照明探偵団通信

照明探偵団通信vol.74

Update:

発行日:2016年7月5日
・照明探偵団倶楽部活動1/第53回街歩き:横浜馬車道&伊勢佐木町 (2016/03/18)
・照明探偵団倶楽部活動2/第51回研究会サロン@照明探偵団事務局 (2016/04/01)

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第53回街歩き:横浜馬車道&伊勢佐木町

2016.03.18  武内 永記+望月銀子+黄思濛+坂口真一

前回の大阪での街歩きから半年ぶりの開催。今回は横浜JR関内駅の北側の馬車道と南側の伊勢佐木町、対照的な2つのエリアをそれぞれ2班づつに分かれ歩いてきました。

■ガス灯や近代建築物など横浜港開港当時のレトロな風景が残る馬車道と、その延長に栄えながら、ほとんどが現代化し庶民的な賑わいを見せる伊勢佐木町。この対照的なふたつの表情を観察し、それぞれの光の英雄と犯罪者と、街の特色を決定づける光を探索してみました。

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ガス灯とお店のあかりの対比

■馬車道は、日本で初めてガス燈が導入された地。幕末の外灯がなかった時代、人々は夜提灯を持って街を歩いていました。そこに出現したガス灯。ガスで灯る燈は、当時の人にどのように映ったのでしょう。昔の暮らしに思いを巡らせながら歩き始めました。
一班はまずJR関内駅から馬車道に入り、交差点で右手をみると、横浜スタジアムの目に刺さるようなナイター照明が見えます。LEDの直進性の特徴からか、遠方からでもとてもまぶしく感じました。
馬車道に並ぶガス灯の色温度は2000Kと暖かいものでした。照度は16ルクス程度で歩いたメンバー全員が暗いという意見で一致。それに比べて、向かいのヘアサロンは、真昼のような白色の光を放っていました。二つの光が反発しあい、あたかも天使と悪魔の関係のようでした。
馬車道を進むと本町通りにぶつかります。この辺りは横浜の官庁街で西洋建築が立並ぶエリア。お店の漏れ光などなく薄暗い場所でした。人通りのさみしい感じの場所でもライトアップしている所もあり、昔懐かしい感じと現代の照明トレンドが混在しているような場所でした。明治時代の情緒あふれる横浜でようやくそれを彷彿とさせる場に行き当たった気がしました。(望月銀子)

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団員からの評価の高かった提灯通り
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様々な形のガス灯が並ぶ
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横浜スタジアムの強烈な照明

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右手のホテルの照明の照り返しで照らされる博物館

■2班は馬車道を中心に団長以下5名で街歩きを行いました。ガス灯が残る馬車道の雰囲気はとても良い感じがしますが、一方で通りの中心の交差点などが少し暗くも感じガス灯を残す街並みもよいがもう少し工夫が必要ではといった意見も聞かれました。
馬車道から外れた通りの中では一番メンバーの評価が高かったのは通りを挟んた両側の店舗の2階部分からコードを渡し、提灯をぶら下げて演出しているというもの。その雰囲気に異国のようなたたずまいを感じましたが各店舗が協力してこの風景を作り出しているのは素晴らしいといった意見が多かったです。
暗いと感じた馬車道通りの中でさらに暗く感じ、ライトアップしてはと思わせるような立派な建物もいくつか存在しています。その建物に前に立つホテルの光が当たってしまっており、周囲も考慮した照明計画の重要性を再認識することができました。(坂口真一)

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イセザキモールの様子

■佐木町界隈3班はイセザキモールを中心に街歩きを行いました。イセザキモールは、横浜の開港を機に商業で栄え日本初の歩行者専用道路となったモールです。
モールに一歩踏み入れると繁華街特有のネオンや装飾照明が迎えてくれます。スタイリッシュな照明があるわけでも統一感があるわけでもありませんが、そのチグハグ感が人情味と愛嬌を醸し、程良い賑わいを形成していました。例えば、左手には格子状に青白い光で構成され眩いばかりのパチンコ店のファサード、右手には赤提灯が点々と並び安堵感を燻る居酒屋。奥へ進むと昔ながらの電飾で飾る薬局とラインの光で近未来感を彷彿するたばこ店。
ミスマッチは「犯罪者」と評する一方で、異なる個性を互いに受け入れ共存し、道行く人々に愛されている点は「英雄」と言って良さそうです。(武内永記)

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安堵感を覚える居酒屋
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モール内には多くのパチンコ店が立ち並ぶ

