初めてこの展覧会場を訪れた時と2度目の時の印象が180度逆転した。一度目はオープニングの時なので、袖スリ合う人の熱気に会場が埋まっていた。会場がめまぐるしく暗くなったり明るくなったり、それが意図されているのかトラブっているのかさえどうでもいいほど、汗くさい混沌の中でアジアの建築家が見えかくれしていた。どうも前日の徹夜にも拘わらず光もきちんと調整されていなかった様子。それでもたくさんの民の集まった初日は、それなりにアジアの熱風を感じて満足した。
2度目はその熱風とは正反対。閉館前のがらんとした会場に私は独りで立っている。なるほど冷静に会場を眺めると、完璧に意図された光のプレゼンテーションがある。低電圧ネオン管のつくる影のない静止した真っ白な5分間と、ピンスポットとスライドプロジェクションによる闇を背景にした7分間が交互に繰り返され、床に描かれた「密度・混沌・スピード・エネルギー」というキーワードが光に誘導されている。ここにはふだん気づかない鋭利なアジアが見えかくれする。体臭の消えた乾いたアジア。
人で埋まった会場の湿った熱風と、人気のない切り取られた乾いた風景。そのどちらにもアジアのメッセージを受け取ることができる。会場の主な仕掛けは、3台のビデオモニター、12台のスライドプロジェクター、5カ国語で書かれた17人の建築家のテキスト、床に散らばるキーワード、そして選ばれた3種類の音楽などである。それらがリズミカルな光の演出に同調している。
この種の閉ざされた会場では光の味が体勢を左右する。少し気取ってアジアの宮廷料理風ではあるが、私にとってここの光はとても美味しい。6月13日まで東京新宿のギャルリー・タイセイでやっている。たくさんの方に是非ご賞味いただきたい。
面 出 | 探偵A | 探偵B | 探偵C | |
あかりの味/雰囲気や気配のよさ | 5 | 5 | 5 | 4 |
あかりの量/適光適所・明るさ感 | 5 | 4 | 5 | 4 |
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス | 4 | 4 | 4 | 5 |
あかりの個性/照明デザインの新しさ | 4 | 5 | 5 | 5 |
あかりのサービス/保守や光のオペレーション | 5 | 5 | 5 | 5 |
合 計 | 23 | 23 | 24 | 23 |
総合評価 | ★★★★ (23.25点) |
1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点
あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文 淺川 敏/写真