照明探偵団通信

照明探偵団通信 Vol.12

Update:

発行日:2002年2月25日
・海外照明探偵団レポート/シンガポール
・照明探偵団倶楽部活動1/街歩き報告「東京ディズニーシーリゾート」
・照明探偵団倶楽部活動2/研究会サロン報告
・展示会「e-fashion」レポート
・面出の探偵ノート/ソウル
・日本の祭り
・NHK「首都圏ネットワーク」出演
・探偵団日記

祝祭照明 in Singapore - シンガポールのお祭り照明事情 –

1.ボート・キー シンガポール

ボート・キー/ シンガポール
2.飲食店の立ち並ぶ路地
飲食店の立ち並ぶ路地
3.オーロラを表現したホログラフィックチューブ
オーロラを表現したホログラフィックチューブ
5.バザールの露店テン
バザールの露店テン
6.回転木馬の形をしたランタン
回転木馬の形をしたランタン
4.旧正月のチャイナタウンの照明
旧正月のチャイナタウンの照明

毎年10 月から2 月までの期間、シンガポールの街の様々なエリアで各民族の伝統的なお祭りを祝した装飾照明がそれぞれのストリートで行われています。こうしたストリートライティングは、1983 年にオーチャードロードのクリスマスライトアップが行われて以来、シンガポール観光局によって実施されるようになりました。
その後、シンガポール観光局が文化的な祝祭を促進する一環として、セラングーンロード、ゲイラン、チャイナタウンの3つの有名な民族地区でもストリートライティングを行うようになりました。これらの地区には各民族の伝統的なお店やバザールがひしめきあっていて、お祭りの期間には活気の中心となっています。

お祭りでは必ずと言っていいほど、誰もがバザールを訪れます。熱帯気候のシンガポールでは、バザールがにぎわうのも屋外で過ごしやすい夜になってから。そのため、ストリートライティングはバザールには欠かせないもので、通りに活気をもたらします。
四季による色や雰囲気の変化がないシンガポールにおいて、ストリートライティングは都市のランドスケープを祝祭で彩り、季節を感じさせる重要な役割を果たしています。

10月末の “ディーパバリ” (光のお祭り) が祝祭の幕開け。お祭りを祝してヒンズー教徒たちは家庭でオイルランプを灯したり、“リトル・インディア” として知られるセラングーンロードをイルミネーションで飾ります。続いて11月半ばにはゲイラン地区で“ハリラヤ”を祝うイスラム教徒達のライトアップが。同じ頃にオーチャードロードではクリスマスライトアップが始まり、11月から1月にかけて年が変わるのを祝います。2月にはチャイナタウンのライトアップが中国の旧正月を祝って一連のお祭りを締めくくります。
この中ではオーチャードロードのクリスマスライトアップが最も大規模なものでしょう。にぎやかなダウンタウンのショッピングエリアに位置しているので、他のエリアよりもスケールの大きなものになっています。通りのデコレーションに加えて、“Best DecoratedBuilding” のタイトルを競うオーチャードロード沿いの建物のオーナーたちがファサードを巧みなライティングで変身させます。
さらに、クリスマスライトアップは照明デザインの予算など、他の照明とは別枠で考えられています。最近ではデザインもおもちゃや天使など、クリスマス的なオーナメントを使ったものから実践的な照明効果を利用したものに発展しています。昨年はオーロラにヒントを得て、8万本のホログラフィックチューブに光を投影し、虹が表現されていました。また、一昨年には青と白の光とホログラフィックの星でつくられた天の川が現れました。こうしたデザインアプローチの変化は、シンガポール観光局が海外の照明技術を導入したことによるものが大きく、今回はフランス人の照明デザイナー Louis Clair が採用されました。
それと比較すると各地区での祝祭照明は勢いがあって、活気に満ちた印象です。今年のチャイナタウンではとくにそう感じました。通りに吊るされたカラー電球、回転木馬の形をしたランタン、点滅したネオン看板、蛍光灯チューブで輝く物売りのテント・・・異なるタイプの照明(デザインされているものもそうでないものも) が混沌となってカーニバ

