発行日:2020年6月25日
・照明探偵団倶楽部活動1/ナイトウォッチングツアー:大内宿
雪景色に灯るあかりを見に行こう!(2020.02.08- 2020.02.09)
・照明探偵団倶楽部活動2/World Lighting Journey 2019 年総括、団長インタビュー(2020.02.26)
ナイトウォッチングツアー:大内宿
雪景色に灯るあかりを見に行こう!
2020.02.08- 2020.02.09 渡邉奈見子+東悟子
日本のあかりの祭りを求め、大内宿雪まつりへ。
団員 19 名で、東京から一路、雪と古民家のあかりの幻想的な風景を目指し、北に向かいました。
大内宿名物のねぎそば ねぎをお箸代わりに
福島県南会津に位置する大内宿は、会津若松と日光をつなぐ宿場町として栄え、現在も茅葺屋根の民家が建ち並び、国指定重要伝統的建物保存地区に選定されている風光明媚な所です。
ナイトウォチングツアーの企画委員は、あかりの祭りをいろいろ調査し、この大地宿の雪まつりにたどりつきました。さて期待したあかりの風景に出会うことができたのでしょうか。
■ツアー中止か⁉
今回のツアーのテーマは、「雪景色に灯るあかりを見に行こう!」。
真っ白な雪にすっぽりと覆われた民家や、そこからこぼれる暖かな明かりという“the 日本の雪景色と民家のあかり”を見に行くことが目的でしたが、今年は異例の暖冬。ツアー 1 週間前でも雪がまったく降っていないという状況でした。
多くの雪まつりが中止や規模縮小を決定し、大内宿の観光協会の方からも「どうされますか?」と心配のお電話をいただいたりと、胃が痛い日々が続きました。
ツアー担当の新人スタッフ渡邉と毎日大内宿に設置されたライブカメラをのぞきながら、すっぽりと島を包んでしまった雲のせいで、上空を旋回しただけで戻ってきた八丈島(探偵団通信 81 号参照)や満点の星が上空にあるはずなのに、霧のようなガスが出て、あまり星が見えなかった阿智村(通信 91 号)の二の舞かと、自然を相手に旅行を計画する難しさを改めて痛感していました。が、ツアー前日は朝から雪が降り始め、当日何とか茅葺屋根を覆うくらいの雪は積もっている状況になり、安堵して東京駅に集合しました。
■大内宿へ
ツアー参加者 19 名と東京駅から新幹線で一路郡山へ。郡山で名物「のり弁」を受け取り、バスの中で昼食。その後車の混雑もなく順調に大内宿に到着しました。
“雪にすっぽり”という印象はありませんでしたが、しんと澄んだ空気の中、古の雰囲気を今に伝える古民家の佇まいに出会うことができ、一同大満足。
まずは丘の上から大内宿全体を俯瞰することに。現代の建物がなく、江戸の宿場全体がタイムスリ ップしたかのような景色を真下に、町の人の景観保存と継承への努力は大変なものだろうと感じました。茅葺民家を維持するための資金を得るためには観光化しなければならず、そのためには人を呼ぶイベントや名物を作り PR する。あまり俗っぽくなると、この古い宿場町の雰囲気が保たれないので、そのぎりぎりのところを狙いながら、様々な試行錯誤をされているのだろうと思いました。
御神火載火 裸同然で松明を持ち、宿場を駆け抜ける
一行は宿場を散策したり、名物のねぎそばでいっぱいやりながら、雪まつりのメインイベントが行われる夕暮れまで待ちました。
日が徐々に暮れていき、民家にもポツポツと明かりが灯り始めると、一気に祭りの雰囲気が高まります。雪で作った灯篭(とうろう)に火が入れられ、雪あかりの風景が整います。祭のメインは御神火載火 ( ごじんかたいか ) という儀式で、下帯姿で松明を持った男衆が宿場を駆け巡ります。雪が舞う寒空に生火を持って裸で走る一団を見ると心改まる気がします。火にはやはり心を戒めたり、魔を払ったりする力がある気がしました。
祭りは茅葺屋根の上に打ち上げる花火で締めくくられます。夏のにぎやかな花火とは違い、冬の花火は音が雪に吸い込まれるような静かで厳かな感じがしました。この村の華美になりすぎない、素朴な雰囲気がそうさせていたのかもしれません。大内宿には街路灯がほとんどなく、また古民家を派手にライトアップするということもなく、灯篭がなければ本当に暗いのですが、夜を静かに過ごそうという村の在り方が垣間見られました。ビジネスライクでない自然に近い姿に好感が持て、どことなく懐かしい感じの日本の原風景にほっとさせられる夜となりました。
■二日目、会津若松市めぐり
次の日の午前中は会津若松市にある鶴ヶ城に上ったり、絵ろうそく、酒蔵、漆器、みそ田楽の名店が立ち並ぶ七日町をめぐったり、お米のおいしい会津名物のわっぱ飯をいただいたりしました。
昼食後はツアーのもうひとつの目玉となる国重要文化財指定の会津さざえ堂を見学。1796 年、飯盛山に建立された高さ 16.5M の六角 3 層のお堂で、入り口から出口まで一方通行の 2 重螺旋スロ ープで上って下りてくる構造になっています。建立当時スロープに沿って 33 観音像が安置され、さざえ堂を上り下りすると一度に 33 観音をお参りできるようになっていたそうで、実際にお参りに出かけられなかった庶民にはありがたいお堂だ った様です。
雪景色と温泉、おいしい名物料理とお酒を堪能した一行は大満足で帰路に。建築や明かりが好きな人と、一緒に旅をするのは本当に幸せな時間です。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
ナイトウォッチングツアーは東京では見ることができない光の体験を求めて、遠出するという企画で、1 年に 1 回程度開催しています。何か面白そうな光の情報があれば、是非事務局までご一報ください。次回の開催もお楽しみに!(東悟子)
ツアー二日目は、鶴ヶ城、さざえ堂、わっぱ飯と、会津の名物を堪能しました
World Lighting Journey
2019 年総括、団長インタビュー2020.02.26 細野恵理奈
毎週末に照明探偵団フェイスブックにアップさせていただいている World Lighting Journey。2019 年の総括として、今年も団長の面出さんにインタビューを行いました。
ストックホルム地下鉄。最多リアクションを得た
面出:さて、去年の WLJ の総括では、「もっと自然光をアップしていこう」という話になったけど、実際皆のリアクションはどうだった?
