサードを通して見られる各店舗の” レイヤー“
2. ガラスファサードを通して見られる各店舗の” レイヤー“
4.Max & Co. キューブ型のファサード
3. Max & Co. キューブ型のファサード
5.工事現場の赤いコーン
4. 工事現場の赤いコーン
6.交番のサイン照明
5. 交番のサイン照明

今年度の特集として”Eyes in TOKYO”を連載します。
今年は海外レポートが充実するなかで逆に「外国人の見る東京」をレポートしていただき、私たちの身近な東京という街を再発見しましょう。第一回は現在東京に留学中のPeggy Tan さん(Singapore)にショッピングストリート、表参道をレポートしてもらいました。

東京を初めて訪れる外国人にとって、ショッピングという街での体験は、刺激的であり、また同時に戸惑う場でもあります。
銀座、新宿、渋谷・・・。これらのショッピングエリアは、それぞれ独自の特徴と全く異なった背景を持ち、異なる年齢層や需要に応じています。しかしシンガポールのオーチャード通りでショッピングに慣れ親しんできた者にとっては、おそらく表参道が最もほっとするショッピングエリアであり、親しみ深い雰囲気を感じるでしょう。表参道とオーチャード通りには、全体の表情にいくつかの類似点があります。共にゆったりとした広い通りで、樹木が立ち並び、ぶらぶら歩くのに最適です。カラフルで動的な広告サインが頭上を支配する銀座や新宿と違い、表参道とオーチャード通りの光環境は、ディスプレイライティングや店舗から漏れる光で構成され、それらはストリートレベルから建物の3 ~ 5 階レベルのヴォリュームに集約しています。しかしながら表参道にはオーチャード通りとの違いもあり、やはり新鮮な印象も受けます。
明らかな違いのひとつは道路照明の色温度の違いでしょう。
オーチャード通りやシンガポールの大部分では、低圧ナトリウムランプが一般的に使われていて周囲はオレンジ色に染まります。一方、表参道の道路・歩道照明は水銀灯や蛍光灯の高い色温度によって構成されています。また、オーチャード通りでは、ショップディスプレイはビルディングファサードの一部であることが多く、それは奥行きの浅いウィンドウディスプレイとして構成され、店舗スペース奥への視線は遮られます。結果的に二次元的な効果・見え方となります。また、店舗は大きなビルディングの一部分としてストリートレベルに軒を並べているので、それらは同質なものの連続であることに気付きます。
それに比べて表参道では、店舗は様々な高さの、それぞれ独立したビルディングです。
したがって店舗をそれぞれ三次元オブジェクトとしてライトアップしたり、たくさんのビルディングを都市行灯にしたりするいい機会に恵まれていると言えるでしょう。
そのいい例として、Max & Co. ブティックはそのキューブ型と四角い光パネルが特徴的です。その他、各階のテナントが異なったタイプのライティングを行っているビルディングでは、ガラスファサードを通して色々なレイヤーが見られ、興味深いものでした。いくつかのビルディングでは、ライティングをエンターテイメントや、純粋にその光の効果として用い、目立ったものがありました。
La Foret は表面をファイバーがつたい、道路交差点に面してカラーチェンジングなどのオペレーションがされています。キディランドは不思議なミドリ色の間接照明で演出された開口がファサードを作っています。最近出来たというV28 というビルディングは青色のL E D ディスプレイが夜間はファサードを演出し、それらはプログラミングされ、決まった時間に変化します。
しかし私たちにとって表参道を歩いていてもっとも楽しいのは、はっとする小さな発見や表参道のスタイリッシュな雰囲気に全くそぐわない景色です。これらはごくありふれたものだけれど、見飽きた都会の空間の小さな隙間に現れるのです。無名のアーティストによるライティング・インスタレーション、工事現場の赤く光るコーン、また、マンガの描かれた交番のサイン照明・ ・・、こういった体験が表参道をもっとユニークに新鮮にしているように思えます。(Peggy Tan)

