発行日:2017年7月3日
・照明探偵団倶楽部活動1/第58回街歩き:蒲田 (2017/08/25)
・照明探偵団倶楽部活動2/第56回照明探偵団サロン@ 照明探偵団事務局 (2017/09/06)
・照明探偵団倶楽部活動3/BELGRADE OF LIGHT 2017 (2017/09/04-09/10)
第58回街歩き:蒲田
4路線の交差点・再編過渡・蒲田のあかりの境界を探せ
2017/08/25 古川智也+黄 思濛+成本志保+武内永記
駅周辺再編プロジェクトが進行中の蒲田。庶民的な商店街、都内屈指のパチスロ街、行政・文化施設、ホテル街、閑静な住宅街、様々な顔をもつ街の照明はどのように発展してきているのかを探りました。
様々な街の要素が入り組んでいる蒲田。照明の境界線は存在するのか。JR蒲田沿線を4つのエリアに分けて調査してきました。
昭和の雰囲気が残るバーボンロード
初参加5名に街歩きの心得を伝授
サンライズロード入り口,400Mのアーケードが続く
■1班 JR蒲田駅西口 東急沿線
1班はJR蒲田駅の西口東急沿線を担当しました。ルートは、グランデュオ西館→長さ400mのアーケード街“サンライズカマタ”→昭和40年、最初に天蓋が設けられた“サンロード”→魅力的な飲食店の多い“バーボンロード”。
西館を出て、団員が驚いたのは駅エントランス周りの暗さ。路面にも鉛直面にも光だまりがなく、路面で10㏓程度。軒下のダウンライトは不点灯。安全・安心のためにも改善を求める声が多く聞かれました。
駅前の東急プラザファサードにはLED面発光の強い光を放つ広告と垂れ幕広告がありますが、垂れ幕への光量が周囲の看板照明と比べて不足しており、広告効果が薄いという意見がありました。
サンライズカマタは、通りと直行する直管FLによって、路面400lx、4700Kのほどよい明るさで、安くて品揃えの豊富なお店が多く、古い下町の風情がありました。しかし、最近目にすることが多いLEDで縁取った立て看板は、正面への配光が強すぎに感じられました。
サンロードや、天蓋のないサンロード以西では、光の犯罪者と英雄が多数混在。夜空の見える通りに、メタルハライドランプがまる見えで白い光を放つ街路灯はグレアを強く感じました。温かな光の店内に、棚下のFLの白い光が雰囲気を壊している靴屋もありました。
一方、全員が英雄に挙げたのは、昭和の香りが漂う大衆食堂、真っ白な外壁と店内の怪しげなネオンカラーのペンダントライトが目立つタイ居酒屋、店内から溢れる電球色の温かい光が、歩行者に安全を提供していた天ぷら屋。
飽きの来ない街全体の賑わいと、見え隠れする個性的な光が共存共栄する“親しみやすい繁華街”と蒲田を共通認識したようです(古川智也)
■2班 JR蒲田駅西口 住宅エリア
2班は蒲田駅西口から出発、商店街や繁華街から少し外れた住宅街を歩きました。
小型飲食店が並ぶクロス通り商店街は古いお店が多い為か、照明は白熱球やフィラメント電球、メタハラの光源が多く、色温度が低いオレンジの光で風勢ある下町の雰囲気が感じられました。通行人も多く、賑わいある通りでした。
通りを抜けると一気に雰囲気が変わり、急に暗いエリアに突入。東京工科大学付近ではほとんどデザインされた照明はなく、通行用の最低限の光を提供するポール灯しか見当たりませんでした。ガラスボール型ポール灯は同じデザインでありながら場所によって乳白や透明が混在し統一性がなく、グレアも強かった為犯罪者に。キャンパスの建物は繊細な建築デザインがあるのに全くライトアップされておらず、もったいないとの意見が多数ありました。
そのまま北に向かって歩き、西蒲田の方へ向かうと整然な住宅街が広がります。駅周辺の賑やかさからは想像できないほどの静けさと道路の暗さに驚きました。あまりの暗さに普段は犯罪者として挙げられるドラッグストアやスーパーの白い過剰な光も、道の明るさに貢献しているという事で英雄。所々で見かける小さな居酒屋やお店の柔らかな照明はノスタルジックな昭和の光とのことで英雄に。街路灯の多くは住宅街だからこそ配慮すべき家の中への光の侵入があり犯罪者に挙げられてしまいました。
