街歩き・サロン

第22回照明探偵団街歩き 横浜みなとみらい線編

2004年5月12日

みなとみらい線は横浜から横浜中華街駅をむすぶ地下鉄線で、新高島町駅、みなとみらい駅、馬車道駅、日本大通り駅、終点横浜中華街駅の5つの駅をむすんで運行されています。日本大通り駅を除く 4 つの駅はそれぞれ異なる建築家によって設計されており、4つの駅とも構造はほとんど同じ形、という条件の中、それぞれの建築家の方たちどのようにその限られた空間を素材、光、色でそれぞれの個性をだされていったか、というのが大きな見所でもありました。

みなとみらい駅

街歩き2004:横浜みなとみらい線編
街歩き2004:横浜みなとみらい線編
街歩き2004:横浜みなとみらい線編

みなとみら い線の全駅に共通する形状として地下 3 階がプラットホーム、地下 2 階が改札、そこから地上階へという基本形があるのですがこのみなとみらい駅は地上階に クィーンズというショッピングモールが直結しており、地下 3 階のプラットフォームからも部分的に上層階のショッピングモールまでを吹き抜けてある空間も あり、開放感あふれる風通しのよい雰囲気です。一言で言い表すと若々しさあふれる空間。使用されている色調は赤、青、黄、マットシルバーのはっきりとした 色味で構成された大胆なラインが若者のような思いっきりのよさを表現しているように思われます。素材もマットシルバーやブルーのアルミプレートを壁面天井 面に使用し、素材でも横軸への流れなどのスピード感あふれるデザインとなっています。照明もこの若々しさを強調するような白色の光で統一されており、全体をほ ぼ均一に白く明るく照らし出している感がありました。たとえるなら夏の昼間の浜辺のような光の状態であり、この駅の象徴しているような若者たちが楽しく遊んでいる海辺の気分が感じられる光にも思われました。

馬車道駅

こちらはみなとみらい駅とは対照的に落ち着いた大人のムード。横浜のひとつの面である、昔ながらの大人の横浜を象徴しているようです。旧横浜銀行の壁面をデザインエレメントのひとつととらえたことで、駅構内全体に使用されている素材も赤味がかかったレンガを主とし、色味もレンガの赤よりの茶色からチャコールグレー、白、といった落ち着いた色調で統一されている。照明はメインの素材であるレンガの美しさを引き立たせる為にか?電球色の光源によりレンガで構成された壁面は明るくされ、レンガという素材ならではのさまざまな色調の違いが美しくあらわれていました。天井が低めの場所は電球色が使用され、吹き抜け部分などの天井面が高めの部分は白色の明かりが使用されており、その小さな変化でも、素材や色の構成のシンプルさの中では空間スケールの感じられかたの違いに大きく貢献していると感じらます。肝心の旧横浜銀行壁面の一部が一角に現れていたのですが、なぜかそこに限って白色の光源で照らされており、電球色で照らされたレンガの美しさをと隣合わせて比べると、その平坦な見かけは物足りなさを感じさせるものでした。

元町中華街駅

こち らは一言で言い表すならば、最近のおしゃれなカフェのような様子。真っ白な壁面に過去の横浜の人々のモノクロの写真が配置されています。無機質な つるりとした壁面の材質といい、白一色の色調といい、すべてはこの壁面グラフィックを引き立てるための素材と化しているように思えます。それは照明 に関しても言われることであり、たとえばプラットホームに関しても、電車に乗り込む位置の照度よりも、プラットホームに立って奥のグラフィック壁面 への照度の方が高くしてある。さらに、プラットホーム空間へと移動するエスカレータ空間は壁面を黒一色に統一されており、この暗く細いエレベータ移動空間の助けもあり、プラットホーム空間へと抜けたときの白一色の世界の明るさの中に浮き出る壁面のモノクロ写真のイメージがなおのこと印象深く感じられる気がしました。

3つの駅はほぼ同じ構造形態でしたが、建築家によってこんなにも印象の変わる仕上がりになるのだ、ということと、それぞれの建築家の方々がそれぞれのデ ザインにおいて一番大切にした部分をより強調し、よりよいものとするための光の役割がとても伝わってきた気がしました。

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