発行日: 2023年 06 月 07 日
・照明探偵団倶楽部活動1/国内都市照明調査 沖縄本島(2023.01.26-29)
・照明探偵団倶楽部活動2/国内都市照明調査 神津島+新島(2023.01.20-22)
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国内都市照明調査 沖縄本島
2023.01.26-01.29 山本雅文+ 伊藤佑樹
多様な文化・歴史が絡み合う沖縄。沖縄では各地域ごとにそれぞれ異なった街並みが形成されているが、その要因として、それぞれが全く違った歴史背景を持つことが挙げられる。簡易的な説明となるが各地域には以下のような歴史背景が見られる。戦争により多大な被害を受け、その後新しく街を再構築することになる那覇地区、米軍基地の影響を受けアメリカ文化が色濃く残るコザ地区、そして琉球古来の街並みが残る備瀬・今泊地区。今回の調査では各地域の光環境を比較することで、地域ごとにどのような生活文化・光の特色があるのか、また沖縄らしい、沖縄ならではの光というものがどのようなものなのかを模索した。
■栄町市場
那覇市に位置する栄町市場とは戦後の復興時に誕生し、当時とほとんど変わらぬ姿で現存している商店街である。現在昼間は地元の方々が集う活気あふれる市場となっているが、夜は昼の印象とは打って変わりディープな雰囲気を醸し出す飲み屋街へと様変わりする。夜の光環境としては居酒屋からの漏れ光や商店街の上部でうっすらと灯る蛍光灯ぐらいだ。(床面照度:約20lx)照度だけを見ると薄暗い印象を受けるが、実際の雰囲気は照度で受ける印象ほど暗い雰囲気ではなかった。何故だろうと考えてみたところ、地元住民の方々が関係していたのではないかと思う。地元の方々はお店の外まで席を広げて宴を行い、商店街全体に賑やかな声が広がっていた。そのためか栄町市場の雰囲気として、照度的には暗い空間であったが光評価とは全く別の印象を受けた。
■国際通り
観光客で賑わい煌々と明かりが灯る国際通り。沖縄といえばまず国際通りを思い浮かべる方も多いはずだ。光環境としては電子看板からの突き刺すような光、またファサードにとりつくチボリ照明など、多様な光が激しく混ざり合う。街路灯に関しては経年劣化のためか、所々緑色に点灯しているものもあった。照度・色温度の統一性についても無秩序である(50 ~ 400lx、2700 ~ 4800K)。都内でも滅多に見かけない2700K の光を使ったコンビニなど、様々な光要素が入り乱れる空間であった。悪く言えば統一されてない光環境と言えるが、沖縄島内では数少ない煌びやかな光景観であり、人々を魅了する要因の一つになっており、今の沖縄を代表する光景観の一つなのかもしれない。
■夜景景観
沖縄では台風やシロアリによる被害を防ぐため9 割の建物がコンクリート建築であると言われている。そのような背景を持つ沖縄の夜景とはどんな景色なのか期待が高まっていた。しかし実際は近年建てられた高層住宅の光が数多く目立ち、沖縄を代表するコンクリート造りの住宅や赤瓦葺屋根の住宅が目立たない状況であった。正直な感想を述べると他都市の夜景とさほど変わらず、もう少し沖縄らしい街並みが望めるかと期待していた故に残念である。そんな中、自分達のイメージする沖縄住宅の景色が首里城から望むことができた。フラット屋根のコンクリート住宅が立ち並ぶこの景色こそが、自分たちが想像していた沖縄住宅の景色だ。惜しくもこの景色を夜に撮影することができなかったが、ここではどのような住宅の明かりが灯っていたのだろうか。
■ 2700K のコンビニ
国際通りに位置するコンビニで奇妙な光環境に遭遇した。そのコンビニの店内では場所ごとに異なる色温度の照明を使っており、国際通りに面したエリアでは電球色の明かりが灯り、店内の奥に進むと白色の明かりが灯っている。夜間での外への漏れ光を考慮した上で敢えて外側に電球色の照明を設けたのか、、、はたまた発注ミスでたまたま違う色温度の照明を付けるしかなかったのか、、、本来の意図は謎のままだ、、、。