―あまり自然光単体のポストに反響が多いわけではなかったようです。
面出:ではどんな写真に比較的反応が多かったの?
(2019 年の Facebook 投稿を振り返る資料に目を通して)なるほど、今までに見たことのないものや、特に日本人にとって稀有な景色に対して反応が多かったようだね。
―林さん撮影のストックホルム地下鉄の駅、
そして服部さんのバチカン&イタリアの写真が、今年最もリアクションのあった投稿です。
面出:地下鉄の写真は、写真自体のインパクトもさることながら、純粋に興味が掻き立てられる。
服部さんの撮る写真からはいつも、光や照明と人がどのように関わってるか感じられるのが良いね。
バチカンのサンピエトロ大聖堂。ダイナミックな光と影
―板倉さんの、Anthony Mccall のアート作品のような上空からの写真にも反応が多かったです。
面出:日本では、あまりこのような自然の強い光を見ることが少ないから、印象的だったのかもしれないね。「ミラノの奇蹟」というイタリア映画があるんだけど、知ってるかな。雲間から広場に光が落ちてくるシーンがとても印象的で、あたかも舞台の中の俳優のように、人々が「光の中に入って」移動していくシーンが印象的。それを思い起こさせる写真だね。
―面出さんのお気に入りの投稿を教えてください。
面出:マカオのカジノホテルの、光と水のインスタレーションもいいね。人が写っている写真は情景が生きてくる。カジノの存在自体には賛否があるけれど、カジノが必要とされるところには必ず照明も存在するので、僕は英雄だと思います(笑)。同じく西湖の噴水ショーの写真も良い。ショー自体の光と、人々がそれを写真におさめる携帯やカメラの画面の集合で生まれる二重の光が存在していて、なかなか印象的だよね。
成田上陸前の機内から
―ところで、Facebook という媒体に関して言えば、去年や一昨年と比べて、個人的に利用する人が減少しており、Instagram や Twitter を利用する人が増えているようです。
面出:Facebook との違いは何だろう。
―Facebook は実名で知り合い同士がつながり、お互いの近況などを知らせ合うのに使われる印象です。一方 Instagram や Twitter は必ずしも実名の登録が要らず、自分の好きなテーマを自由に検索したり気になる人をフォローしたりして、興味を縦横無尽に深堀りするのに適しています。 Instagram にはストーリーという直近の写真や映像を 24 時間限定で載せる機能もありますが、その気軽さから活発に投稿する人が多いです。
面出:他には何か違いがあるかな。
―ある人の過去の投稿を見るときに、Facebookだとスクロールするのが大変ですが、Instagramだとサムネイル表示が優れているので、たくさんの情報を短い時間で振り返りやすいです。WLJ の過去の投稿を見るのは Instagram の方が向いています。また、Twitter でも Instagram でも、興味のあるタグで検索すると、世界中の人のポストを見ることができます。例えば #lighting と検索すると、色んなジャンルの照明の写真がエンドレスに出てきます。
中国・西湖の噴水ショー。皆が写真におさめる光景も印象的
面出:なるほどね。では世界中の人から WLJ を知ってもらうのには Instagram が適していそうだね。あとは今年は色んなことをやってみたい。例えば隔週くらいでテーマを決めて、皆に写真を送ってもらってもよいね。「今年一番憤った風景」とか。普段、嫌な光ってあまり写真におさめようと思わないじゃないですか。不快だと感じる光は人によって違うから、「この人はこれが嫌なんだね。私は素敵だと思うなあ」なんて発見があって、き っと面白いよね。あとは短くてもいいから、いつも何かを写真におさめる時、なぜ撮ろうと思ったのか?を記しておくとよいね。それを積み重ねていくと、物を見る視点というのが養われるし、その独自の視点こそが面白い。よし、2020 年度は、色々挑戦してみる年にしましょう。 (細野恵理奈)