2023.11.25-26 瀬川佐知子+東悟子+河野真実
こどもワークショップでは暗さ体験として、囲炉裏を囲む会を複数回開催してきましたが、古民家で一夜を明かすという企画をずっと温めておりました。電気をできるだけ使わず、小さなあかりだけで夜を過ごすといつもと違うものがみえてくるのではないか。そんなことを期待した5 感をフル回転させる、そんなワークショップを行いました。
今年のこどもワークショップは千葉県大多喜町の古民家を借り「暗い中で小さなあかりの大切さを考えよう!」というテーマで行いました。コロナ禍で開催できなかったり、開催してもこどもたちと語り合う時間が設けられない年が続きましたが、今年は一泊のプログラムで、こどもたちとじっくりとあかりを感じる会にしました。5歳~小学生2 年生の6 人のこども達が集まってくれ、元気いっぱい楽しく過ごしました。
中野屋というこの古民家は、茅葺屋根で囲炉裏もあります。夜はなるべく現代のあかりに頼らず過ごそうと、まず行灯をつくりました。硬めのトレッシングペーパーにこどもたちはそれぞれ絵を描いたり、カラーセロハンを貼ったりして作成しました。室内はろうそくが使用できなかったため、LED キャンドルで代用。その行灯を持って、古
民家の周りを散歩にいきました。 この辺りの田畑に囲まれた道は街灯が一切なく、だんだんと暗くなる中、こどもたちは自分がつくった行灯で歩くという体験をしました。途中、大きな銀杏の木を面出団長が懐中電灯で照らすと
子どもたちは興味津々で我先にと懐中電灯でいろいろなものを照らしていきました。
散歩後は既存の照明を消し、行灯のみを配置した古民家で過ごしました。まずは自分の行灯を近くに置き、庭先でバーベキュー。ただ、暗すぎて肉の焼き加減が分からないため、ここでは懐中電灯の力を借りることとなりました。あいにく曇り空だったため、星は見ることができませんでしたが、暗闇の中でもこどもたちの食欲は頼もしいものでした。懐中電灯を消すとパチパチと炭の炎が赤く光っており、子どもたちもどこかいつもと違う空間に楽しそうでした。
バーベキュー後の花火で、行灯の1 つをLEDから本物のキャンドルに替えてみました。周りのトレーシングペーパーのせいかもしれませんが、以外と違和感がなく、大人も驚きました。本物のキャンドルの方が少し明るめでしたが、LED が身近になって10 数年。色味等も改良されてきているのだなと感じました。
花火の後は囲炉裏を囲んで面出団長からあかりのお話です。残念ながら囲炉裏は炭火しか使えず、燃える薪の火は見られなかったのですが、行灯と炭の火で包まれる空間は自然とこどもたちの眠気を誘っていたようです。目が暗闇に慣れてしまったため、お話の途中で団長が見せてくれた現代の光源がとてもまぶしく感じました。こどもたちも
このまぶしさを「不快」に感じたようでした。お話の後、朝からお友達と過ごし興奮状態だったこども達もこの暗さの中、静かに眠りにつきました。
次の日、早朝に前日歩いた道をもう一度歩いてみました。明るくなった状態で見る景色は全然違うものだったようで、朝から子どもたちはかけっこをしながら進んでいました。最後に炬燵を囲みこの2 日間で感じたことを話しました。「暗い中で過ごすのはどうだった?」という問いに「怖かった」「全然平気だった」など様々な言葉が出てきました。
夜間も光が飽和状態になっている現代に生きるこどもたちが、身近にある小さなあかりに気づき、それを大切にすることを少しでもこのワークショップで感じてくれていたらうれしいと思っています。(瀬川佐知子)