その他の地区での照明も基本的には似通った手法が用いられており、カラーライティングのロープ、バナーや伝統的なシンボルを象ったものなどが使われています。地区ごとの違いを印象付けるのはシンボルやテーマカラーなど。例えばチャイナタウンでは赤が、ゲイランでは緑がテーマカラーになっています。民族地区での祝祭照明のデザインは、その後数年間のトレンドの予告でもあります。ここ最近、クリスマス照明が洗練されてきたということは、今後の照明デザインにも変化があるかもしれません。

今後どうなっていくかはこれからのお楽しみですが、シンガポール観光局ではこうした祝祭を海外からも注目されるようなものにするべく、計画中のようです。照明デザイナーの出番が増えていくことを期待します!!
(Peggy Tan/Singapore)

「常夏の国の季節感から学ぶ光の考え方あれこれ」

日本とは全く違う気候の国にはその国ならではの照明の考え方と工夫がみられるのです。

年間を通して温暖多湿な赤道付近のこの国は、12 月だというのに半袖T シャツ、ノースリーブにサンダル姿で歩く人々が。四季の移り変わりがはっきりとしている日本に暮らす私たちとはちょっと違う季節感があるようです。

8.ヤシの木に取り付けられたアッパー&ダウンの照明器具
ヤシの木に取り付けられたアッパー&ダウンの照明器具
7.照明器具が剥き出しにならない配慮
照明器具が剥き出しにならない配慮

自然のポール灯

日本の街中ではあまり見かけませんが、シンガポールには多くのヤシの木が計画的に植えられていてホテルや商業施設、また公共施設の植栽にも多く見られます。この真っ直ぐ伸びるヤシの木の特性を活かした手法がここでは数多く見られました。
樹幹の中ほどにアッパー&ダウンの照明器具やスポットライトを取り付けて、自然のポール灯にしてしまうというもの。高級ホテルの中庭など雰囲気を大切にしたい場所では特に自然に馴染むこの手法が好まれているようです。
高い位置から光がどこからともなく落ちてくる、そういった配慮が常夏の国のリゾート感を一層盛り上げてくれているのかもしれません。
でもよくよく注意してみると、木に直接器具をビス止めしているのでちょっとかわいそう・・・。

メリー・ホット・クリスマス

日本ではクリスマスといえばさむーい季節のあたたかいイベント。ろうそくの暖かいあかりに冷えた体も心も温まって・・・。しかしここは常夏の国、ホワイトクリスマスもお話の世界だけでしか知ることができません。暑い国ではどんなクリスマスを迎えるのかと思っていたら、あの有名なラッフルズ・ホテルと道路をはさんで向かい合うショッピングモールの前でこんな風景に出会いました。ファサードを飾っているのは雪山の遠景と雪で覆われた巨大なツリー。もちろん作り物なのですが,はじめて見る雪景色に大はしゃぎするこどもたちやその前で記念撮影する大人たちも数多く見られました。見物している人たちに紛れて近寄ってみると、夜間ライトアップ用照明器具のまわりもきちんと雪(もちろんにせもの)で覆うなど、夢を壊さない気配りが。日中に見た景色を目にやき付けて、再び夜に見直してこそ照明探偵!ということで、日没後にまた同じポイントにやってきました。そこに現れたのは日中の真っ白な雪景色に替わってブルーにライトアップされたなんとも幻想的な雪景色。日が沈んでもなお汗ばむようなシンガポールのホットなクリスマスの夜を「涼しげ」に演出してくれたのでした。(橋本八栄子)

9.ラッフルズ・シティのクリスマスのファサード昼
ラッフルズ ・ シティのクリスマスのファサード
10.ラッフルズ・シティのクリスマスのファサード夜
(左:昼/右:夜)

第13回街歩き「東京ディズニーシーリゾート」

2001 年12 月03 日

報告①

12.舞浜駅改札前
舞浜駅改札前
13.ディズニーリゾート内モノレール
ディズニーリゾート内モノレール
11.ディズニーシーリゾート探索マップ
ディズニーシーリゾート探索マップ

