探偵ノート

vol.24 最終回 下町にも闇がない ~照明探偵団・谷中に現る~

Update:

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台風の余波を受けて天候が危ぶまれていたが、小雨まじりの谷中に30人ほどの仲間が集まった。 今日は恒例の照明探偵団の街歩き会。今回は下町情緒の残る台東区谷中の街と、 そこに潜む墓地の奥にまで分け進もうという企画だ。各自2個の懐中電灯を持参してもらった。 闇に潜む谷中の木造家を、みんなの力でライトアップしようという試みである。 その他にコップに入れたロウソク多数と、昼の太陽光で充電させた100個ばかりの発光ダイオード(LED)、 ハンディ・キセノンライトなどを準備した。何かの時に備えたライトアップのための小道具だ。

下町の明るい商店街を見て、次に墓地付近にやってきた。闇に埋もれた味わいのある木造家を探すが、 なかなか見当たらない。谷中墓地の参道にはデザインされた格好いい街路灯が立ち並び、 商店街のように明るく華やいでいる。やっと見つけた木造家の外観に、持ち寄った懐中電灯を一斉に点灯する。 40個ほどのバラバラな懐中電灯の光を集中させて局所照明を実験する。 更に演出用キャンドルを足元に並べて記念写真。う~ん、何だか大したパワーにはなっていない。まあ、こんなもんか。

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路地が予想に反して明るいのにガッカリして、究極の闇を求めて墓地に分け入る。さすが谷中墓地は広く奥が深い。 ずんずんと奥の細道に入っていくと、空がますます白々してきた。「えっ、何でこんなにあかるいの!」。 照度計を取り出すと0.6~1.2ルクスもある。明るい満月の日の3~6倍もの照度だ。 今日は小雨まじりの低い雲が空一面を覆っていて、繁華街から溢れる光の反射板になっている。 墓地の緑や墓石がシルエットになり、背景の明るい空が異様に輝いているのは解る。 ここにも美しい闇はなく、墓地に眠る先祖も不眠状態に苛まれているに違いない。

私たちは用意した自照式LEDをロウソク代わりに墓地にお供えした。 揺らめくロウソクの火と違い、小刻みに点滅を繰り返すLEDの輝きは超高層ビルに灯る航空障害灯に似て、 谷中の墓地を超現実的な世界へと変貌させた。不眠都市の夜景はどこか現実離れして常に夢うつつ、 バーチャルなフィルターをまとっている。合掌。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 3 3 3 5
あかりの量/適光適所・明るさ感 1 2 3 2
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 5 4 4 3
あかりの個性/照明デザインの新しさ 5 4 4 4
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 3 3 3 4
合 計 17 16 17 18
総合評価 ★★★
(17.00点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

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