クアラルンプールを訪れると「アジアの都市の夢の跡」が感じられる。アジアンマネーの目指してきた都市化の高波は、明らかな失速感と共に奇妙な都市環境を作り出している。黄金の三角形と呼ばれる市の中心再開発部には、世界一の高さを誇る連立超高層ビル、ペトロナスタワーがそびえているが、ここから一歩外に出ると道路は凸凹、街路灯も十分でない闇夜の中に屋台の群が密集する。屋台が大好きな私にとってはワクワクだが、いわば「局所だけが超現代」と言ったハイブリッド現象を見せる。
「ペトロナスタワーに驚いていてはいけないよ、もっと凄い奴がある」。そう言って照明器具会社の社長が胸を張って案内してくれたところが、国際空港に近いペタリンジャヤのサンウェイラグーン・リゾートホテルだ。昔、炭坑で当てた実業家がその跡地をリゾート施設に替えてしまったというサクセスストーリー。
この5つ星ホテルを核として施設はテーマパーク型の開発がされている。170メートルの長さの人工海岸、10000平米のサーフィン・ウェイブプール、テーマパークとピラミッド、メガショッピングセンター・・・などなど。案内してくれた照明会社社長は、ここで旨いビジネスをしたらしく、溢れんばかりの光、無数の照明器具、どうやってランプ交換するか理解に困る照明デザインなどを、自信たっぷりに解説している。今日は金曜の夜でもあって、人また人でごった返しているが、家族で夕涼みに来た地元のマレーシア人などは、ほとんど金を使う様子もない。この施設、本当に儲かっているのだろうか?
この種のアジア風成金照明には節操が感じられない。イタリア・ポストモダン風の光かと思えば、その脇にはエジプト王朝風のインテリア照明、フレンチ風のレストランの脇にアメリカ風の樹木へのアッパーライティング、といった具合だ。そして強烈な夜の外観演出照明は何ともイスラミックな味までする。ここに見る光の狂演は混迷する現代アジアのモデルでもある。富める者が意図する光の園。「闇夜の屋台に勝る者なし」という時代の審判を下す日は、それほど遠くないようにも思えるのだが。
面 出 | 探偵A | 探偵B | 探偵C | |
あかりの味/雰囲気や気配のよさ | 2 | 3 | 4 | 4 |
あかりの量/適光適所・明るさ感 | 3 | 4 | 3 | 3 |
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス | 2 | 2 | 2 | 2 |
あかりの個性/照明デザインの新しさ | 2 | 3 | 4 | 3 |
あかりのサービス/保守や光のオペレーション | 1 | 2 | 3 | 2 |
合 計 | 10 | 14 | 16 | 14 |
総合評価 | ★★ (11.00点) |
1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点
あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文 淺川 敏/写真