14.ホテル・ミラコスタ
ホテル・ミラコスタ
15.クリスマスツリー ポートディスカバリー
クリスマスツリー/ ポートディスカバリー
16.プロジェクターによる演出照明 ロストリバーデルタ
プロジェクターによる演出照明/ ロストリバーデルタ
17.メディテレーニアンハーバー
メディテレーニアンハーバー

 暦も師走に入り、クリスマスイルミネーションが24 日を待ち遠しそうに街を彩る今日この頃、今回の街歩きは面出団長たってのリクエストで、なんと「ディズニーシーの初クリスマス」を街歩っちゃいました! JR 舞浜駅を降り立つと、さっそく天井間接照明のやわらかい電球色のあかりにつつまれ、すかさず照度測定、100 lx 也。柱の拡散型ブラケットライトも目に心地よい明るさ感を与え、とても改札を出たばかりの空間とは思えないほどの光景に、団員一同「ぅわ~お~」のため息。

 足を進めイクスピアリのゲートをくぐると少し明るさを落とした広場があり、地面には白青緑のLED インジケーター、噴水の淵には青いファイバーの点々照明がランダムに散らばり点灯を繰り返していました。後から思うと、他のエリアがほとんど電球色で統一されているのに比べて、ここはLED やファイバーといった新光源で構成された唯一の公共空間となっていて、ゲートとしての差別化を図る照明計画であったのだなぁと、思い当たりました。
 次は一同ミッキー型の窓とつり革のあしらわれたモノレールに揺られて、いざディズニーシーへ。このモノレール内の照明は、電球色の蛍光灯が天井に埋め込まれ、天井面には乳白のアクリル面のラインが2 列発光しているもので、照度は300 lx 程でした(ちなみにJR 山手線は、むき出し白色蛍光灯で400lx )。ランプの色温度ひとつでこんなにも日常見知った電車内の空間の表情が違ってくるんだなぁ、とつくづく実感。癒しがブームのこのご時世、ぜひ各路線会社は帰宅時の車内照明を電球色にスイッチするようなオペレーションを導入してみては?路線好感度アップに貢献するかもね?
 さあ、ようやく一同チケットゲート内へ!まず目の前に広がるのは水と光と音の競演といったところでしょうか、広場の周囲からプロジェクターで青とナチュラルの2 色の光が投じられるその噴水の中央にはアクアスフィアと呼ばれる巨大な地球儀が座し、水が絶えず伝い落ちていくその表面全体はゆらゆらと光を映しながら、その足元では効
果音とともに吹き上がる噴水が水中照明を受けて輝き、そしてちょっと過剰なばかりのBGM…。
 と、今この通信を読んでいる探偵団メンバーの皆さまの中には、まだまだこれから行く
予定の方々もいらっしゃることでしょうから、各アトラクションの詳細は控えておきましょうね。
 ディズニーシー内回遊空間の照明はとにかく電球色一色。各エリアのテーマにちなんでポール灯のヘッドのデザインは色々なのですが、光源は安価で入手の簡単な普通シリカランプ150 ~ 200 w、ポール灯の高さは大体が2100 ~ 3500 程度で、ポール灯直下で20 lx、広場などのベースの照度は1 lx 程度でした。こうしてきちんと暗い部分をベースに持つことによって各アトラクションやショップなどの明かりが際立って見えてくるのですね。
 照明は全てポール灯に集約されており、階段など要所要所にフットライトがあった以外はボラードのような高さの照明器具が皆無なのも特徴的でした。大人向けのディズニーシーとはいえやはり安全上、人の手の触れる高さを避けたためでしょうか。このためせっかく水がテーマのこの場所では、夜の水面の景も期待されたのに、地面に近いあかりが無いため遠景の水上には一連の暗い帯が連なってしまっていたのは唯一残念な点でした。
 と、報告はこんなところに留めますが、皆さん、ディズニーシーへお出かけの際には、是非こんな照明探偵団的解説をチョビっと頭の片隅にとめつつ、ディズニーワールドを堪能してきてくださいね。 (田中智香)

