照明探偵団通信

照明探偵団通信vol.91

Update:

発行日:2018年9月13日
・照明探偵団倶楽部活動1/ナイトウォチングツアーin阿智村 (2018/07/21-07/22)
・照明探偵団倶楽部活動2/照明探偵団Jr. 夏休みワークショップ (2018/07/26)

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ナイトウォチングツアーin阿智村

2018/07/21-07/22 本多由実+ 黄思濛+東悟子

昨年の八丈島上空でのUターンの雪辱を果たすべく計画したツアー。日本一星が美しく見える村に選ばれた長野県阿智村へ東京からパスを貸切ってのツアーとなりました。参加者15名で夏の星と太陽を満喫してきました。

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ヘブンスそのはらで星空観賞を待つ

■観光資源となる星空

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月明りが強く明るい夜空でも、都会とは大違いの星の数でした
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山頂で寝転がって待機する人々
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レーザーポインターを使っての星の解説
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中山道42番目の宿場の妻籠宿。山の中ならでは。木で葺いて置き石でとめている屋根 
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脇本陣の囲炉裏端と高窓。手前が家長の座
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ノスタルジックな街並み

今回の目的地「阿智村の星空ツアー」は、愛知万博頃までは盛況であった昼神温泉に観光客を呼び戻すため、スキー場の夏季活用と合わせて考案されたもの。5年ほど前に村民が手探りで始めたイベントが、今は1年通じて多くの人々が訪れる名物となっていると、行きのバスの中で興味深い記事を読みながら、団員一同は東京から長野県西部まで向かいました。
昼には天竜川の川下りをし、温泉と夕食を楽しみ、お酒も少し入った後で、メインイベントの星空観賞に出発です。星空観賞の会場は、山々に囲まれたスキーゲレンデ「ヘブンスそのはら」。青い照明で宇宙ステーションのような雰囲気の乗り場から乗り込むゴンドラは消灯され真っ暗、そのまま15分ほど黒々とした森の中、山頂まで2.5kmを移動します。予想以上に町から離れているので、徐々に街の明かりは届かなくなりました。
山頂につくと、すでに多くの人が芝生に陣取っています。探偵団メンバーも緩やかな傾斜に寝転んでスタンバイ、消灯を待ちます。22時15分になると、係員のアナウンスにより、目をつむりながら皆でカウントダウン。(投光器消灯)
目を開けると小さな星々が一面に広がり、感嘆の声があちらこちらから上がりました。星々の光は奥行きをもって重なり、月の光と相まって夜空全体がうっすらと明るく見えます。上弦を過ぎた明るい月夜で、たまに夜霧はかかるものの、小さな星々が頭上に広がる様子は見飽きないものでした。霧か薄雲かと思われた白い帯が天の川。多くの星々が見えるなかでも特に明るい星々は有名な星座のもの。はくちょう座をはじめとする夏の星座たちも十分に見えました。空自体が明るいので、星や月の光で歩くのに不便は無い明るさですが、照度計の数値は0.02lxと満月の0.2lxより格段に低い数値でした。
レーザーポインターを使って夏の大三角形など星座の紹介をうけ、音楽を聴きながら星空をながめあっという間の15分、まだまだ見ていたいのですが投光器が点灯され、お開きとなりました。下山したのは23時過ぎという夜中の観光ですが、老若男女1500人を超える人々が星空を求めて集まっていました。
明治維新からわずか150年、それ以前では賑わう町なかでも普通にこのような星空が見えていたことを思うと、うらやましくなりました。夜景名所は様々な箇所にできていますが、星空名所を新たに作るのは難しいことと思います。このような場所が減らないように、気をつけて光を扱っていきたいと思います。

■昔ながらの町並みと光

翌日は中山道の宿場町、妻籠宿にて家並みの成り立ちや歴史、建物の特徴などをユーモアな案内人の方に詳しく教えてもらいながら散策しました。妻籠宿は日本初の重要伝統的建造物群保存地区。一見同じように見える中でも建てられた年代によって階高や前庭の違いがあること、敵をふせぐために不自然に曲がった道路など、面白い工夫が多くありました。
カラッと晴れた夏空が似合う、山の中の素朴な町並み。のどかな町に見えながらも、そこには殿様に対する決まり事やしきたりがあり、当時の身分階級の厳しさを物語っていました。内部を見学した脇本陣でも、囲炉裏端に座る位置は家族の中での親子・男女・姑嫁という上下関係によって決まるという、日本の「家」における家長というしきたりの厳格さを目の当たりにしました。
また、日本家屋ならではの昼光の取り入れ方にも感嘆するばかり。秋~冬には座敷正面の高窓から格子ごしにシャワーのように光が挿し、冬至にのみ囲炉裏まで達するそうです。写真を見せていただきましたが、囲炉裏の煙によって光線がくっきり見えとても幻想的でした。