■首里城
沖縄の歴史を象徴し、地元住民の心の支えとなっている首里城は2019 年に正殿をはじめとする9つの施設が焼失する事故に見舞われた。そんな中、暗然とする住民を励ますかのように守礼門・歓会門はひっそりとライトアップされ、
本殿ほどの力強さはないがひっそりと佇む姿は心癒される景色であった。敷地内には発光面の輝度が抑えられたボラードライトが並び、夜のジョギングをする住民の方もおられた。奥に見えるはずの本殿がいつかまた力強くライトアップされる姿を望めることを切望してやまない。
■強い日差しとのかかわり方
先述したように沖縄の夜は国際通りのように煌々と明かりが灯り人が賑う場所もあれば、栄町市場のように薄暗くディープな雰囲気を醸し出す場所も存在し、様々な表情を持ち合わせている。しかし一方で昼間の沖縄の表情は一律している。昼間はどの地域でも強い日差しが一様に降り注ぎ沖縄の大地を照らしている。そのため沖縄の街には強い日差しへの対策が各所に見られる。その中でも沖縄を象徴するものが花ブロックだ。
花ブロックは強い日射しを遮るだけでなく、ブロックの隙間から柔らかい光と風を取り入れられるようデザインされている。昼間は日差しによる影が室内を彩り、夜になると室内の明かりが花ブロックをシルエットとして浮かび上がらせる。その他にも細かな工夫がされており、ある建物では天高に比べ軒を大きく延ばして設計を行うことで日差しを中まで届かせないようにする工夫や、商店街では強い日差しを遮るため必ずタープが設けられ強い日差しを柔らかく拡散させている。
( 伊藤佑樹)
■普天間飛行場
頭上から轟音が聞こえたかと思うと、2機の戦闘機が並走して飛んで行った。本島の7割を米軍施設が占めるとだけあって、身近に感じる基地の存在。嘉数台公園から普天間飛行場を見ると住宅街に隣接するそのスケール感に圧倒される。日が沈むにつれてぽっかりと浮かぶ暗闇に、滑走路の進入灯と誘導路灯が、まるで街の暗がりを縫うように煌めく。滑走路脇の基地施設はその広域がナトリウム灯で照らされており、周辺の住宅街の4000K ~ 5000K の街並みに
溶け込むことはない。それは、ゲート前のアスファルトに敷かれた境界線のごとく2つの光環境を分け隔てる。このような明かりの輪郭が島のところどころに出現する様子が基地の街ならではの光景ではないか。
■米軍ハウス
高台から基地内のハウスを俯瞰すると、4000K 程のポール灯の明かりに照らされた整然と立ち並ぶ建物が島並のように浮かぶ。有刺鉄線越しに見えるところまで近づくと、ハウスの窓あかりまでがはっきりと視認できる。それは全てが電球色であった。窓の周りには明滅するイルミネーションを施している家庭もみられ、カーテン越しにリビングでくつろぐ住人の姿を想像した。どんな環境下であれ住宅は緊張感から解放された安らぎの照明であるべきなのだろう。また何より、日本人よりも電球色に対して親しみを抱いているに違いない。
■コザゲート通り
嘉手納基地のゲート前から続くメインストリートは異国情緒であふれている。車道はナトリウム灯で照らされ、歩道は白色だ。しかし通りで際立つ明かりは街道沿いの店舗照明だ。ネオンやサインが煌めき、信号の明滅までもがそれと同化する。店先では赤や緑の間接照明が怪しげに浮かび、バーカウンターで談笑するのは外国籍の人々。それらの光景が道路両脇に続く。軒並み3 階建て程度に抑えられた建物。メインストリートの夜を支配するかのような眩いファサード照明は、基地の整然とした光環境と異なり、おおらかで解放感に満ちている。しかし、そのすぐ隣には、コンクリート造りで屋上に給水タンクのある沖縄ならではの住宅街や、琉球様式の住居が点在し、夜道が白色の街路灯で照らされている。もちろん住宅の窓明かりも白色が多い。異国的な繁華街の喧騒から離れ、ひっそりと静かで無機質な街明かりに照らされると、日本ならではの灯りに迎えられた安心感さえ覚える。少し離れた高台からコザゲート通りを俯瞰すると、まるで突如出現した光のオアシスのように道筋が輝いて見えた。
