発行日:2014年11月21日
・ライトアップニンジャ in サンパウロ(2014/08/18-08/20)
・こどもワークショップ(2017/07/30)
ライトアップニンジャ in サンパウロ
2014.08.18-08.20 東 悟子
人口 1132 万人という南米最大の都市サンパウロ。日中は人があふれ、活気的な街ですが、夜になると、人々は郊外にある自宅に戻り、人気のないさみしい街になります。道端でねている人やごみでよごれた道々。そんな街の照明にもとめられる役割は、人々が夜、安全だと感じること。「暗がりを排除することが、犯罪を抑制する。」その考えは、市民に根強く浸透しており、暗いと不安を感じるという声が多く聞かれました。
対象は学生ではなく、すでに照明のキャリアを何年か持つ経験者でした。夜の街を歩きながら、ゆっくりその光環境について語り合う機会がほとんどないという人たちと、単に光の英雄と犯罪者を探すというだけでなく、どのように照らせばいいかまでの議論、実験といった踏み込んだところまでのワークショップとなりました。
ライトアッププロポーザル投票で 1 位を取ったプランを実施
■ワークショップ会場:Copan
会場となった建物 Copanはブラジルの代表的な建築家オスカーニーマイヤーがオリジナルプランを設計し、その後何度か中断がされましたが、1964 年に完成となった巨大な建物。上層部の世界最大の世帯数をもつ住宅部と、下層の商業施設部で構成されています。周りは公園や教会、銀行が立ち並ぶ旧市街に立っています。まわりの建物は新しいものほとんどなく、1960 年台から 1980 年代に建てられたもののようでした。
会場となったビル Copan
■Day 1:オリエンテーション
レクチャーの様子
ワークショップの参加者は約 25 名。そのほとんどが照明デザイナーや照明メーカー勤務で、照明への知識が豊富。しかしワークショップなど、あらためてディスカッションしたり、学んだりする機会は少ないそうで、今回のワークショップはいいエクササイズになったという感想を多く聞きました。
まずは、団長の面出から都市照明レクチャー、街歩きの目的や方法の解説を行いました。街歩きで光の英雄と犯罪者を探ること、その英雄と犯罪者の定義とはなど、簡単な探偵団の解説ではなく、踏み込んだ内容となりました。
■街歩きとグループディスカッション
街歩きは、まだ明るい時間からスタート。参加者のほとんどが照度計を持参しており、道々照度測定を行いました。照度計の示す値がバラバラなので道に 10 台ほど置き、面出団長のとどれくらい違うのか確認する場面も。ヘッドフォンからの翻訳された内容を聞きながら、うなずいたり、首を傾げたり、質問をしたりしながら進みました。
様々な種類の照度計を置いて、 誤差を確認
メイン会場の Copanをでて、まずはスケートボードの若者が集まる広場へと向かいました。ここは、参加者の一人が照明設計した場所。高い水銀灯で煌々と照らされた広場は、スケートボードを楽しむ人への安全性は担保していましたが、心地よさという点では、あまり好感を持てませんでした。しかし多くの人がそれぞれの時間をすごしており、街の人からは愛されている場所であるということは明らか。第三者からから見て、あまり好ましくないと思われる環境でも、そこに住む人にとっては、居心地のいい環境であることを否定してはいけないのだと強く感じました。
その後、別の公園に向かいました。この公園は、一人では歩かないようにと地元の人に注意されるような公園で、人はたくさんいるのですが、ホームレスやお金を無心に来る人がいたりするような公園でした。公園もその周りの道路も煌々とまぶしく、様々な種類の街路灯がいくつも立っていました。一種類ではたりず、次々に照明を足していったのが、過剰な照明につながった原因ではないかという意見があがりました。
街歩きは明るいうちからのスタート
スケートボード広場にて意見交換
■Day 2:調査発表・プロポーザル・投票
ディスカッション後は、チーム毎に見つけた光の英雄と犯罪者を発表。Copan のライトアッププラン提案もしました。どのチームも眩しすぎて様々な形の街路灯を犯罪者として挙げ、コパンの形に光る信号機や、特徴的な窓明かりなどを英雄として挙げていました。ライトアップの投票では、さまざまな議論がありましたが、赤と青のコントラストの効いた非日常を演出するプランに決定しました。
■実験
投票で決定したライトアッププランを実施させるために必要な機材の種類、台数を検討。それが決まったチームから、担当場所に実際の器具を持っていき、照明実験を行いました。フィルターの色や配光、器具の設置場所などを実験し、次の日の本番に備えました。
街歩きのまとめ方の説明
グループディスカッション
光の英雄と犯罪者の発表
ディフューザー有無の検討