第13 回街歩き 日本科学未来館・お台場

2002年05月17日

今回の街歩きは、L P A が照明担当した日本科学未来館を皮切りに、最後はヴィーナスフォートまで、お台場をターゲットとして行われました。なぜか、雨の日が多いといわれる街歩き… 残念ながらこの日も生憎の雨となっていしましたが、総勢16 名もの参加者が集まり、決行されました。

■報告①

7.集合写真(ヴィーナスフォート)
集合写真(ヴィーナスフォート) 
8.日本科学未来館
2. 日本科学未来館
9.夢の大橋
3. 夢の大橋

 集合場所である日本未来科学館では、館内は閉館時間を過ぎていたため見られませんでしたが、面出団長から外観照明につい
ての説明がありました。科学館のアトリウム外壁面のガラスリブ端部には、蛍をイメージしたL E D が光源として仕込まれています。このL E D は、その場の風力によって光源の輝度が変化して発光する仕組みになっており、静物である建築に見飽きない表情の変化をもたらすようになっていました。
 その後ゆりかもめに乗って国際展示場前のシンボルプロムナードへ。ここではキーワードとして「低色温度・低照度・低位置」
があげられ、低い所の光を上手く使おうとした試み、都市軸を意識した軸線照明の実践を垣間見ることができました。また歩行者を意識して、シンボルプロムナード交差点では床埋め込みの光ファイバーやL E Dが、人を飽きさせないように15 分間隔でオペレーションされているという話が聞かれました。この15 分間というのはラスベガスのショーでも使われているように、歩行者を惹きつけていられるギリギリな時間単位のようです。ときには15 分といわずもっと心と時間の余裕をもって、立ち止まってのんびり過ごしてみたいものですね。
 最後には懇親会場のあるヴィーナスフォートを目指しつつ、降りしきる雨の中を夢の大橋を見ていきました。大橋を渡る直前には、残念ながら点灯していませんでしたが、建築家の渡辺誠さんが1997 年に北米照明学会賞を受賞した「FIBER WAVE」がありました。これは幅150mm 、高さ4.5m のしなるファイバーポールの先端に、太陽電池とL E D が付属し、それが風にそよぎ太陽エネルギーによって発光するという非常に繊細で美しいエコロジーなアートです。ただ、ちょっと残念だったのはその足元。通行人がむやみにアートを傷つけないための安全照明なのでしょうが、メタルハライドランプが丸見えで、作品をバーンと照射していました。これではせっかくの繊細なアートが、丸潰れになってしまいそうな感じでした。「おしゃれは足元から」とはよく言われることですが、いい作品だからこそ、最後まで気を使ってほしいと思いました。煌々とライトアップされている夢の大橋は、シンボルプロムナード以上に明るく、お祭りを彷彿させるようなポール灯の足元では6 ルクス、橋の中央付近でも28 ルクスの明るさがありました。懇親会では学生も多く、将来の話に花を咲かせ盛り上がっていたようでした。 (井元 純子)