最後に赤沢自然休養林で木曽ヒノキの天然林の中を走るトロッコ列車に乗り、木漏れ日が美しくヒノキの香り漂う森林の中の散歩を楽しみました。

3年前は火祭りで火の勢いと人々の熱気を体感し、今回は川下り・星空観賞・歴史ツアー・森林散策と自然多めで五感を刺激してきたツアーでした。また色々な光を求めて団員でツアーできればと楽しみです。通信で見づらい星空写真はインスタグラムでもご覧いただけますので、是非そちらもご確認ください。 (本多由実 黄思濛 東悟子) 

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天竜川下り 日差しは強いが川面近くは涼しく気持ちいい
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赤沢休養林にて森林浴 マイナスイオン!
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思わず童心に帰る団員達

照明探偵団Jr. 夏休みワークショップ

夜の街に出て、光の英雄と犯罪者を探そう!
2018/07/26  東悟子+畢雲+木村光+荒木友里+高橋翔作+神田愛子

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総勢49名参加してのにぎやかなワークショップになりました

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オリエンテーションの様子

記録的な猛暑の東京で照明探偵団Jr.のワークショップを久々に開催しました。
元気溢れるこども達24名とその保護者で表参道&キャットストリート界隈で光の英雄と犯罪者探しを行いました。

夏休みが始まったばかりの7月末、LPAの会議室はこども達でいっぱいに。街歩きワークショップ3年ぶりの開催に定員15名のところ24名もの小学1年生から中学3年生までのこども達が集まってくれました。
照明についてあまり考えたことがないこども達に、いかに興味を持ってもらい、また何を学んでいってもらうかをスタッフと話し合い、次のことをターゲットにしてワークショップを行いました。
1、光のことを知ろう
2、街のあかりを観察してみよう
3、光の英雄と犯罪者を探してみよう
4、どうして英雄 OR 犯罪者なのか考えてみよう
5、他の人はどう思ったのか意見交換してみよう
6、どうすれば犯罪者がよくなるか考えてみよう

■オリエンテーション
ますは面出団長が照明の基本を説明。火から始まる照明の歴史や色温度の違いが人にもたらす影響、日本と海外の住宅における照明の位置の違いなどを簡単に解説しました。その後、街はどのようなあかりで構成されているか、光の英雄と犯罪者はどういうことを指すのかを紹介し街歩きに出発しました。

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街歩きで意見を言いあうこども達
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道端の照度を計測
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ふたつ並ぶ自動販売機も照明が違うと販売意欲が変わることを発見

■街歩き

こども達は5班に分かれ、それぞれの班で英雄と犯罪者探しをスタートしました。

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多くの班が英雄にあげたサインが浮かび上がる照明
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光の滴が流れる演出が好評
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派手でない上品な木のイルミネーションが英雄に
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上部のやわらかな光が下の強烈なグレアで台無しということで犯罪者に
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ビル全面が発光しておりまぶしすぎて犯罪者に
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英雄と犯罪者で意見がわれたネオンサイン

①A班
A班は全員が小学校低学年のグループ。目に入るものに対し、純粋に好き/嫌いといった意見が飛び交います。こども達の観察方法は、興味を惹くものを発見すると一目散に走って行き、近くでまじまじと観察したり触ったりしながら意見を言います。A班で1番の英雄に選ばれたのはカラフルに色が変わるカフェ看板。他にもカラー照明のものはありましたが、これは看板の裏側の壁が照らされ切り文字が透けて見えるデザインで、「いろいろな色に変わって面白い」「おしゃれ」などの意見が出ました。その他の英雄は白く面発光する看板やガス灯風の街路灯が「目に優しい」との渋い意見で選ばれていました。犯罪者に選ばれたものは直接光のものが多く、まぶしいスポットライトはもとより電球がたくさん付いた看板はこども達に嫌いと一蹴されていました。
今回こども達と歩き気づいたことは、大人は経験でまぶしいことを予測すると目を背けますが、こどもは近付いて観察し、その場で感じたことを意見するということです。大人になり街中にあふれた光の犯罪者を見て見ぬふりが出来るようになっていることに気付き反省させられました。(木村光)