普段足を踏み入れない場所を歩いたことで蒲田の印象が変わり、蒲田のもう一つの顔が見れた事が団員にとって一番の収穫になったのではないかと思います。(黄 思濛)
意外にも評価の高かったスロット店のファサード照明
公共施設アプリコホール
■3班 JR蒲田駅東口周辺
交通網の充実や大田区を代表する城南の歓楽街としての蒲田。3班は、その甘美な遊興街から駅前商店街・官民学連携のもと近年区画整理されたさかさ川通りおよび行政エリアを含む蒲田駅東口周辺を調査しました。
遊興街はイメージ通りどこまでも主張する灯りの犯罪者が多くみられましたが、その中に設計意図を感じられるスロット店を発見。伸びやかで柔らかなファサードは意外性も相まって団員から高評価。
また街のシンボルである商店街は、管轄が異なる為なのかその通りごとに多種多様な街路灯が存在し、周りの明るさに埋没しながらもその個性を十分に発揮していました。それが蒲田“らしさ”を補っている半面、種類の異なるLEDが通行人の視線の位置に露呈され、白く悪目立ちしていたのは非常に残念な犯罪者に感じられました。もしかしたら、光源の形を考えることで、個性ある英雄になり得るのかもしれません。
続いて、蒲田の中心にありながら裏通りとなって久しい旧逆川道路やその先の行政エリアにあるアプリコホール等は、近年再整備がされ想像以上の環境デザインが確立。雰囲気を損なわないポールライトが配置され好印象。中でも、眩しさを放つ埋込式投光器をカラーコーンで塞いだ事で、淡く漏れた灯りは満場一致の英雄でもありました。このような何気ない偶然の産物が目に留まる事こそが、探偵団の醍醐味だなと改めて感じる街歩きとなりました。
今回感じた蒲田の灯りの印象は、団員みな街歩き前に想像した通りだったようです。ただ、その景観の不統一感による独特の街並みがこの街の魅力へと繋がっている事も明確になりました。街自体ゆっくりと変化をみせており、グレーなイメージの蒲田の夜が人の集う街づくりとしての新たな試みも進めていて、今後はもう少し意図された照明計画がなされるのではないか、課題がクリアなだけに蒲田の可能性に期待できるという意見で合意しました。(成本志保)
蒲田4丁目の公園 暗いながら落ち着いた空間に
「あすと」 アーケード商店街
■4班:京急蒲田駅界隈
4班は京急蒲田駅寄りの商店街「あすと」、駅前広場、駅南側の住宅街を歩きました。そこには落ち着いた仄暗さやレトロ感も残しつつ、おしゃれにゆったりと生活をされている様子が伺えるようなあかりがありました。
「あすと」は8~9mほどの高さをもつアーケード商店街で、蛍光灯で照度を確保し、各商店は提灯やスポットライトで個性を出していました。アーチ上にはカラーの電飾や駅側入口にパネル状のカラー照明があり、まとまり感があるとは決して言えるものではありませんでしたが、街並みや人の温かみを感じるようなレトロ感のあるあかりでした。
「あすと」を抜けた駅西口広場は全体に仄暗くも心地良いあかり空間でした。商業施設「あすとウィズ」のファサードは、例えば、パチンコ店なのに奇抜さを一切露呈せずそれと感じさえないあかりの表情だったり、街に彩りを添える街路樹は、歩行者動線からのグレアは感じられず、静寂な潤いを与えたりしていました。路面照度は10ルクス未満でしたが、店舗ファサードや駅に繋がるデッキには点や面の輝度感が広がっており、多くのメンバーが「英雄」と評価したポイントになりました。
駅の南側をしばらく歩いて見つけた蒲田4丁目の公園。古風な街路灯から漏れる白色光は10ルクスに届かずとも決して陰気な印象はありませんでした。高温多湿な上、無風で汗が止まらない中でも、この仄暗さがメンバーの疲れを癒し、ちょっとした休憩の中で会話が弾む要因にもなったようでした。
最後に歩いたのは住宅街。同じく仄暗い中に時折現れる暖色で植栽や建物を照らすあかりのマンションや理髪店、ワインショップ、ファッションホテル、通りを抜けた交差点のカフェレストランなどは、蒲田の街の印象を覆すレトロでおしゃれなあかりの溜まり場でした。
ここに見てきた仄暗さやレトロ感のあるあかりはどれも心地よく、それまでの蒲田という地域に抱いていた雑踏感を完全に払拭するものばかりでした。