報告②

 今回の街歩きは、今年9 月にオープンしたばかりの東京ディズニーシーを調査しました。テーマは「非日常を感じさせる光」。
 ディズニーランドやディズニーシーを含む東京ディズニーリゾートは、その150h a にも及ぶ敷地のスケールや施設・設備の質から見ると、テーマパークの域をはるかに越えており、一日8 万人を超えるという入場者数を非定住人口と考えれば、それはひとつの「街」であるといえます。
 この街はオリエンタルランド社という一つの組織が創造した、外界から完全に切り離された世界です。都市の中ではあり得ない「完全に制御された街」は、しかし実際に歩いてみると以外に普通の街でした。
 確かに、敷地内は「南ヨーロッパの港町」や「アラビアンナイトの世界」など7 つのテーマに沿ってすべてがデザインされており、白熱電球の街灯による統一された町並み、たくさんのランプを持つ背の低いポール灯による賑やかさの演出、色とりどりのカラーフィルタを用いた光によるファサードの照明など様々な工夫が見られました。
 しかし、これだけコンピュータ技術が発展し複雑な制御が可能となることで、デザインの対象となった人工光を単なる機能的な照明や雰囲気を演出する装飾としてだけではなく、光だけでその場を変えてしまうような装置として使ってみてもおもしろかったのではないかと思います。研究会サロンで見た上海やラスベガスのビデオ映像の方が、より非日常的でエキサイティングに感じられるのですが、ディズニーシーはまたこれらとは違ったものを目指しているのかもしれません。でもきっとアトラクションの中の照明はもっとすごかったのではないかな?メリーゴーランドしか乗らなかったからな。本当はもっと乗りたかったな、というのが本音の感想です。(田中盛志)

日本の祭り ~火や光を題材にした日本の祭り~

日本の祭り 年間スケジュール

火や光を題材にした日本の祭りを照明探偵団の独断と偏見で選んでみました。今年は探偵団でも人と光との関係についてこのような祭りを調査しながら、探りたい考えています。この他にも興味深い祭りがありましたら是非探偵団事務局まで情報をお寄せください。
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3-2
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5-2
6-2

