ライトアップニンジャ

第3回 照明探偵団、谷中に現る

1998年10月17日

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去年の両国に続き、今年もライトアップゲリラの季節がやってきた。今回のターゲットに選んだ場所は、江戸の景色が色濃く残る「谷中」である。谷中と聞いてすぐに思い浮かぶのが墓地。下見にいった探偵団員も何か恐い思いをしたとか…….果たしてどのようになったのであろうか?

10月17日(土)PM4:30、小雨降る中、日暮里駅に程近いギャラリー「CASA」に20名の参加者が自慢の懐中電灯を片手に集合した。まず、事前オリエンテーションが行われ、参加者は面出団長よりゲリラをするときの心得や明るさを測定する照度計や眩しさを測定する輝度計、パワーの凄いキセノンランプなどの説明を受けた後、グループごとに分かれゲリラ散策コースの確認をして、いざ出発!

まずゲリラ隊が訪れたのは「谷中銀座」。飲み屋さんの赤提灯。魚屋さんのキラキラ光。お肉屋さんの何だか変に赤緑な光。商店街の雑多な光は両サイドに分かた色々な店の表情を演出し、そこを訪れた人の購買意欲を掻き立てているのに一役買っている。この雰囲気はまさに下町の商店街と言った感じである。そしてその賑やかな通りをぬけ、一本奥に入っていくと、あたりは暗く妖しい感じに一変。それもそのはず、そこにはラブホテルの入口があり、あたりの住宅の壁をピンク色に染める。更に奥に進むと浅倉彫塑館の裏門になった。門の奥の建物の屋根の頂部に彫刻を発見。すかさずそこでライトアップ。さながら野外ミュージアムのように曇り空の闇をバックにして印象的に浮かび上がる彫刻は印象的であった。このように簡単にライトアップして新たな夜の景色が発見できるのはゲリラならではの醍醐味だ。ゲリラ隊は、更に次のターゲットを探すべく突き進んだ。次に通りがかった「谷中学校」では、谷中についてや谷中学校の成り立ちについての話が聞け、ちょっと観光気分。さてこの後はいよいよ、墓地にエリアに……….

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いろいろな機材を持ったゲリラ隊は交番のお巡りさんの目を気にしながら墓地エリア・スタート地点の公衆トイレ前に集まり、少々古びた木造の建物の前でゲリラが始まった。面出団長の指示のもと蝋燭に火が灯り、参加者が持参した懐中電灯で照らし出された建物は印象的に照らし出された。総勢、30人前後の懐中電灯のパワーはなかなかのもの。光の色味が木造の表情とマッチして印象的でちょっと恐いライトアップの完成だ。ここでは全ての懐中電灯の光を団長のかけ声で散らしたり、一斉に集めたり、照度を測ったりといろいろな光の実験を行った。当日、同行していたカメラマンの浅川氏はこの光景を懐中電灯の光の中に自ら入っていき撮影していたが、これを見ていたWOWOWの撮影スタッフ、探偵団の記録撮影員もこのカットをまねしてと、突然の写真撮り合戦になってしまう。一騒ぎが過ぎ去ってゲリラ隊は最後のゲリラスポットを探しに墓地の中へと入っていった。

一歩墓地の中に入るとあたりは一段と暗くなり、歩く足どりもやや重い。「いくらゲリラだと言っても死者の魂が眠るこの場所で、こんなことをして良いのだろうか。」と言う思いを抱きながらも照明探偵団ゲリラ隊は足元を確認しながら雨でぬかるんだ墓地内の迷路のような小道を進みながら、冷静に周囲の状況に神経を集中させていた。照度計で明るさを測定してみると0.5ルクス。この明るさの中でも徐々に目がなれてくると、以外に暗く感じないことを実感する。頑張れば、新聞も読めるし、野球もできるかも……..しかし、この場所でそんなことをする気はしないし、もししていたらかなり恐い。そろそろ墓地の雰囲気に慣れてきたゲリラ隊は御地蔵さん風の墓石があるところで最後のライトアップを始めた。

そもそも今回のゲリラは「移動が多いので手持ちの照明器具のみを使い、今までとは違う面白いライトアップを」と言うのが主旨であった。まず始めにここで使ったのは探偵団員がこの時のために何週間も前から用意していた太陽電池を電源とする点滅するLEDインジケーション。昼間、太陽光にあてて蓄電し、日が落ちて暗くなると勝手に点滅をはじめる。担当の探偵団員は昼間は外に出し、夜は蓄電専用に蛍光灯を付けたあげて、この日まで大切に育ててきたが、ゲリラが始まってからはリュックの中にしまっていたため、心配しながらリュックを開けると案の定、LEDがパカパカと点滅していた。少し弱まってはいたが、それを使ってライトアップが始まった。ある者は御地蔵さん墓石の頭の上、ある者は隣のお墓に、またある者は地面にLEDをばらまいた。そしてできあがったのは宇宙人のような不思議な光を放つ御地蔵さんとそれを取り巻くゲリラ隊と言う妙な光景。妙ではあるが、どこか未来的。不思議なライトアップである。しかし、これもこの暗さがあってのこと。こんなに小さな光でもでこんなに違った景色を創り出せたのだ。LEDは闇の中でホタルのように光を放ち、懐中電灯の光はそれをうける光のカーペットとなった。闇があれば、僅かな光でも充分なのである。その後も闇を堪能しながら谷中ライトアップゲリラは終了した。しかし、そのあと寒くなった体を温めにおいしいお酒が待つ繁華街に向かったのは言うまでもない。
ゲリラって最高!

(田中 謙太郎)

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