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ちぇりり場(Cherry River)を対岸から望む

■4班は伊勢佐木周辺に詳しい団員がいた為、わき道を寄り道しながらコースを歩きました。
商店街の明るい賑わいとは対照的に少し奥に行くと小さくて雰囲気のあるお店が並び、光もさほど強いものではありませんでした。人目につきにくい場所でしたが、きちんとデザインされた照明がなされているお店もあり、それぞれにこだわりを感じました。
チームメンバーが一番興奮したのが、ちぇりり場。川沿いにナトリウムのオレンジの光がリズミカルに配置されており、提灯とともに昔ながらの川並みを創り出していました。明るすぎず、暗すぎず、心地良い光環境でしたが電信柱に設置された青白い眩しい光の存在が、すごく残念に思います。
イセザキモールに戻ると立ち並ぶパチンコ屋が目につきます。隣の店に負けじと、白色の2000lxを超える光を並べる中で、3500Kの暖かい光を使い、照度を押さえ、外観をキレイにライトアップしているお店が一軒!革命的なパチンコ屋の照明に出会ったと感じました。(黄思濛)

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周囲の雰囲気を壊す防犯灯
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強烈な投光器で過剰に照らされたパチンコ店のファサード
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眩しくなく落ち着いたファサードのパチンコ店

■線路を挟んでまったく違う顔を見せる伊勢佐木町と馬車道。どちらもみなとみらい地区の勢いにおされ訪れる人も減少しているようでしたが、夜の装いひとつで夜にも人が呼べる可能性を感じさせる表情豊かは街でした。 (東悟子) 

第51回研究会サロン@照明探偵団事務局

2016.04.01  東悟子

新年度が始まる4月1日に横浜馬車道と伊勢佐木町モールの街歩きのレビューを行いました。各班毎に意見や感想をまとめ、発表をしてもらいました。

横浜街歩き4班
ちぇりり場が一番の英雄に

3月に開催した横浜馬車道・伊勢佐木町街歩きを振り返るサロンを行いました。
2つのエリアを2班づつ歩く予定だったのですが、伊勢佐木町担当の班は寄り道しながらの調査になったようでイセザキモールだけでなくその周辺を歩いた感想もまとめられていました。

伊勢佐木町街歩き_3班まとめ(圧縮)
伊勢佐木町街歩き_3班まとめ(圧縮)2
英雄か犯罪者の投票を行いそれをまとめた班も。地図にロケーションも示してあり、選んだ理由も書かれており、ビジュアル的にも楽しくまとめてあるPPT
★照明探偵団街歩き@馬車道_発表用_ページ_14
班員一人一人アンケートに答えてもらった班
名称未設定 1
馬車道に点在するあかりで演出している店舗を集めて紹介

馬車道担当の班の発表で一番多く聞かれたのが、せっかく趣のあるガス灯が残っているのに、通り全体がデザインされていないので、お店からのまぶしい光があったり、反対に横断歩道や馬車道らしい建物など、照らすべきところが照らされていなかったりと照明計画の不在がもったいない、という意見でした。
また明るすぎないのはいい点だが、予想以上の暗さに歩いていて不安だという感想も上がりました。暗い所と明るいところの差が大きい、という印象だったようです。
点在する歴史的建築にはきちんとライトアップすべきだとの声も多く聞かれました。
人を呼ぶために個々に照明で演出している店舗や通りも紹介されており、それを英雄としていた班もありました。
総括的には、歴史あるガス灯の持ち味が十分活かされていないのが惜しいというのが参加者全員一致した感想でした。

伊勢佐木町担当の班で多く聞かれたのは、表参道などの統一感がありスタイリッシュな通りとは違うが、どこが人情味があって、懐かしくかつカオスな街並みと灯りが、伊勢佐木の特徴だという意見。街路灯は統一されているので、そこでイセザキモールとしての統一感は履かれているのではないか。お店のひかりひとつひとつは統一されていないが、そこが逆に賑わいを創出し、人々に愛され続けている根源になっているのではないかとの意見も。
いつも犯罪者に上るパチンコ店ですが、相変わらず過剰に照らされた店舗が多くあげられていた中、お手本となりそうなまぶしくなく落ち着いた印象を与えるパチンコ店が英雄として紹介されていました。

イセザキモールから少し離れた川沿い(ちぇりり場)を歩いた班からは水辺に映り込むナトリウム灯の豊かな情景が紹介されました。その水辺の明かりがその班のベストヒーローに選ばれていたのが、やはり水辺の明かりは人の心を癒やすものなのだと感じました。

横浜での街歩きは9年ぶりだったのですが、前回の海側の新しい横浜では見られなかった、昔からある横浜の街並みを検証することができました。サロンででてきたたくさんの意見や感想をその街の方々と共有できる機会が持てるよう今後検討していきたいと考えております。

今年度は街歩きを渋谷、羽田空港、隅田川水族館と3回計画しています。いよいよ日本京都での世界照明探偵団フォーラム開催も実現が見えてきました。またしばらく更新していなかった照明探偵団WEBサイト内の英雄と犯罪者の投票も再開しました。是非サイトにアクセスして投票してみてください。
今年も探偵団活動への多くの方々のご参加をお待ちしております。(東悟子)

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