京急蒲田駅が高架化され駅前広場も含めて近未来的な装いに生まれ変わったせいか、あかりもそれまでの良いところは残しつつ、周辺地域とともに生活者に根差したものに変貌しつつあるのかもしれません。(武内永記)
昭和の雰囲気を色濃く残す商店街から一歩外に出ると暗い住宅街へ続く道。環境デザインが整ってきている公的施設。蒲田は光の境界線はあいまいですが、たくさんの光の要素であふれており、それが蒲田のにぎやかさを創出しているという印象でした。(東悟子)
第56回照明探偵団サロン@ 照明探偵団事務局
蒲田街歩きレビュー
2017/09/06 東悟子
真夏のプレミアムフライデーという街が一番にぎわう日に蒲田で開催した街歩きのレビューを開催しました。
蒲田の夜の印象はどうだったのでしょう。参加者18名での意見交換会が行われました。
駅西口周辺の通りを比較したスライド
昭和の趣が残る食堂が全員一致で英雄に
アーケード街入り口の内照式のパネルが柔らかな色使いで英雄に
住宅街にある公園は班員全員が英雄と判断
8月に開催した蒲田での街歩きのレビューを行いました。
街歩き前に団員の蒲田に対する印象を聞いたところ「わざわざ降りたりはしない未踏の地」「パチスロやパチンコ店が乱立していてごちゃごちゃしているが歌舞伎町のような露骨な派手さはない」「4路線が利用でき利便性は抜群」「ユザワヤ」という意見が聞かれました。街歩き後にはこれらの印象がどのように変わった/変わらなかったのでしょうか。
サロンで挙がったJR蒲田駅西口の特徴は、生活感があふれ夜も多くの人でにぎわう活動的な街。デザインされ統一感のある照明というのは見受けられなかったのですが、飲食店や物販店から漏れ出てくるあかりは、寄り道を誘う魅力的なものが多く、不快なものは少なかったように思えたというもの。光の犯罪者として挙がったものはJR駅入り口の暗さや駅ビルの広告が照らされていないというような、蒲田の顔なのに暗い印象の玄関口。グレアや色温度に配慮していない街路灯や立て看板など。英雄は個々のお店から漏れてくる暖かなあかりが挙がりました。
西口周辺から奥に続く住宅街の印象は繁華街と対照的に暗いというものでした。その暗い中で点在する飲食店が、街の行灯的役割を果たし高評価だったようです。
JR東口は商店街、公共文化施設、パチスロ街と様々な要素を持つ街。区画整理も進み、街をより良くしていこうという試みが随所に見られたようです。従来光源の置き換えでLEDを取り付けたものは 眩しく、白く冷たい印象になり悪目立ちするので、LEDにするのであればきちんと輝度と色温度を考慮して置き換えるべきだという意見が聞かれました。いつもは犯罪者になりがちなパチスロ店が意外にもギラギラしたものが少なく好印象の店舗が多かったようです。
住宅街は照明の色温度が低く統一された高級感のある新しいマンションが見られ住みたくなる街だったとのこと。
蒲田全体的な感想としては課題が明確なので、悪いところはすぐ改善できる、今後のポテンシャルが高いなど期待感が多く聞かれました。統一されていない雑多な感じが蒲田の夜の魅力を創出しているとの意見もありました。
行く前と後で街に対する印象が良くなった人が多数派のように感じました。
今回のサロンは遠方でなかなか探偵団活動に参加できない団員のため、ライブ配信に挑戦してみましたが、ノイズが入り会話が聞き取れなかったようです。次回はマイクの位置など改善してもっと多くの方にWEB上からでも参加いただけるようにしていきたいと思います。(東悟子)
18名の団員に参加頂きました。
蒲田では意外なものが英雄に選ばれていました。
BELGRADE OF LIGHT 2017
“If the world is what it is, where does the illusion of appearances come from?” – J. Baudrillard
2017.09.04-09.10 Belgrade of Light Team
Belgrade Lighting Detectives have successfully organized another Belgrade of Light festival themed “Illusions”. Here is a report from Serbia.
