照明探偵団通信

照明探偵団通信 vol.125

Update:

発行日: 2023年 11 月 28 日
海外都市照明調査 中国・ウルムチ(2023.09.22-09.26)
面出薫/ 照明デザイン塾2023 (2023.09.16-09.16)
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海外都市照明調査 中国・ウルムチ
2023.09.22 – 2023.09.26 柯永林+劉伝熠

住宅地方向の夜景 ヤマリク山森林公園から

新疆ウイグル自治区は中国で面積が一番大きい省で、周辺八か国と隣接している。また多文化、多民族を有するエリアで、中古代から、中国、中央アジア、インド、イラン、ヨーロッパとの長距離貿易で栄え、文化交流も活発でシルクロードの重要な拠点となっていた。あらゆる文化が共存している探偵団未踏の地、ウイグル最大の都市ウルムチの光を調査した。

新疆ウイグル自治区は中国で面積が一番大きい省であり、周辺8か国と隣接している。中古代から国際貿易で栄え、シルクロードで重要な地域となっている。中国、中央アジア、インド、イラン、ヨーロッパとの貿易と文化交流が行われていた。そのため、新疆は多文化で多民族の地域である。中国でもとても神秘的な地域として近年有名な観光地となっている。その中でも最大都市ウルムチを調査してきた。
ウルムチ市はここ十年再開発で都市化が進み、商業施設、オフィスビル、集合住宅などが占めている印象だった。旧市街はモスクを中心に作られていたが、現在ではモスクがビル群にうもれてしまっていた。(柯永林)

飲食街の入口サイン「I ♡新疆」


■新疆国際大バザール
ウルムチを訪れるならば、新疆国際大バザール(Xinjiang International Grand Bazaar)を見逃すわけにはいかない。ここは世界最大のバザールであり、イスラム文化、建築、エンターテインメント、飲食が一体となった場所である。新疆の観光の中心地であり、コンファレンスセンターとしても機能しており、重厚なイスラム建築スタイルが特徴である。建築の機能性と時代感を踏まえつつ、古いシルクロードの繁栄を再現し、西域の民族の特色と地域文化を表現している。新疆国際大バザールの夜景はきらびやかで、特に照明がこの生き生きとした市場の魅力を一層引き立てていた。日が落ちると、大バザールの輪郭は一連の精巧な照明によって強調され、独自のイスラム風の特徴を描き出している。暖色の照明は温かく歓迎する雰囲気を加えるだけでなく、建築の金色ドームを際立たせている。入口では、「I ♡新疆」という文字が目に飛び込み、その上の屋根のライトは色を変え、賑やかな雰囲気を作り出している。中へ進むと、広場に大きなLED スクリーンがあり、かなりまぶしかった。それをなくすと良い雰囲気になるのではと残念に思った。

大バザールの照明が建築の様々な所に現れ、アーチや尖塔、細長い窓など、細部に至るまで照らされている。それぞれのディテールが光によって巧みに強調され、視覚的なレイヤーを生み出している。さらに、店の内部は外よりも明るく照らされており、その鮮やかな明暗の対比が訪れる人々を迎え入れ、様々な商品や香辛料の香りが溢れるショッピングの楽園へと誘う。大バザールは色とりどりの照明とGOBO ライトの使用で一層生き生きと魅力的になる。人々は、精巧な工芸品を見たり、本格的な新疆料理を味わったりする中で、ユニークな文化体験を享受できる。ここでの
夜は、光と影、色と質感、過去と現代が織り交ざり、新疆の多様で豊かな文化の物語を体感できる。ウルムチにおける色彩は、単なる視覚的表現を超え、文化の伝達手段ともなっている。ウイグル族の色彩への愛好は、その豊かな文化的伝統と、精緻なイスラム建築の装飾スタイルに深く根ざしている。彼らは、鮮やかな緑、赤、青、白、黄色を好むことで知られ、これらの色を巧みに組み合わせて、鮮明なコントラストと活気ある豊かな視覚効果を作り出していると思った。

広場にある巨大なLED ディスプレイ
広場両側の商店


この色彩の好みは、ウイグル族の独自の美意識を反映し、彼らの深い文化的基盤を映し出している。色の選択は、ウルムチの特有の自然地理的環境、社会文化的背景、民族の歴史、文化、宗教信仰と密接に結びついており、鮮やかな文化的風景を創出している。夜になると、これらの色彩への好みは都市の照明デザインに反映される。夜の光に照らされるウルムチの建築は、光と影の舞いを超え、色彩と光の交響曲を奏でる。照明は建築の輪郭と装飾に沿って流れ、色のコントラストと深みを強調し、まるで都市に命を吹き込んだかのように、ウイグル族の文化的息吹を感じさせる。このデザインは、都市の美観を高めるだけでなく、伝統と現代を繋ぐ架け橋を築き、日々の生活の中でウイグル族の文化の魅力を絶えず体感し、味わわせるものである。 (劉伝熠)