面出の探偵ノート

●第28 号 2002 年2 月14 日 木曜日グランドハイアット・ソウルの窓辺より

 今日はバレンタイン・デー。中国の旧正月、ランタンフェスティバルに色づく長崎に来ています。2 月に入って東京はけっこう冷え込んできて、やっと日本の冬らしい感覚が戻ってきたような気がします。暖かい冬は好きになれません。早朝の表参道をオフィスに向かって歩いていても、極寒だからこそ春の訪れがもう直ぐだな・・・という気になってくるものです。冬は寒くなくてはいけません。世界の経済不況も今がどん底ですから、いま少し耐えて明るい明日だけを待っていればいいのです。 もう少し。 Take it easy ・・・・・
 探偵団通信の編集を担当しているスタッフから、韓国ソウルの街明かりについてレポートして、と頼まれました。ここの所とても頻繁に東京- ソウルを行ったり来たりしているからでしょう。実際、今年になって既に3回ほどソウルに出張しました。原稿を頼まれた時に、気軽にOK ・OK ・・・などと受けておきながら、通信発刊のギリギリまで書かずに焦っているのは、どうもソウルの街明かりに明確な特長を感じていないからのようです。実は私はソウル大好き人間。そこには大学時代からの友人もたくさんいて、昔から国内旅行のようにソウルを訪問しては上手い韓国料理を食べています(焼肉はあまり食べませんが・・・)。しかしソウルの照明は・・・となると一言で解説できないのです。常々厳しい視点で見ている照明探偵団員としては困った事態ですが。
 昔はソウルに行けば必ず旧市街にあるミョンドンをふらついていました。たくさんのお洒落なブティックやショップに混じって、全羅州石焼ビビンバ、百済サムゲタン、コキコキのネンミョン(冷麺) など、美味しい飲食店がいっぱいある繁華街です。交差した道をぶらぶら歩いていると、一見新宿の歌舞伎町のような猥雑な光にも似ているのですが、歌舞伎町ほどの興奮を呼ぶわけでもなく、洗練された猥雑光でもないのです。原宿と新宿が同居してしまったような感じかな。だから、はっきりしないのでしょう。
 その旧市街に対して、ソウル・オリンピック以降に急成長しているナムソウル(南ソウル)はまた違った気配の光に包まれています。ソウルの街を二分する大きな河川ハンガンの北が旧市街、南が新市街と言っているのですが、今は唖然とするほどに新市街の範囲が拡大していて、眼を見張るほどです。ナムソウルはテヘランロードと名付けられた東西軸を中心に大きな都市計画道路によって構成されていて、さながら名古屋の道路だけ立派な街を思い起こしますが、この新市街にこそ韓国の新しい文化が芽吹こうとしています。高層のオフィスビルが立ち並び、お洒落な商業ビルが進出し、各種のギャラリー、そして韓国料理と和風懐石とフレンチが混ざったようなフュージョン系のレストランに遭遇したり・・・。ここにもなんと称してよいか解らない光文化が見え隠れします。「新ソウル光」とでもしておきましょうか。もちろんライトアップされたオフィスや、ぎっちりネオンの看板や、でもその横には光ファイバーと思える小技の効いた建築もあったりします。う~ん、銀座と丸の内と、しかも急に亀戸の街が挿入されてしまったような感じかな。単純なカオス光でもないのです。
 私たちは今幾つかの照明デザインのプロジェクトをソウルでやっていて、その1つがハンガンの北、1つがハンガンの南に位置しています。どちらもAaron Tan という若い建築家の率いるOMA Asia という事務所の設計によるもので、奇抜なアイデアの外観照明を要求されています。ちょっと派手な光でもあるので出来栄えに心配なところもありますが、ホテルと商業ビルなので、まあいいか・・・というところ。片方の商業ビルはあと数ヶ月で竣工する予定です。楽しみですね、どんな風に仕上がるのか。
 このプロジェクトのためにソウルに出張すると、施主の用意した南山の中腹に位置した見晴らしの良いグランドハイアットに宿泊することになります。(このホテルの宴会場や外構照明をずいぶん前に手伝ったことがあり、それ以来、私は夫婦してこのホテルを常々愛用していますが) このホテルからは凍てつく広大なハンガンとともに、その向こうに発展途上の新市街を一望できます。ここに掲載する写真はその雰囲気を伝えることができるでしょうか。最上階の客室から南向きに撮影したものです。客室からだと同じアングルで朝・昼・夜の景色を同時に撮影することができます。上手く異なる景色を見ることができます
か? あっそうそう、この探偵団通信はチープな白黒簡易印刷でしたね。それでは私の微妙な心の乱れを拾うことはできないでしょう。夜は寂しげな街明かりに幾つかのライトアップやネオンサインが浮いて見えるのです。ハンガンはもちろん黒いベルトのように見えます。しかし朝早起きの私は、左前方から顔を見せる朝日のお陰で、とんでもなく心に染みる良い景色を見たのです。街の中のいたるところから立ち上がる無数の煙のある景色。冷え込んだ朝なのです。多分蒸気を含んだ朝の暖房の煙です。オンドルという韓国特有の床暖房を思いました。街のあちこちで立ち上る朝の煙は人々の呼吸のようなものです。生きている街に見とれました。朝日がそれを祝福しています。特徴に欠ける牧歌的なソウルの夜景は、この何とも愛らしい早朝の景色にも繋がっているのかも知れません。極寒のソウルに愛着を抱きました。(面出 薫)

