探偵ノート

vol.17 春の夜の狂乱夜景図 ~上野公園の夜桜~

Update:

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「春の夜の、夢か現か床の内・・・」江戸期に町衆を魅了した新内節、夜桜の一節。吉原の遊女上田屋園春の廓脱け(くるわぬけ)を語ったものだ。遊廓の二階部屋の窓越しに、ほんのりと灯火に照らし出された満開の桜花が眺められたのだろう。闇夜にひっそりと浮かぶ夜桜・・・。何と妖艶な春の気配だろう。

そんな趣の夜桜は平成の上野には全く感じられない。黙ってじっくり桜を観賞している人など先ず見当たらない。あちこちで様々な鳴りものが大流行。ドラムとハーモニカとバイオリンとギター、という風変わりなアンサンブルに人だかりができていて、終戦直後の流行歌ばかりを演奏している。仲間はずれにされた「草笛オジサン」も勝手に共演する。流し風のカラオケ二人組もいる。桜そっちのけで、みんな春の風に酔いしれている。

公園の中央部からの緩やかな下り坂、その200メートルほどが宴会場の指定区域になっている。特に土日は混んでいて多い日には30万人も訪れるという。

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ここの夜桜をよく見ると「お色気ピンク」と「貧血状態の白」の2種類がある。昼間の太陽の下では、限りなくオフホワイトに近い桜色の花びらも、夜には紅白飾り提灯のお陰でピンクに色づいている。そうかと思うと防犯用水銀灯の周囲では、桜は血の気が引いたように真っ白で、鮮度の高い葉の緑色と強烈なコントラストを見せている。どちらも夜ならではのお色直し、桜の変身状態だ。その狂乱の夜景図を更に致命的にしているのが鮮やかな青色ビニールシート。みんながござ代わりにこれを敷いている。このシートは上野の森を占拠したホームレスの仮設住居にも使われている。夜桜に情緒もへったくれもない。大儲け「夜桜場所取り会社?」の陰謀なのだろうか。

もともと楚々とした梅の花に比べて桜の花は豪華で騒々しい。ぱあーっと咲いて、さっと散る。桜には複雑な思いが混在する。「貴様と俺とは同期の桜・・・」草笛オジサンの軍歌も私にはほほえましくは聞こえない。そういえば30年ほど前、芸大受験時代の「サクラチル」の暗い電報も思い出す。ひっそりと煙るように埋め尽くす谷間の山桜が懐かしい。ライトアップされた夜桜より昼の桜の方がよい。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 3 4 5 5
あかりの量/適光適所・明るさ感 3 4 3 4
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 4 4 3 3
あかりの個性/照明デザインの新しさ 2 3 4 3
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 4 3 4 3
合 計 16 28 19 18
総合評価 ★★★
(17.75点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

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