第65回街歩き:池袋 ー消滅可能都市からの脱却を果たした池袋の夜間景観を探る
2019.11.15 古川智也+坂口真一+張文源+東悟子
国際アート・カルチャー都市を目指す豊島区。その中心となる池袋再開発の拠点となる公園の光を中心に検証し、渋谷や新宿と比較してみました。
1班:JR池袋東口→中池袋公園→サンシャイン60→東池袋中央公園
雰囲気のいい中池袋公園とHAREZA 赤い階段が目立つ
白いファサードが好印象のPARCO
1班街歩きのメインは開業したばかりのHAREZAときれいに整備された中池袋公園。
駅前の白が印象的なPARCOやメーカーのロゴが白く光り、統一感があるビックカメラのファサードなど、好印象の中街歩きがスタートしましたが、すぐに量販店から漏れてくる過剰な照明でがっかりモードに。サンシャイン通りの街路灯に巻き付いているピンクのクリスマスイルミネーションにも厳しい批判の声が。洗練された街にしようというチャレンジが各所に見られるのですが、ちぐはぐな印象。
今回のメインの中池袋公園は、暗過ぎず明る過ぎず丁度いい照度と多目的に使える開放的な空間が英雄との声が多く上がりました。HAREZAは劇場の赤い階段がハイライトされ遠くからも目立ち、夜劇場へ向かう人の気持ちを高める効果がありそうです。
次に開業40年経つサンシャイン60やサンシャイン通りへ。白い光あふれる通りは「THE池袋」という感じがしました。犯罪者だという声もありましたが、多くの人でにぎわっているのを見るとこれも人を魅了する明かりなのかなという気に。
東池袋中央公園は真っ暗で恐怖を覚えます。その公園は元の処刑場だという話を聞いていたからか、暗闇に座っている人たちは不気味に見え、一刻も早く立ち去りたくなる公園でした。ただしばらくいると目がだんだん慣れ、周りの高層ビルからの漏れ光のおかげで快適なことが判明。ただ周りの光が全部消えたらと想像するとぞっとする公園でした。
夜でも人が外に集まる場所を創出しようと様々な仕掛けを展開している池袋にはみんな好印象。今後の開発も益々楽しみです。(東悟子)
2班:JR池袋東口→グリーン大通り→豊島区役所→南池袋公園周辺
まずはグリーン大通り。交差点毎に照明や街灯の雰囲気が変わる特徴のある通りでした。駅の近くは以前からあるような色温度高めの街灯ですが、眩しさは抑えられ不快な印象は少なかった様に思います。
道を進むと色温度が低く、ガーデンライトのような照明と少し背のあるスポットライトが設置されていましたが、光が直接目に入り眩しく、全体の雰囲気はよいのですが残念な感じでした。
首都高近くは歩道中央にある照明が低く直接目に入り眩しさを感じました。歩道側のベンチ付近の器具はよかったのでこれも残念でした。
高層住宅と一体開発された豊島区役所。外階段の手すり照明には器具を見せず光を綺麗に見せる工夫を感じました。
少し前の池袋を残す街並みも歩きました。この辺りから高層マンションを見ると、住宅の明かりも色温度が低くなってきたのを感じますが、反対にサンシャインビルのオフィスの高い色温度が目立ちました。
最後は南池袋公園。木に実が付いたように見える照明など、夜の公園全体の雰囲気はとても良い感じでしたが、残念だったのは周囲にある建物の光が主張し過ぎて目に入ることでした。
池袋周辺はこれからも再開発が進み進化していくと思いますが、街全体としての一体感を感じさせる夜の街並みを作ってほしいと思います。(坂口真一)
グリーン大通り ベンチ前のボラード照明が眩しい
豊島区役所外階段 直接目に入らず高評価
木になる実のような照明 周りの施設からの照明が邪魔に
3班:池袋西口公園→自由学園明日館
立教大学の心地よいあかり
明日館 自由学園-心地の良い空間に犯罪者を発見!