7.ホテルの窓から見たソウルの夜景
ホテルの窓から見たソウルの夜景
8.早朝の街並み
早朝の街並み

第16 回研究会サロン

【東京ディズニーシー調査報告/ 上海調査報告/シンポジウム「小嶋一浩の光の世界を考える」報告ほか】
 2001 年12 月10 日

サロン報告

9.キャンドルのウェルカムライトが会場入り口でお出迎え
キャンドルのウェルカムライトが会場入り口でお出迎え
10.会場風景
会場風景

 今回のサロンは、街もクリスマスイルミネーションで色づく12 月10 日に開かれました。
 まず、街歩きの報告です。今回は、初めてのクリスマスを迎えたディズニーシーを訪れました。パーク内は、ほとんどが白熱ランプを光源とした3 m前後のポール灯で計画されており、暗いベースの中にポール灯が点在する良い雰囲気だったようですが、遠方からの景色は今ひとつだったようです。ディズニーシーは水をテーマにしたパーク、水面への映りこみをもっと考えた照明計画、例えば、建物などをもっと積極的にライトアップして建物の姿が水面に移るようにすれば、もっと良かったのでは?と面出団長もちょっと残念そうでした。
 次は、早川団員と田沼団員が訪れた講演会「小嶋一浩の光の世界を考える」の報告です。シーラカンスの小嶋一浩さんは、大学の授業でもダンボール箱を使って光のモデリングなどを行う常に光を考えた建築を作っていらっしゃる方です。ただ、ここでいう光というのは、昼光であり、自然としての光をいかに建築の中に取り込むかを考えていらっしゃるようです。小嶋さんは、光について考えるときに常に感じるのがボキャブラリーの少なさだとおっしゃっていました。もちろん照明の世界では間接照明、ウォッシュライト、ウェルカムマットなどの言葉がありますが、それらは人工的な光の作り方であり、どんな光なのかということに対しては、応えていないようです。ここで面出団長から面白い話を聞くことができました。光の表現の仕方は、どの程度の強さで、どの程度の範囲でと考えていくと最終的には、「パーン」とか、「ボワッ」とか、「ポッ、ポッ、ポッ」とかのサウンドで表現(サウンド・オブ・ライト) ということになってしまうということでした。また、お互いに同じイメージを持つためには、やはりどこどこの建築のあの壁を照らしている光といったように実際のもので考えていくしかないようです。実態を持たない光を表現することはやはり難しく、またそれだからこそ面白いのだと思いました。
 今度は、前述したようなデリケートな話を忘れてしまいそうになるような面出団長が訪れた上海の照明事情の報告です。ビデオテープに映るその姿は、何の説明も必要としないくらいインパクトのあるものでした。ライトアップ、ライトアップ、ライトアップといった感じで、街中のビルがどこもかしこも明るく輝いている感じです。人々が集う水辺では、キセノンのムービングライトが何箇所からも上げられていました。街の景色には、その国の事情が良く現れるのだなと感心しました。ここまでやってしまった上海は、今後どのような発展をしていくのでしょう???
 最後に東芝に勤めるインダストリアルデザイナーの米田さんより、「e-fashion」の紹介がありました。米田さんも参加しているこの展示会は、企業で働くインダストリアルデザイナーが集まり一つのテーマで作品を作っています。今回のテーマは「e-fashion」、ファッションにe つまり電子をつけることによって何か別のものができるのでは?というテーマだったようです。米田さんの作品は、上着の前面、胸の部分にカメラがあり、背中のところにモニターがあるというものでした。後ろ姿を見るとまるで背中に穴があいたように見えます。原宿で開かれているこの展覧会に後日行きましたが、e という部分に光ということも入るので、光の要素が散りばめられたものも多かったです。光というのは、粒子であり、自然であり、人工照明であり、社会を移すものであり、実態を持たないものであり、たった一つの捕らえ方では、表現できない、非常に難しく奥
深いものだと改めて感じることができたサロンだったような気がします。(竹内 聡美)

展示会「e-fashion」レポート

11.米田 充彦さん
米田 充彦さん
440-09
hole in the body(designed by Atsuhiko Yoneda)
13.東京国際フォーラムでの撮影風景。背中を抜ける光床。
東京国際フォーラムでの撮影風景。背中を抜ける光床
440-21
真っ白な空間に立つ。

2001 年12 月14 日-26 日
YMスクウェア原宿 VERSION GALLERY にて行われた『without thought 3』(IDEOJapan & ダイヤモンド・デザインマネジメント・ネットワーク(DMN) 機構 主催) に行ってきました。
” e-fashion” が今回のテーマ。
今回この展示会に出展し、探偵団サロンでも作品を紹介してくれた、㈱東芝 デザインセンターデザイン第二担当米田充彦さんにお話を伺いました。

– 『without thought』とはどういうコンセプトなのでしょうか?

without thought = 「考えない」とは、デザインの本質をとらえる言葉。つまり、デザインのヒントは日常生活の中に潜んでいて、頭で考えて生まれるものでも、また頭で理解するものでもないということです。つまり、ふだん何気なくしている行為の中に、人間の本能の本質があり、気づかれない何かがある。それを表現するのがデザインだと考えます。

– 今回のテーマ、” e-fashion” とは?