■報告②

 行ってきました!照明探偵。
 今回の街歩きは、昨年OPEN した日本科学未来館を中心に、お台場を調査してきました。私は、日本科学未来館の”科学未来”という言葉に魅せられ、早めに行って館内まで楽しもうと思い足をいそいそと運びました。
 でも、天気は、やっぱり(?)の大雨。
 日本科学未来館はドカーンとありました。中に入ってみると、ガラーンとしてました。・・・こんなにお金がかかってそうなのに、もったいない・・・閉館真近だったからでしょうか。館内は、最新のモノがたくさんあって、とても興味深かったです。眠れるようなスペース(?)もあったので、お台場の息抜き所としても最適ではないでしょうか。
 入口から入ってすぐに印象的な10m の光ファイバーがありました。そして、閉館してから、団員が揃い外に出て街歩きがスタートしました。傘をさしながら、日本科学未来館のまわりをみて、向かいにある東京国際交流館を見学。東京国際交流館の周辺は、内から生活の光そのものが外に溢れ、外灯いらずで、とても印象的な空間でした。お台場にはガラスの建築が多く、夜にはまるでその建築自身が発光して、周りの環境に対して、照明器具の役割をしていたように感じました。そのためか、周辺は明るくなり、外灯が所々消灯していました。
 東京国際交流館を見学のあと、探偵団一行はゆりかもめに乗り込みました。ゆりかもめの窓からお台場を眺めると、いつもの東京の街並よリワンランク上の街並が垣間みれました。ゆりかもめからは、実際に地を歩いている時より、全体が見渡すことができました。公園に設置されている、低位置、低温度、低照度ですが、演色性の高いランプがこの街並にとても貢献しているように感じました。そして、臨海副都心シンボルプロムナードを歩きました。とても興味深い40m の光ファイバー。しかし、周りにあるビルのオフィスの蛍光灯むき出しのあかりとコンビニのあかりが悲惨に明るくて、せっかくの光ファイバーが少し力ない感じが、残念で悔しかったです。全体を通しての街づくりの難しさを感じる反面、こうした街歩きで現場にたつことでの発見が面白くもありました。それから、ビーナスフォートへ向かう際に通った橋。すずらんのような外灯がデコレイトされていてお祭りのようでした。そのすずらんのような外灯がなくても充分な光があったように感じたのと、人の利用が見られない点に、エネルギーの無駄な浪費を悔やみました。
 そんなこんなでビーナスフォートでの飲み放題、食べ放題の懇親会です。今回は、先生の大学のゼミ生が参加していて就職活動話など、貴重な話を聞くこともできました。ありがとうございました。
 やっぱり街歩きでなきゃ!!です。(上田夏子)

第18 回研究会サロン 

街歩き、フランクフルト・ベルリン調査、北京講演会報告 など

2002 年06 月11 日

10.ライトアップされた新緑の樹木(ベルリン)
ライトアップされた新緑の樹木(ベルリン)
11.北京講演会のポスターを広げる団長
2. 北京講演会のポスターを広げる団長
12

13.Saccade-based Display
3. Saccade-based Display
14.渡邊団員によるプレゼンテーション
4. 渡邊団員によるプレゼンテーション

今年度最初のサロンはワールドカップに勝るとも劣らない熱気と盛り上がりで、約30 名の団員の皆さんと一緒に行われました。遠くは名古屋から参加してくれた団員の方もいらっしゃいました。今回のサロンは先日行われた街歩き(日本科学未来館・お台場)の報告、フランクフルト・ベルリン調査報告、北京講演会報告などが行われました。

■フランクフルト・ベルリン調査報告

まず、田沼団員から4月にフランクフルトで行われたLight+Building(照明とビル設備の国際見本市)、ベルリンの街やカフェ調査などの報告が行われました。Light+Building では照明器具そのものの展示よりも、壁やパネルなどが面発光する展示ブースが目立っていたとのこと。面出団長によるとこのような展示は近年増えつつあるスタイルであるそうです。団長が建築照明の作法として挙げている「建築そのものを照明器具化せよ」という考え方が照明業界では主流になってきているというこ
とでしょうか。
 ベルリンの調査報告では、主にポツダム広場周辺が紹介されました。ポツダム広場周辺は1989 年のベルリンの壁崩壊後、統
一ドイツの象徴としてダイムラーとソニーの資本を導入しての再開発が行われました。ベルリン市が1991 年に実施した都市計画コンペでヒルマーとザトラーの案が一等となり、このプランを元に各ブロック毎にコンペを行い、ダイムラーシティはレンゾ・ピアノが、ソニーセンターはヘルムート・ヤーンが担当することになり、両者に隣接するA + T プロジェクトはジョルジョ・グラッシに決まりました。ダイムラー・クライスラー本社ビルのアップライトされた新緑の美しい樹木のスライドは団員の皆さんにも好評でした。これには面出団長も納得の様子でした。
 また、田沼団員からはドイツと日本(主に表参道周辺)のカフェの調査報告も行われました。本場ヨーロッパのカフェの方はといえば、雑誌などで紹介されている写真とは違い実際に足を運んでみるとかなり明るいところが多く、店内の照明も手の込んだ手法を用いている所は少なくペンダトライトが主流のようです。近年日本ではカフェが急増していますが、日本でのカフェは流行やファッションの発信地であるのに対し、ヨーロッパのカフェは居酒屋のようなもっと生活密着した情報交流の場という位置付けができるのではないでしょうか。だから店内が思ったより明るいのでしょう。