Aleksandra Stratimorović, light artist, and Predrag Caranović, artist
Lighting Detectives Berlgrade chapter had another light event, BELGRADE OF LIGHT 2017.
BELGRADE OF LIGHT 2017 brought closer the complex field of light to the widest audience of Belgrade and Serbia. The 9th edition was organized under the topic “ILLUSIONS”. This year’s week dedicated to the culture of light was opened with the exhibition of the works of two prominent artists Vollrad Kutscher and Predrag Caranović. From a creative, educational and scientific angle, the “SHIMMERING”, programme designed for children and young people this year was focused on experiments with visual effects and exploration of optical illusions. In a view of the upcoming UNESCO proclamation of the INTERNATIONAL DAY OF LIGHT, Belgrade of Light was the proud hosts to the first promotion of the International Day of Light in Serbia, which gathered many people from different professions connected to light.
■PROGRAMME
①EXHIBITION “ILLUSIONS”
9/4, GRAD Cultural Centre Gallery
②PROMPOTION OF THE INTERNATIONAL DAY OF LIGHT IN SERBIA
9/6, GRAD Cultural Centre Gallery
③WORKSHOP “SHIMMERING”
9/10, GRAD Cultural Centre
■ABOUT EACH PROGRAMME SECTION
①Exhibition – ILLUSIONS
As we live in the universe where most of the matter and energy are still mystical and invisible, we interpret light in so many ways to comprehend the illusory nature or the reality kept behind our world’s appearances. Recognizable by an out-of-the-ordinary artistic sensibility and works in which a repeating subject is a mutual relation between images and imagination, this year Belgrade of Light’s special guest, German artist Vollrad Kutcher introduced his “Shining Role Models”, a series of portraits of individuals whose landmark scientific achievements were a turning point for the history of electricity and development of artificial sources of light. This portrait gallery serves as an extraordinary monument to light and is dedicated to historical characters whose work represents an exceptional contribution to modern science and technology.
Another special guest, Serbian artist Predrag Caranović, a master of illusion, light and darkness, showed his “Still Life”, sculpture specially conceived for this exhibition. Artist took advantage to present, perhaps for the last time, an object which marked the 20th century – a light bulb. Reminiscence of the period, which made the night shorter and the day longer and fundamentally, affected one of the most important myths of alternating-night-and-day pattern. This was probably the last chance for such an action since ‘classic’ light bulbs are on a one-way journey to be consigned to history.
Exhibition “Illustions” – Opening night
Exhibition “Illustions” – Opening night
Left & Right: Exhibition “Illusions” – Luminograms.
Artist: Vollrad Kutcher, DE
②PROMPOTION OF THE INTERNATIONAL DAY OF LIGHT IN SERBIA
Following an exceptionally successful International Year of Light and Light-based Technologies 2015 that brought together 147 countries of the world, including Serbia which distinguished itself with its activities and programmes, UNESCO has adopted May the 16th as the International Day of Light which will be marked annually worldwide, starting from 2018. As an active participant in the International Year of Light programme in 2015, Belgrade of Light 2017 had a privilege to be the host to the reception and official founding of the National Committee of Serbia for the celebration of the International Day of Light. At the reception were presented first nine members of the committee.
Left & Right:Lighting designer Zorica Matić and physicist dr Ljupčo Hadžijevski giving a speech at the founding of the IDL National Committee of Serbia.
③Workshop – SHIMMERING
Discovering and creating imaginary worlds, painting with light, dancing with shadows and the rhythmic lights, during the workshop Shimmering this time we had transformed a real space into a realm of magic. The workshop was dedicated to understanding the concept of optical illusions through the education and creative work with different sources of lights. (Ana Anakijev and Dejan Mojic)
Left & RightWorkshop “Shimmering” theoretical session
Workshop “Shimmering” theoretical session
Practical session with overheated projector
Belgrade of Light Official Web Site:
www.belgradeoflight.com
Organized by Belgrade Lighting Detectives
In collaboration with Cultural Front Belgrade