これまでにも身に付けるコンピュータ、いわゆるWearable Computer という考え方はあり、ヘッド・マウント・ディスプレイなどが開発され、小型化・軽量化が進んでいます。今回のテーマ、” e-fashion” はこれまでのウェアラブルの発想ではなく、「エレクトリックな発想でファッションをデザインしたらどうなるか?」という考えから各企業のデザイナーが集まって、自由に身に付けられるものをデザ

– 米田さんのデザインされた” hole in thebody” はどういった発想からデザインされたのでしょうか?

発想は至ってシンプルで、背中に穴を開けて向こうが見える服をつくってみたいな、と。デザイン=もののカタチ、では無いと私は考えます。例えば狭い部屋で生活しても壁に映像を投影すれば自分がいる部屋という空間を感じずに擬似的な空間を体感できる。今回私がデザインした革のカットソーは胸に縫込まれたCCD カメラが撮影した景色が背中のLCD を通して見えるというもの。つまり、映像をつかうことによって実際のカタチ以外のものもデザインに取り込むことを試みました。

– 作品の撮影に東京国際フォーラムの光床を使っていらっしゃいましたが、何か理由がありますか?

黒い革で服をつくったので、光が抜けているように見えてわかりやすい光床を撮影場所に選んびました。結果的に印象的な映像を撮影することができたと思います。

– 今回の展示会を経験して感じたことは?

今回の展示会はそれぞれ違う分野の企業で仕事をしている企業内デザイナーが出展していたわけです。実際に企業内ではデザイナーの意見が製品に反映されるまでに至らないケースも多く、残念ながら個人の質が十分に引き出されているとは言えません。でも、今回の作品を見てもわかるように、根本の考え方がしっかりしていればカタチは自然と付いて来るものなのではないかと感じました。また、今回の作品で、当初考えていた布に直接映像が投影されるようなイメージについて社内で話をしたところ、「エンジニアを刺激する面白いデザイン」とのコメントももらいました。デザイナーの発想がもとになって新しいディスプレイディバイスができる、などということがあっていいと思います。今回作品をつくるにあたって、いろいろな分野の人たちとコラボレーションしながら仕事をする楽しさも知りましたし、今後は企業に対しても働きかけのできるデザイナーとして仕事をしていき
たいと思います。

– どうもありがとうございました。

面出団長、NHK「首都圏ネットワーク」に出演!!

2002 年1 月24 日ON AIR

1 月24 日(木)のNHK「首都圏ネットワーク」に面出団長が出演しました。冬ならではの話題を集めた「冬点描」のコーナーで、東京の夜景に注目。やさしい、落ち着いた雰囲気の光と、店舗などのにぎやかな強い光。21世紀の東京の夜景は、両者のうまく混じりあった、洗練された夜景に変化しつつあります。

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照明探偵団日記

立春も過ぎると陽の光が勢い色めきたってくるのを感じます。この時期まだまだ寒い日は続きますが、冬から春への確実な変化が日々の光の移ろいにも感じられる毎日。“立春” は地球から見た太陽の位置に基づく季節区分『二十四節気』(中国から渡来した季節区分で、太陽の黄道上の位置を24 分割したもの) のひとつで、中国・黄河の中・下流域での季節区分をもとにしているそうです。そのため日本での季節感とは少しずれる部分もありますが、太陽の位置からも春が近付いて来ている!ということを実感できますね。照明探偵団でトピックにする光と言うと、ついつい人工光が主流になってしまいますが、自然光でしか表現し得ない巧みなライティングが存在するのもこれまた確か。時には自然界にある光の現象を観察し、その効果についてじっくり検証してみるのもいかがでしょうか?(田沼彩子)

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