新疆国際大バサール商店街のGOBO ライト

■紅山公園
今回高所撮影のため訪れた紅山公園では、あいにく大雨が降っていた。雨が原因なのか、園内に人は少なく、快適な環境で調査ができた。園内の木には多くのスポットライトが設置され、ポール灯にはGOBO らしいものが多くみられた。夜は一転、遊園地のように動きが激しい派手なカラー照明で園内全体を照らし、驚くような照明の演出がランダムに行われ、きちんと計画されていないように感じた。もしきちんとイベントやフェスティバルなどに合わせて計画されていたら、いい公園になるはずだと思った。紅山公園園内にはお寺もある。雨で閉まっていたが、照明は点灯していた。おもしろいと思ったのは、牌坊(はいぼう)の照明が表面を照らすのではなく裏面を照らしていたこと。入口のドアと壁が明るく照らされ牌坊がシルエットになっていた。お寺は斜面の横にあり、正面へのグレアを配慮したためだろう。

中心街の夜景 紅山公園から

紅山公園から見た夜景は、市内で一番高い建物にはファサード照明が施されていなかった。その隣のビルは低層部に巨大なLED のメディアファサードがあり、周りをその色で染めていた。中心街の夜景は低層部に照明が多く、タワーの照明はあまりみられなかった。観光スポットでは、建物全面のカラー照明でお客を引き込もうとしていた。一番明るく感じたのは、それらをつなぐ道路照明だった。

中心街方向(北側)の昼間 ヤマリク山森林公園から

■ウルムチ市内でもう一つの高所はヤマリク
山森林公園である。北側から天山山脈を背景に都市の一部を見下ろすことができた。南側に立ち並ぶ集合住宅の暖かい室内から漏れてくる光が落ち着く感じがした。また、南側の道路照明は紅山公園から見たのと比べて更に明るかったように思う。

■まとめ
今回は新疆で漢民族がもっとも集まっているウルムチ市で調査を行いましたが、近年の開発が激しく古くからの市場国際バサールや紅山公園などが観光スポットとして整備され、もともとウイグル民族生活や習慣が薄くなっているように感じだ。しかしウイグル族の人々の心の情熱はところどころに感じることができた。ある意味観光スポットエリアのカラフルな照明がウイグル族の世界中からの観光客へのおもてなしだと受け止めた。ウルムチ市は新疆ウイグル自治区中ほんの一都市である。まだ壮麗な自然観光資源を持つウイグル族が集まるカシュガル市など新疆の南部でも調査したい。(柯永林)

紅山公園登山道のカラー照明

面出薫/ 照明デザイン塾2023
3-day Student Workshop
2023.09.16-09.18  本多由実+東悟子

多様なレクチャーを開開催

今回で第二回となる面出薫/ 照明デザイン塾。この企画は9 月の3 連休を使い照明デザインのプロフェッショナルから直接照明デザインについて学ぶ集中講座です。全国から集まった24 名の学生とレクチャー、街歩き、ディスカッション、プロポーザル作成など、濃厚な3 日間を過ごしました。

昨年から始めた面出薫/ 照明デザイン塾を、今年も全国から大学生を募集し、佃にあるLPA オフィスで9 月の3 連休に開催しました。昨年の反省点を活かし、グレードアップした内容となるよう、事前にスタッフ間で複数回ミーティングを行い、レクチャー内容を強化。またプログラム構成も集中力が途切れないよう再構築して臨みました。


実際の器具を紹介するレクチャーも

■ Day1 レクチャー&街歩き
前回は1 日目に集中させた座学を、今回は1 日目と3 日目に分けました。1 日目には照明デザインの思想とコンセプト、照明基礎知識- ボキャブラリーと光の効果実演、照明デザインのプロセス、都市環境照明等のレクチャーに加え、外部講師による光害のレクチャーや観光地域づくりにおける照明デザインのレクチャーと8 つのレクチャーで構成し、途中休憩をはさんではいるものの、4 時間半の長時間で行いました。それぞれに違う角度から照明デザインを解説しているレクチャーで、照明の多面的な部分を垣間見る事が出来たのではないかと思います。