■北京講演会報告

 
 面出団長からは5月に建築家の原広司さんと中国(北京)で行なった講演会の報告が行われました。「21世紀的都市環境照明」と題して開催された講演会ですが、中国ではまだ照明デザインは新しい未知の分野ということで熱意あるたくさんの聴講者に団長は様々な質問を受けたそうです。

■街歩き報告

 
 次に5 月17 日に開催された日本科学未来館・お台場の街歩き報告が行なわれたのですが、その日は生憎の雨で写真撮影も思うようにできず、写真の枚数は御容赦くださいということで・・・。街歩きは雨の日が多いらしく団員の中に実は雨男、雨女がいるのでは?という話まで出ましたが、次回の街歩きは晴れるといいですね。

■ヒカリモノ

 
 恒例のヒカリモノのコーナーでは、渡邊団員からSaccade-based Display なるものが紹介されました。サッカードと呼ばれる高速の眼球運動を利用してL E D を用いた2次元イメージを提示するディスプレです。皆さんも御存知だと思いますが、左右に振ると工事中なんて文字が見えるL E D が埋め込まれた光る棒がありますよね。このSaccade-based Display はそれとは逆の仕組みで光は固定のままで我々の眼球が動くと文字や記号が見えるというものです。じっと見ているとただの光る棒なんですが視線を動かした瞬間そこから文字や記号が飛び出て来るという実に不思議なモノでした。一見の価値アリですよ。他の団員の皆さんもかなり興味を持ったようで熱のこもった意見交換が行なわれていました。
 他にも先ごろ発売されたばかりの新型携帯の紹介などもあり、ますます盛り上がりを見せるヒカリモノのコーナー。照明探偵団は団員一人一人が主役です。気になるもの、おもしろいもの、活動の報告など今後もどんどん紹介していただけることを期待しています。(岡本 賢)

LIVING DESIGN に照明探偵団エッセイ連載開始!!

15.↑この表紙が目印です
▲この表紙が目印です

リビング・デザインセンターから発刊されている会員のための情報誌、” LIVING DESIGN ” が7 月号から隔月で発刊される全国紙になりました。
照明探偵団も今回数ページをもらって、「あかりと生活 照明探偵団ノートより」というタイトルでエッセイの連載を開始!
第一回目は「あなたも照明探偵団!」ということで、照明探偵団とは何ぞや?ということを紹介しています。第二回目からは探偵団の調査報告をメインに、あかりと生活というテーマにフォーカスしたエッセイを写真を交えて紹介していくので、是非ともチェックして下さいね。


照明探偵団日記

2002 FIFA ワールドカップが日本中を駆け抜けた1ヵ月間。日頃サッカーに全く興味を示さない人たちも、この日韓同時開催と言う興奮の渦の中では何とはなしに落ち着かない時間を過ごしたのでは無いでしょうか?半年程前に横浜駅西口の風の塔の近辺で正五角形と正六角形を組み合わせたサッカーボールを豆球で象ったオーナメントを見た時は、「何も今からそんなに騒がなくても・・・」と思っていましたが、横浜で決勝戦だったんですね。電飾ボールも登場するわけです。
ところでそのサッカーボール。今大会の公式試合球” フィーバーノバ” もそうだったように、32 面体という形状は同じでも模様は白黒だけではありません。もともとは茶色でしたが、ボールの回転がわかりやすく、テレビ放映でも映えるようにとの狙いもあって、1970 年メキシコ大会前に登場したのが白黒模様だったそう。その進化は目覚しいものがあります。近い将来、グリーンにキラリと光る電飾ボールが登場する日がやってくるかも。(田沼彩子)

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