SEIBUゲート 見る角度によってはサインの光源が眩しい
3班は池袋西口公園からライト設計の自由学園までの芸術・文教エリア担当。新しい施設と歴史的建物を巡り、街全体の光を検証しました。
最初に訪れたのは立教大学。窓明かりと照明を当てる場所を絞り込み、心地良い空間を演出。温かみのある照明に包まれた校舎と、必要最低限の光で構成された中庭は、心地よい空間になっているように感じました。
一方で立教大学周辺の歩道照明は寒々しい白色で、立教大学の色温度の低い暖色の光との差に違和感がありました。電球色でグレアを抑えた照明ができれば、豊かな光環境がつくれるのに勿体ないという意見がありました。
重要文化財の自由学園明日館も訪問。魅力的なガラス窓、天井と大きな吹抜けに加え照明デザインも印象的。建築の中に光がうまく溶け込むような丸い照明器具が特徴でした。2300Kという心和ませる色温度は意図してデザインされたことが判明。また暖炉のパチパチと音をたててゆらめくあかりにほっとさせられました。あかりの原点「炎」に勝るものはないという意見で英雄になりました。
残念なのは講堂の舞台頭上の照明。最近直管のLEDに付け替えたようですが、空間全体に合わず、舞台ならではの臨機応変に対応できる照明になっていないようでした。また、明日館講堂と自由学園明日館の間の眩しい街路灯は悪目立ちしていました。煌々と輝くあかりは周りの建築に合わず犯罪者になりました。
最後はこの春開業したSEIBUダイヤゲート。最新建築なので期待していましたが、ベンチ下照明の輝度が強かったり、入り口の看板の照明の光源がみえて眩しく感じたりしました。
池袋は照明を工夫した建築と、街路灯の統一感がないのが印象的でした。街路灯が所々色温度の統一感がなく、照明は防犯用と思われているのではないかと感じました。(張文源)
4班:JR池袋北口→みずき通り→西一番街中央通り→ロマンス通り→トキワ通り→平和通り→劇場通り→東京芸術劇場/西口公園
平和通り 一面を照らすオレンジの光で家路を安全に照らす
東京芸術劇場 上品なブルーの光で綺麗に彩られている
グローバルリング リングのLEDランプが見えて眩しい
4班は池袋駅西側の北側の歓楽街エリアと西口公園を歩きました。
・歓楽街:チャイナタウンとも称されるこのエリアは、飲食店や娯楽施設、風俗店が混在しているにもかかわらず、ロサ会館をはじめとして古い建物が多いため、渋谷や歌舞伎町にあるような大量の光を発する大型看板がありませんでした。そのため、日本を代表する歓楽街という割にあまりギラギラ感はなく、統一感はないものの昭和の匂いがする光環境でした。
カラフル過ぎる光を放つ雑居ビルや店名を強烈な光で白く輝かせるサイン等々、周囲を気にしない飲食店が多い中で、白壁に赤い唐辛子のサインがアイキャッチとなった、一見カフェ風のラーメン店は、お洒落で英雄となりました。
街路灯は通り毎にデザインが異なり、種類も数も多いのもこのエリアの特徴で、ひとつの通りにデザイン違い・機能違いの街路灯が林立状態の通りもありました。LED化でグレアが酷いもの、消えかかってゾンビ状態のLEDランプが放置されている街路灯等は犯罪者に挙げられました。
他方、歓楽街を抜けたところにある平和通りの街路灯は、緊張を解放し安心させるオレンジの光が等間隔に並んで(路面照度50Lx程度)、見通しの良い家路を安全なものにしていました。
・東京芸術劇場&リニューアルされた西口公園:芸術劇場のガラスのアトリウムは、三隅を照らすブルーの光が挿し色として効いて綺麗で、内部空間も居心地良く英雄となりました。
グローバルリング下の空間は、仮設の屋外ステージとして使用されるため、音楽や噴水とも連動する舞台照明が施され、器具の取付け位置や光量・照射角度も演出性が優先されて、残念ながらグレアを感じました。訪れる人を癒し、楽しませるコンテンツに期待です。(古川智也)
新しい文化施設や公園の竣工が続いている池袋。渋谷新宿に比べ町全体が明るさを抑えていたり歴史的建築が多くあったり、池袋の印象が変わる街歩きになったようです。(東悟子)