( 山本雅文)
■備瀬の集落
フクギの木立を通り抜けていく風が木々を揺らし、白砂に落ちる木漏れ日の輪郭を微かに震わせている。海岸沿いの砂浜を歩くと時化る海から吹き荒れる潮風に体力を奪われそうになるが、並木道はそれをも遮り心地良い。しかし夜は打って変わって、懐中電灯を持って歩かなければ不安なほど暗がりが多い。海辺という熾烈な環境下だけあって故障している器具も多数ある。そのためか普段は気に留めない道端の自販機や公衆電話ボックスの照明の明るさに驚いた。街路灯は並木道の交差点ごとに点在している。観光客も多く訪れるのであろう、古民家料理屋は琉球瓦を照らし、フクギの順路を示すサインの下端には間接照明があり、ごく僅かではあるが演出的な照明を見つけた。
■今泊の集落
集落の人々が共同で運営し、暮らしに必要な物品を取り扱う沖縄ならではの商店を共同売店と言う。今泊集落の外れにある諸志共同売店を訪ねた。店員に伺った話しだと現在はその仕組みでは運営されていないようだ。商品は生活必需品が充実している。そういえば初日に訪ねた那覇の市場では生鮮食品が高演色の光のもとで売られていた。しかし共同売店で刺身を照らしていたのは白色の蛍光灯。わざわざ食品を惹きたてなくても売れるのだろう。備瀬も今泊もフクギが村のシンボルなのに、夜は全くライトアップされていない。照らせばもっと夜の景色が素敵になるのにと思いもどかしい。フクギ並木の地面を照らしていたスポットライトの角度をそっと変えて、木々を照らしてみるとその大きな枝ぶりが頭上に浮かびあがった。
■沖縄の暮らしとあかり
中村家住宅は沖縄の伝統的な住居が完全な形で現存しているが、ペンダントランプが整然と並ぶ姿に沖縄の風情を感じない。この日宿泊した古民家宿も、やはり一番座の天井には煌々と輝く照明。光環境の調査で島を巡って来た経緯を宿のオーナーにすると、倉庫からオイルランプを出して見せてくれた。それが吊られているジオラマを、最終日に訪ねた沖縄県立博物館で見つけた。沖縄の住居の照明も、本土と同様に近代化の波にのまれながら変化して来たのだろうか。
また博物館に展示されていた、英字が残る空き缶でつくられたカンテラから、アメリカ文化の流入やその当時の貧しさが見て取れる。今回の旅で出会った、復帰頃から沖縄で暮らすギャラリーのオーナーから伺った「基地の中は天国、沖縄は貧しかった。」という言葉を改めて思い出す。豊かな自然と共生する島国での暮らしを支える照明は、那覇、コザ、備瀬、今泊、各々で個性的だ。それらがひとつの島国に共生することで、唯一無二の沖縄ならでは光環境を形成している。そしてそれらは豊かで厳しい自然環境に隣り合わせるように佇み、島の人々の暮らしを支えているのであろう。(山本雅文)
国内都市照明調査 神津島+新島
2023.01.20-01.22 安齋雄一+ 劉伝熠
■神津島村
東京都心より南に約180Km、人口1800 ほどの神津島。 地形は複雑でほぼ平地がない。集落は島中央、天上山の麓にある。神津島の星空保護活動のきっかけは2016 年観光財団による学生インターン研修ででた夜空がプラネタリウムの様に美しいというコメントだった。島では当たり前の光景だった星空が観光資源にもなる。島を上げての保護活動が始まった。具体的な取り組みは、街路灯・防犯灯は上方光束0% + 色温度2700K 器具に取り替え、光害や星空保護活動への理解と協力を得られるように住民説明会や専門家を招いて定期的なワークショップの開催、島民ガイドの育成と星空観賞会実施など、夜空を光害から守り星空の魅力を島内外に伝えている。