②B班
B班はキラキラ・ギラギラをキーワードに街歩きをしました。一番の英雄として選ばれたのはレストランの入り口の木のイルミネーション。イルミネーションといっても派手なものではなく、電球色で粒も小さく上品な印象があり、通りのイメージにも合う光として全員一致で英雄。他にも間接照明を用いた看板照明も評価が高く、キャットストリートには落ち着いた光が合うという意見がよく聞かれました。その中で、意見が大きく割れたものが、カラフルなネオン管で彩られたお店のファサード照明。決して落ち着いた光ではなく、赤やピンクなど鮮やかな色が多く用いられていましたが、こうした賑やかな光も好きという意見とキャットストリートには合わないという意見が対立してしまい決着がつかず、時間切れとなってしまいました。道路鋲や看板照明に使用されている赤い光については、不気味な印象でこわいという意見が多く、犯罪者として選ばれました。(荒木友里)

③C班
C班は全員が中学生で、一番年上のグループ。わいわいにぎやかな他の班を横目に落ち着いた様子はさすが中学生といったところでした。
初めに足が止まったのは、頂部にドーナツ型の導光板が付き、その下に路上をまぶしく照らす照明が付いたポール灯でした。こども達からはせっかくのドーナツ型の光を下のまぶしい照明が邪魔してしまっているとの声があがり、下の照明は周りのお店が明るいからそんなに明るくなくても良いと鋭い意見も。
足を進めると安藤忠雄氏の建築にこども達の目が留まります。黒い外観に白く光るGALAXYの文字とブルーライトのラインがスタイリッシュで、こども達にも好評でした。
Dior表参道のビルは光の雫が滴れているようなファサードがとても綺麗だったと好評で、1番の英雄となりました。
伊東塾の出身者が多いこともあり、建築と光をセットにして興味を持つこどもが多く、英雄にあがったのはいずれも建築と調和した光でした。逆に光の主張が強すぎるサイン照明やインテリアの光は犯罪者として挙げられました。   (高橋翔作)

④D班
D班はひとつの照明にみんなが積極的に沢山の意見を出し、歩いている道のお店や街灯の照明だけでなく、あまり目に付かないビルの一室や、かなり遠くにあるビルの階段の照明についても意見を挙げてくれて、年上の子を中心に色々な照明と比較したりして、沢山の照明について話し合うことができました。眩しく明るい照明が犯罪者だという意見は一致していましたが、その他は女子と男子によって意見が違うことが多く、話し合いをしても意見は違うままでした。     (神田愛子)
⑤E班
E班は最年少グループ。終始ワイワイ賑やかで、積極的でした。小さな子ほど、自分の意見をきちんと述べて色んな光に興味津々の様子。年齢が低かったせいか、自分の意見を言い終わったらすぐ興味が次の場所に移ってしまい、置いてきぼりになる子も。それだけ意欲的に参加してくれていたのですが、大人は追いかけるのに必死!
最初は英雄があまり探せなかったのですが、お客さんを呼び込むための光やきれいだと思う光は「英雄」かな、とちょっと大人からアドバイスをするとこども達も納得。英雄をいくつも挙げてくれました。また「肝心の店名の文字に光があたっていないから、サインの役割を果たしていない」と小さいながらも鋭い意見も飛び交いました。 (畢雲)

■ポスター作成&発表
街歩きから戻った後はまとめのポスター作り。班ごとに見つけてきた英雄と犯罪者に順位を付けます。どの班もすんなり決まらず予想していたより長い時間かけての作成となりました。話し合いが決裂し、男女で別々の順位を付けた班も。
班毎に別行動であったにも関わらず、多くの班が同じ英雄や犯罪者をを挙げていたのは興味深かったです。

■感想
毎回新たな発見がある探偵団Jr.の街歩きですが、今回は意見の豊富さに驚きました。お互い遠慮して意見を言わないのではないかという心配をよそに、意見が多すぎてまとまらないという、うれしい結果になりました。
作成したポスターは探偵団HPにアップされていますので、是非ご覧ください。     (東悟子)

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班に分かれてポスターを作成
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作成したポスターを使い街歩きのまとめの発表
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他の班の意見にも耳を傾けるこども達

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