発行日: 2022 年 12 月 02 日
・照明探偵団倶楽部活動1/ 国内調査 千葉県香取市佐原地区 (2022.11.4-5)
・照明探偵団倶楽部活動2/ Mid-Autumn Lantern Workshop (2022.09.10 & 2022.09.23)
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国内調査 千葉県香取市佐原地区
2022.11.06-11.05 瀬川佐知子
照明探偵団として千葉県内の調査は意外にも今回の佐原地区が初めて。伝統的建造物群保存地区と景観形成地区に指定されている佐原の江戸時代から利根川水運により繁栄した商家の町並みが残っているエリアを限定して調査した。
東京駅から約70km、利根川から少し内陸に位置する香取市佐原地区。この地区は水運を利用して「江戸優り」といわれるほど栄えていた商家町だが、高度成長の過程で衰退してしまった。しかし、1974 年の街並み調査によりその景観
が見直され、現在は東京から2 時間、成田空港からも電車で1 時間という立地を生かし、観光地として再建しようとしている。今回の調査はエリアを限定し、小野川沿いの町並みと夜間景観の調査のみ行った。

■ユニークなデザインの照明器具たち
JR 成田線の佐原駅から小野川沿いに向かうと出迎えてくれたのは、猿が上に座っているボラードだった。「なぜ、猿・・?」と不思議に思いながら川沿いを上流に向けて進んでいくと、うさぎ、鯉、小さな子供、カエルやえびす様・・・など多種多様なオブジェがついたボラードが並んでいた。どれ一つ同じオブジェはない。
このユニークなデザインのボラードは、「佐原の大祭」と呼ばれるお祭りで曳き廻される山車の
デザインを模しているようだ。佐原地区の山車は、本体が約4m、その上に約4m の彫刻が乗っており、大祭はユネスコ無形文化遺産にも認定され、関東三大祭りの一つでもあるらしい。川沿いの道路は無電柱化され、すっきりとした
景観を見せているが、無電柱化された理由には景観への考慮だけでなく、高さ約8 ~ 9 mの山車を曳き廻す際に引っかからないようにするためという理由もあった。川沿いに設置されている街路灯にも山車を曳いている人々の姿が取り付けられており、この土地の人々がいかに山車に誇りを持っているかを伺わせる。水郷佐原山車会館には祭りの様子が分かる映像や本物の山車が2 台展示されており、その迫力に圧倒された。
■少し寂しい夜間の様子
夜になると観光客はほとんどいなくなり、川沿いに立っている数軒の飲食店やホテルからの光といろいろなオブジェがついているボラード、そして街路灯の光のみとなった。川沿いの道路幅は5.4m とそんなに広くないが、意外にも車
の往来が多く、ここが観光だけでなく地元の方の生活道路にもなっていることが分かる。ボラードと街路灯は交互に配置されていたり、ボラードのみで配置されていたりと様々だが、およそ20m ピッチの間隔で設置されており、ボラードから3m、ポール灯から7m くらいで1lx 以下になる明るさだった。正直少し暗いと感じたが、当初の私の予想に反して、お店や家からの漏れ光も含めてほぼ2700K-3000K という佐原地区の町並みに似合う温かみのある色味で統一されており、不快感を感じることはなかった。しかし、町並みの中に点在する昔の商家を利用した高級ホテル、おいしいイタリアンや高級フ山車をモチーフにしたボラードとポール灯レンチのお店があるのに、夜間の川沿いの景観
を十分に生かされていない印象を受けた。一部の建物では窓の格子から室内の光が漏れてきて心地よい鉛直面の光があったが、地元の人だけでなく、ホテルや飲食店の利用客が夜間歩くときに、もっと歩きたくなるような魅力的な夜景になる潜在能力はまだまだある気がした。
■これからの佐原地区に期待することコロナでインバウンドの需要が激減したが、ようやくその規制も緩和されつつある。成田空港にも近いこの佐原地区は夜間景観が充実するともっと観光客や周辺住民の方にとって魅力的な町になるのではないかと期待している。( 瀬川佐知子)
中秋節行燈ワークショップ
2022.09.10 シンガポール照明探偵団
この2年ほど中秋節の期間には活動を控えていた我々照明探偵団ですが、今年は満を辞してタン
ジョンパガーの地域委員会が主催するコミュニティイベントに参加することに。

2022年9月10日(土)の夕方、中秋節にあわせて行燈づくりワークショップを地域の商業や住民をまとめるプレイスメイキング委員会「Discover Tanjong Pagar」による企画の元、開催しました。
テーマは「アップサイクル」であり、使用できるのはリサイクル素材に限られていました。
そのため、イベントの2週間前から、推定50名分の材料を確保するべく、ペットボトルや段ボール箱、ボトルキャップなどを集めるのに苦労しました。ワークショップ用のテーブルや一部のリサイクルボトルは、主催者の協力もあり、準備することができました。
月餅やお茶を囲んでの団らんや行燈を持って歩く催しは、中秋節の風物詩として住宅街のあちこちで見られます。ワークショップの開催中にも、周辺には来場者を惹きつけるようなライブ音楽や食べ物の屋台が並び、子ども連れの家族でにぎわいました。
開始直後の午後5時ごろは参加者も少なめでしたが、夜が更けるにつれて人出が急増し、予定していた行燈パレードが始まる8時半まで、息をつく暇もないほどの大盛況となりました。
一歳半ほどの幼児から大人までと幅広い層の参加者が集まった今回のワークショップですが、中心となったのは6~10歳くらいの子供達でした。
作業中は段ボールや箱を切って形を作るためにハサミやカッターナイフを多用するため、照明探偵団のボランティアが必ず付き添いました。保護者の方々も積極的に協力し、安全の確保に一役買ってくださいました。
当の子供達もとても熱心で、最後にボランティアの先導で行われた行燈パレードも満喫、参加者の笑顔でワークショップは幕を閉じました。短時間ではありましたが、実りある成功したイベントとなりました。(Sherri Goh)