2019 年に光害の防止のための住民や事業者の責務が明記された「神津島村の美しい星空を守る光害防止条例」が制定され、使用できる照明器具、照明手法の制限、使用時間の限定などルール作りが進んでいる。調査は幹線道路の神津本道から始めた。高さ8m 程のポール灯が25m 間隔で道を照らしている。灯具直下床面はしっかり100lx 程。光源の眩しさは感じにくいが、道路面が明るく周囲が暗いのでポール灯の下にいると舞台のスポットライトを浴びている感覚に近い。すべて2700K の照明で統一された道路は初めてだった。その光環境下、自動販売機の白さ+輝度感が目立ってくるのは残念だった。村内の細い道には高さ3 mの位置に防犯灯がついている。灯具直下床面は20lx 程。こちらも上方光束は無く、道の合流地点やコーナー部、安全上必要な場所をしっかり照らしている。光害対策の照明下でも危険や怖いなどのネガティブな暗さを感じることはなかった。驚いたのは道路照明から少し距離を取るだけで目が星々の光をとらえ始めることだった。都心の空とは全く違う星の数。地元の方には当たり前の光景だそうだ。
全体的に2700K で落ち着いた光環境の道を歩いていると急に商店からの漏れ光が道を包む光景に出会う。4200K。店前は50lx 程。一般的な蛍光灯の漏れ光なのだがかなり明るく感じてしまう。島全体の明るさが抑えられているのと立面の発光が少ないからだろうか。観光協会の方に伺うと、光害への理解は求めつつも、住民の暮らしと安全を優先しているとのこと。複数の照明が乱立しない環境で1 つ1つの光が際立つ村の道。住宅からの漏れ光など何気ない生活光の印象も都心とは異なっていたのが面白い発見だった。
■星空観賞会
神津島調査では地元の方がガイドして下さる星空観賞会にも参加した。開催場所は村東側の高台にある“よたね広場”。住宅地のすぐ横、数m高低差を上がっただけだが、広場は真っ暗。街路灯やお店からの光は届かない。空の暗さを測定してくれるスカイクォリティーメーターの値は約21(mag/arcsec²)。6 等星までの光が認識でき夏では天の川が綺麗に見えるようだ。あいにくの曇り空と強風だったが、雲の合間から時折満天の星空が顔を出し、ガイドさんは視界が限られた中で星や星座の説明をしてくれる。何万年も前に星から旅立ち、今やっと地球に到着した光が自分に降り注いでいる。感慨深い。ガイドさんの言葉でハッとしたのは、星の光の色は本来すべてが違い、カラフルだということ。人間の目は暗い場所では桿体細胞が活発になり物が白黒で見えてしまう。もし本来の星の光を肉眼で見ることができれば、都心の繁華街にも負けないくらいのカラフルな夜空を見ることができるのであろうか。
島の真上の空は暗いのだが、伊豆半島側の山の稜線がぼんやりと光っている。都心側からの光が夜空を照らしているとのこと。また暗い空で目立ったのは、羽田や成田空港に向かう飛行機の光だった。着陸態勢に入り高度を下げてきた機体が頻繁に星の光を遮る。星との対話中で現実に戻されるは残念だったが、それだけ都心に近い場所でこれだけの星空を楽しめるのもすごいことなのだと思う。
■新島本町
東京都心より南に約160Km、人口約2,500の新島。面積、人口でも神津島よりは規模が大きい島となる。神津島よりは平坦な土地になるが、本村に接する宮塚山は迫力があった。村の主要道路は、村中央を東西に横切る新島本道。この通りに比較的飲食店がまとまっている。そこから東に足を伸ばすと都道221 号線につながり新島空港やサーフィンで有名な羽伏浦海岸に行くことができる。旅館や商店は村内の住宅街の中に点在している。調査したのが観光閑散期のためか日中は人通りがほとんどなかった新島本道だが、夜になると飲食店ごとの照明が照り始め、車も道に並ぶ活気のある光景に変わった。宿の方に聞くとちょうど新年会の時期とのこと。各お店から地元の方、島外から赴任されている方のにぎやかな声が聞こえてくる。
店前の照明はスポットライトや裸電球型照明、投光器やお店ロゴのプロジェクターなど多彩。色温度も2700K ~ 5000Kと幅が広い。ただお店は本道に点在しており、照明が乱立してうるさいという光景ではなかった。むしろ一つ一つのお店が離れた場所で独自の光を出し散策のししがいがあった。街路灯は5000K のLED。高さ5m の位置で床面40lx程で照らしている。上方、水平方向にも強く光を発しており、神津島と比べてしまうと眩しくい印象。光源のグレアがあるので対比でより周囲環境を暗く感じてしまう。本道から横の小道にそれると住宅街に入り、防犯灯メインになってくる。防犯灯下は15lx 程で5000K。近くの島でも街路灯wだけで雰囲気がガラッと変わることに驚いた。
