探偵ノート

vol.21 13万ルクスの無影灯 ~東京大学医学部付属病院・手術室~

Update:

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OR-12と表示された手術室は、ほぼ7×7×3.2メートルほどの冷たい部屋である。中央に設置されたベッドの周りには、執刀医を含む8名が患者を取り囲み、手際よく細かい仕事に熱中している。天井には3種類の無影灯、TVカメラ、TVモニター、そして酸素・笑気・窒素ガスなどのパイピングモニターが吊るされていて、壁にも様々な計器類や医薬品や機器の収納棚が並び、床にはキャスターの付いたスタンド型の装置が護衛している。ここは完璧無菌の作業空間である。

口にはださなかったが私はかなりの緊張感と不安感を感じていた。本格的な外科手術室で執刀医と同じような格好をさせられているのは当然初めてのこと。入室して15分間ほどは呆然としていたが、突然ハッと我に返りスケッチをする頃から、状況を冷静に観察することができるようになった。私たちは本格的無影灯の光を探偵に来たのだ。

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いかにも機能的で格好いい無影灯にはespaloraという製品名が書いてあった。よく観察すると、いくつもに分割された流線型の灯体内部には80φと150φほどの反射鏡がたくさん見える。後日カタログでの効能書きを見たら実に面白い。つまり[性能面では照度、無影度、深部照射度、無熱性、演色性、操作性では軽快感、可動範囲、焦点調節、照度調節など]が重要課題とある。3種のユニットには24V40Wのハロゲンランプが合計29灯配備され、1ユニット11灯で最高13万ルクスを得ることができる。何と真夏の太陽直射光以上の照度だ。しかも二次輻射熱を出さないように多層硬質被膜(コールドミラー)で赤外線域の波長を後ろに逃がし、更に熱線吸収ガラスフィルターに熱線反射コーティングの処理を加えるという三重の熱対策を施している。必然性が生んだ技術だ。

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無影灯とは低容量の光源を完璧に配光制御し、微妙な照射角度を調節することにより、作業者の視野内で完璧に陰影を消す魔法の照明装置だった。ここで働く人たちは実にタフだと実感する。そういう私も1時間の取材の後、病院の食堂で肉厚なチャーシューメンなどを食べている。一体、私の頭の中はどうなっちゃったのだろうか。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 2 3 1 4
あかりの量/適光適所・明るさ感 5 4 4 5
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 5 5 5 4
あかりの個性/照明デザインの新しさ 5 5 5 5
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 5 4 4 5
合 計 22 21 19 23
総合評価 ★★★★
(21.25点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

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