真夏の金曜日午後7時。若者のホットスポット、臨海副都心はDECKSの前に立つ。屋形船が隅田川を上り下りして続々とここに集合してくる。この時間は屋形船パーキングの最も賑わう頃。ついさっきまで31艘だったが、もう50艘近くにもなっている。それぞれにいろんな色の提灯をぶら下げている。白熱灯のナマ色、派手な黄色、しっとりオレンジ色、焼鳥屋風の赤色など。船はこちらに対して必ず横腹を見せて整列している。少ないもので片側6個、12個、15個、びっしり20個も点けているのも見える。これだけの数が重なり合って提灯を点している光景は少し異様だ。明るすぎて、ケバケバしくて、全く昔の粋を感じない。粋とはもっと清楚なものだ。 「ちゃっぽん、ちゃっぽん、ザザー、ザザザー」「バン、バン、バリバリ、バララバララ、バン、バン」「ああん、貴方が好きだから~ああん、ああん。」波打ち際まで歩いてくると、今度は得体の知れない音が混じりあって耳に飛び込んでくる。機械的に打ち寄せる波の音と、ビーチサイド・フェスティバルのロックサウンドに混じって、屋形船から鳴り響くエコーのきいたカラオケ演歌の熱唱音だ。船が発する拡声音は何重にも重なりあう。もうたまらない。隅田川に流れた新内語りの三味線の音は何処に行ってしまったのだろう。
ここに集まるそれぞれの人は、勝手な自分の世界に浸っているだけだ。こんなに眩しく明るいデッキで、これ見よがしなラブシーンを演じるカップルや、フェスティバルに参加する家族、カラオケ頼りの社員親睦会。こんな寄せ集めの光景を見ていると、楽しそうにはしているが、皆がずっこけた孤独な都会人遊びをしているように見える。遊ばされているようにも見えてくる。
屋形船の増量された音と光はその象徴だ。いつの間にかもっと派手な新種の船も仲間入り。提灯だけでは目立たないと見たか、船の外形をライン照明で縁取っている。なんだか華僑風なイルミネーション、香港の水上レストランのような雰囲気にも近くなってきた。情緒なくしてどこまでエンターテイメントするか。
面 出 | 探偵A | 探偵B | 探偵C | |
あかりの味/雰囲気や気配のよさ | 2 | 3 | 3 | 5 |
あかりの量/適光適所・明るさ感 | 1 | 3 | 3 | 4 |
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス | 3 | 2 | 2 | 3 |
あかりの個性/照明デザインの新しさ | 3 | 1 | 3 | 2 |
あかりのサービス/保守や光のオペレーション | 2 | 1 | 3 | 2 |
合 計 | 11 | 10 | 14 | 17 |
総合評価 | ★★ (13.00点) |
1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点
あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文 淺川 敏/写真