■コーガ石建築+ モヤイ像
新島は黒雲母流紋石(コーガ石)の世界でたった2 箇所の採石地の1 つだ。コーガ石は多孔性で軽量、耐火、断熱、耐酸性に優れ、消音効果、湿気、振動にも強くに加工しやすいため新島では建材としても使われてきた。一見コンクリートのようだが近づいて見るとガラス質がキラキラしていて美しい。村内を歩いているとコーガ石でできた塀や建物を多く見ることができるのだが、残念なことに新しい建物はコーガ石から一般的な建材に変わってきているようだ。現存している建物も空き家が多くなり明かりがともることは無い。少し前、昭和までは新島だけの街並みがあったという。
コーガ石を使ったもので首都圏に住む方にも馴染み深いのは渋谷モヤイ像だろう。もともとは60 年代に村民が慕われてきた流人の像をコーガ石で掘ったのが始まりとされている。70 年代になるとモヤイ像製作体験ツアーが開催され、多くの観光客が島を訪れていたそうだ。そのおかけで今では100 体以上の個性的なモヤイ像を島で楽しむことができる。一番像が密集しているのは前浜海岸の道路で、港から船を降りた観光客を歓迎してくれる。夜は高さ8m、ナトリウムランプとLED の街路灯がおおよそ25m ごとに置かれ、道路とモヤイ像達も薄っすら照っているかなり独特な世界が広がる。せっかく島独自の風景なので、像一体ずつを丁寧に照らすことを想像してみるが、堀の深い顔面の威力がすごい。できればいろんな照明器具を持ち込み各像で実験をしてみたい。モヤイ像は島に点在しており、遭遇率が低いレアなモヤイもあるようだ。積極的にライトアップしているものは調査では見つけられなかったが、周囲の環境光によって異なる表情を見せる像たちを夜間楽しむことができる。
■まとめ
神津島調査では島挙げての光害対策、星空保護の取り組みと効果を見ることができた。ただそれは星空だけでなく夜の動植物の生態系にも良い影響をもたらし始めているようだ。星空ガイドのお話では渡り鳥が多く飛来する神津島は、夜間の街灯の眩しさで目をくらませ、障害物にぶつかり落下してくる鳥が街灯交換前は多かったとのこと。前浜ではウミガメが産卵に戻ってきたという嬉しいニュースもあった。子ガメは月の光を目印に夜海に帰る。明るい人口光環境はカメの命を脅かすことにもなる。しかし島には住民の生活もある。神津島村では年に4 回夜空の測定を行い、測定結果を前年より悪化させないことを目標にしている。2020年国際ダークスカイ協会から星空保護区に認定されてから約3 年。夜間の島民の安全や行事、商業に必要な明かりも守りつつ、自然の光、動植物生態系とのバランスもどう取るか今後の島の取り組みが気になる調査となった。満天の星空とそれを支える人口光。神津島でしか見れない光環境の発展に期待したい。新島調査は対照的に、多彩な人口光環境を調査することができた。賑やかな光、異なる色温度、街灯のグレアもあれば真っ暗な道路もある。モヤイの独特の光景も神津島とは全く違う新島の個性的な夜を作っていた。調査で出会えたモヤイ像達は、穏やかなもの、凛々しいもの、険しい表情のものなど、かなり自由なデザインで一つたりとも同じ顔の像は無かった。島中に個性的な顔のアートが多数点在しているのも珍しいと感じた。観光客に楽しんでもらえる夜景として各お店やモヤイ像達、新島独自のコーガ石建築などがより多彩な光をまとっていくと、新島の夜間の個性もさらに伸びてくのではないだろうか。今回伊豆諸島の2 島を連続で調査し、近くの島でも光環境が大きく異なっていることを体感することができた。観光業がどちらも主要産業の1つだが、それぞれの独自の魅力を高め今後も観光客を惹きつけていくのではないだろうか。
(安齋雄一)