このベランダから隅田川を挟んで佃島が見える。リバーシティ21の超高層のマンション群、都営、公団、三井不動産の三社の寄り合いで、合計9棟が林立している。10年ほど前には目の前を遮るものは何もなく、今日のように晴れ渡った冬の日には遠く霊峰富士まで拝めるほどの眺望だった。あっという間にウオーターフロントが賑やかになった。この超高層住宅の窓あかり、夕暮れから夜にかけてじっくり眺めていると実に興味深い光の事件を提供してくれる。
先ず初めに家々からこぼれる光の色がまちまち。洋風の居間や和室が外に面しているわけだが、室内からこぼれてくる光には、白、赤、オレンジ、青、まれに緑なども観察できる。中にはカーテンの色のせいもあるが、大半は使用光源の色の違いが原因している。 大まかに暖色系の光と白から寒色系の光に分けてカウントすると、都営住宅では圧倒的に白色から昼光色が目立つが、それが公団住宅では半々になり、三井不動産になると明らかに暖色の光が勝ってくる。狭い室内ほど明るく白い光に満たされているように観察される。裕福な家庭ほど白熱色を好む、とするのはちょっと強引か。狭く人口密度の高い家庭では白熱灯は暑苦しいだけなのだろうか。
次にディテールを観察するために双眼鏡を出してくる。昼間には陽光を受けて家の中は暗く閉ざされて見えるが、夜には室内の様子が手に取るように解る。あかりの灯る集合住宅は横穴式住居を連想させる。 現代のカッパドキア。いや、集合住宅の照明展示場のようにも見える。徐々に覗きが真剣になってくる。フムフム、夕食の支度をしているな。ひと気はないが大型テレビだけが点けっ放し、部屋の光の強さが色々に変化している。白けた家庭環境なのかな。それにしてもどの家も、天井に大型の照明器具が威張っている。キラキラを通り越してギラギラしたシャンデリアも多い。
ギョッ、向こうのベランダからもこっちを覗いてる様子。わが家はどんな風に見えるのか。相互に住宅夜景ウオッチング。常習的な趣味にならなければよいが。
面 出 | 探偵A | 探偵B | 探偵C | |
あかりの味/雰囲気や気配のよさ | 3 | 3 | 2 | 3 |
あかりの量/適光適所・明るさ感 | 3 | 4 | 2 | 4 |
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス | 4 | 4 | 3 | 3 |
あかりの個性/照明デザインの新しさ | 2 | 3 | 2 | 3 |
あかりのサービス/保守や光のオペレーション | 3 | 3 | 3 | 3 |
合 計 | 15 | 17 | 12 | 16 |
総合評価 | ★★★ (15.00点) |
1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点
あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文 淺川 敏/写真