■Day 3 : 準備
午後 2:00 に集まり、各チーム前日に決めた担当エリアの準備をスタート。
配線中
照明メーカーの協力で集まった器具は RGBの LED 灯光器、ハロゲン灯光器、LED テープライト、スポットライトなど全部で 140 台。木に上ってスポットライトを取り付ける人、配線をガムテープで道路に張り付けている人、リニアの器具にカラーフィルターを取り付けている人。短い時間のなかで、全ての照明が手際よく設営されていきました。テレビの取材もはいり、いつもと違った雰囲気に、通りすがりの人々も何のイベントがあるのか興味津々といった様子。会場は本番に向け、ばたばたとした雰囲気の中、整えられました。
■ライトアップ本番
本番たった 2 時間のライトアップ。最初の 1 時間は 1 位を獲得した赤と青のコントラストが効いたプランで演出。後半の 1 時間は赤のフィルターを外し、暖かな色温度で照らすライトアップを実施。夜は暗く沈んでいた建物が、ライトアップで見事に浮き上がり、居心地のいい空間に変貌する。3日間で街歩き、英雄と犯罪者のプレゼンテーション、ライトアップニンジャプログラムをこなしたことがなかったので、開催前は不安でしたが、きちんと形になり、ほっとしています。何より今回このイベントに参加された方々が、とても熱心で、意欲的だったので、すべてがスムーズに進められたことが大きかったと思います。ライトアップニンジャは、参加者だけではなく、通りかかった人や、そこに住んだり働いたりしている人がみられるので、たくさんの人に知ってもらえるチャンスになります。照明に興味がなくても、通っただけで人を惹きつけるようなイベントを今後もつづけていきたいと考えています。 (東 悟子)
赤と青のライトアップ
赤のフィルター無しのライトアップ
参加者との集合写真
こどもワークショップ
~夜の東京に繰り出して、光の英雄と犯罪者をみつけてみよう。~
2014.07.30 東悟子 + 黄 思濛
夏休み真っ只中のの 7 月 30 日。照明探偵団 Jr. を結成し、夜の表参道界隈を街歩きしました。こどもワークショップ初の街歩き企画。
16 名の小学生と中学生が参加
■エリア、チーム分け、調査方法
夏休みこどもワークショップを 7 月 30 日に開催致しました。
今回のテーマは照明探偵団 Jr. 街歩き〝光の英雄と犯罪者をさがそう″。
照明探偵団の主要な活動である街歩きを子供たちとも挑戦してみようという事で計画しました。参加者は小学 3 年生から中学 1 年生までと、比較的年齢が高いこども達が対象。
LPA から原宿までを 4 つのエリアに分け調査を実施しました。
エリアは次の4つ。
① LPA から表参道までのキャットストリート
② 表参道沿い
③ キャットストリート原宿側
④ 竹下通り
1チーム 4 名の 4 チームの構成。各チームにインストラクターとなる探偵団員がついて回りました。チームに 1 人は担当エリアのマップをもち、英雄には赤、犯罪者には青のシールをはり、その場所の写真を撮影。コメントをマップに書き入れました。
1 時間ほど街歩きを行った後オフィスに戻り、お弁当を食べながら、報告会につかう写真を選択。英雄と犯罪者のシールを貼ったマップとその場所の写真を模造紙にはり、コメントなどを書き込み発表用のポスターを完成させました。正味3時間のとてもスピーディーで密度の濃いワークショップでした。
面出団長の説明をうけるこども達
歩道橋の上から表参道を観察
道端で立ち止まり、 照度を測定。初めて見る照度計に興味津々。
竹下通りの明かりを調査。 様々な種類のあかりをみて英雄と犯罪者を地図上にシールで分類していく。 説明を聞く顔も真剣。
大人の意見がこども達の判断に影響しないように、概念的な解説や意見はできるだけ言わないように注意を払いました。街を歩きながら子供たちは、次々に赤と青のシールを地図に貼っていきました。煌々と明るい交番は犯罪者、雰囲気のある落ち着いた品のある高級ブランド店は英雄。眩しすぎる街路灯は犯罪者、かわいいショップの照明は英雄。
こども達の判断基準はカッコいいかどうか、眩しすぎないかどうか、落ち着くかどうかに集約されており、書くコメントもうなずけるものがたくさん。かわいい、かっこいいの基準に違いはありますが、大人の意見と差異がないのではないかと感じました。 (東 悟子)
■感想
写真を選んで地図上にはり、コメントを記入して、発表ボードを作成。
全体的に子供達に共通していたのはキラキラしたものを好み、暗さを嫌がる、ということでした。赤色の照明はホラー映画を連想させるらしく班全員が犯罪者のレッテルを貼りましたが、同じカラーライティングでも青色の光は「キレイ!」と喜んでいました。子供の感性は理屈ではなく、生活の中の体験から来る直感的なものだと改めて感じさせられました。 (黄 思濛)
発表ボード