街歩きの様子 スマホで写真を撮ったり、照度を測ったり

照明の基礎を学習した後は、4 つの班に分かれ、それぞれ指定されたエリアへ街歩きに出かけました。今回選んだエリアは門前仲町、有楽町&日比谷、麻布十番&六本木、新橋&汐留の4つ。LPA スタッフの引率の元、それぞれのエリアの光の英雄と犯罪者を探し、自由に意見を交わしました。街歩き後の懇親会は、食事をしながら語り合うことでアイスブレイクとなり、互いの親密度を増すのにいいきっかけとなったようでした。

2日目グループディスカッションの様子


■ Day2 グループディスカッション&パネル作成&グループ発表
2 日目は街歩きでの発見を、グループ毎に話し合い、それぞれの光の英雄と犯罪者を決定していき、最終的には英雄ベスト3、犯罪者ワースト3を決め、パネルにまとめていきます。ディスカッションの方法は班毎に様々で、とことん意見がすり合わず、いつまでも議論を続けている班もあれば、英雄と犯罪者はすぐ決まったものの、説明する言葉に窮する班もあり、どの班も制限時間内ぎりぎりでのパネル完成となりました。出来上がったパネルは各班の特徴がでているユニークなものとなりました。プレゼンテーションでは、発表者は緊張が見られたものの、決められた時間を使って、それぞれの主張をきちんと発表していました。プロポーザルもすぐてきそうな現実的なものから、実現
させるのは難しそうなもの、夢のつまったものまで、多種多様。プロポーザルを作成することで、実際にある問題を分析し、改善点を考え、その頭で考えた照明デザインを形に落とし込み、言葉で説明することを学びます。照明デザインの知識や体験をインプットし、パネル制作とプレゼンテーションでアウトプットまで行うことをたった2 日間でやり遂げるので、参加した学生たちも、2 日目にして疲労困憊の様子。2 日目夜の懇親会では、大分打ち解けてきた参加者同士、班を超えて話し込んでいる姿が見られ、横のつながりも出来ているようでした。

グループでのプレゼンテーションの様子


■ Day3 レクチャー&個人課題発表 
3 日目午前中はレクチャーの第二部。未来の照明環境の照明概論のレクチャーから始まり、実務編レクチャーのホテル照明、ランドスケープ照明、そして今年から始まった実物の器具を紹介しながら、実際に触ってもらうレクチャーと様々なトピックで行いました。内容が様々なので、飽きずに最後まで聞いてもらえたのではないかと思います。とくに器具を点灯しながらのレクチャーでは、参加スタッフに、学生数名づつがはりつき、質問を次から次へと浴びせていました。日頃、間近でまじまじと見ることがない照明器具は興味深がったようです。午後は個人課題のプレゼンテーション。個人課題は、①桂離宮の照明デザイン、②コルビジェ設計のサヴォア邸の照明デザイン、③浅草の照明計画、④ 2050 年の「住宅」 or 「地下空間」or「コンビニ」の光環境、⑤光の茶室、という5 種類の中から1 つを選択し、自由な提案内容A3 用紙1 枚にまとめて、事前に提出。最終日に1 人3 分間でプレゼンテーションします。自分の意思や提案を、説得力を持って説明するというプレゼンテーション能力を鍛えるコンテンツです。最後はスタッフだけでなく、参加学生が自ら優秀作品を投票によって選びます。今回は事前課題でしたが、ワークショップでの経験をもとにブラッシュアップさせるべく、当日までプレゼンボードの修正や発表内容の組み直しを試みているようでした。光の現象を丁寧に表現した提案、緻密な事前調査と提案の密度が光った提案、どちらからも今回の課題に対して光・照明という観点を自分なりに突き詰める熱量が伝わってきました。それぞれの着眼点、それぞれが好ましく思う光の様相を、学年も学科も異なる集まりの中で共有できたことは、参加者もスタッフにもとても刺激になりました。

3分間で自分のプロポ―ザルを説明

参加者全員の投票で得票数が多かった学生には本を贈呈


投票によって選ばれた3 名にはLPA の書籍を贈呈。参加学生の感想では、「どこまで作りこめばよかったのかわからなかった」、「光の表現方法をもっと教えてもらって、それを反映させたかった」などの声が聞かれました。他の学生のプレゼンテーションの方法や成果物の作り方からも学びが多くあったようです。3 日間、根を詰めて参加してくれた学生の皆さんは、本当に疲れたことと思います。またLPAスタッフも疲労困憊でした。事後アンケートでは、参加者が充実した時間を過ごしてくれたことが見て取れました。無事3 日間終了してスタッフ一同安堵と共に来年もよりよいワークショップが開催できるよう、運営方法やプログラムをブラッシュアップしていきたいと思いました。(本多由実+東悟子)

ワークショップ最後の記念撮影 3 日間やり遂げた満足顔の参加メンバー

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