発行日:2012年7月3日
・照明探偵団倶楽部活動1/第43 回街歩き:住宅街のあかり~二子玉川~(2011/4/24)
・照明探偵団倶楽部活動2/第37 回研究会サロン@照明探偵団事務局(2012/5/8)
第43 回街歩き:
住宅街のあかり~二子玉川~
2011.04.24
瀬川佐知子+ 池田俊一+ 東悟子
昨年の東日本大震災後の3 月にオープンした二子玉ライズを中心に発展を続ける二子玉川駅。乗降者数も2010 年度から約15% 増加し、ますますその多様性が期待される街。今回はその街を「住宅のあかり」を切り口に街歩きをしてきました。
■企画の主旨
二子玉川は、駅を挟んで東側に広がる都内最大の再開発地帯と, 西側に広がる従来の住宅街・ショッピングセンター街の新旧二つの顔をもつ、今注目のエリア。今回の街歩きは参加者25 名を4 チームに分け、2 チームづつ東と西を担当して行いました。とくに住宅のあかりに焦点をあて、快適な住宅街のあかりとはどのような光環境をいうのかを、新旧の住宅を比較、検証しました。
駅商業施設。店舗からのあかりで、心地よい空間となっている。
■二子玉川ライズから出発
東急田園都市線と大井町線が交差する二子玉川駅から、二子玉川公園(仮称) までの総開発面積約11.2ha の広大な再開発地区。ランドスケープの照明デザインは、東海林弘靖氏が担当され、2011 年の環境省主催「省エネ・照明デザインアワード」施設部門賞を獲得。「暮れ」「宵」「真夜」の3 つのシーンを設定することで、時間のうつろいを表現し、CO2削減と心地よさとを両立、時間の移り変わりと、商業施設から住宅空間への移行を、光が演出していました。計画当初メタルハライドランプで計画されていたところを、省エネ法の改正に伴い、ほぼLEDへと設計変更が行われたそうで、それが功をそうして、今回の受賞となったようです。この日は商業空間は節電されていましたが、店舗のウィンドーから漏れてくる明かりで、通路やパブリックスペースは充分な明るさが感じられ、落ち着き洗練された印象を与えていたように思います。
(東悟子)
東側の二子玉川ライズレジデンシャル周辺。住宅の窓からは、暖かい色のあかりがもれている。青色LEDの多用が目立つ。
■二子玉川東側
二子玉川東側は現在もまだ再開発工事が行われている地区です。そのため駅からRise タワーレジデンスにつながる予定の通路は、レジデンス周りしかできておらず、何もない空間にしては明るすぎるのではないかと感じました。ただ、全体が完成し、人の往来がもっと多くなると違った印象になるのかもしれません。ところどころに青色LED が使用されていました。レジデンス照明は色温度が低い光の方が温かみを感じますが、ポイント的に青色を使用し、このエリアの特徴を出していました。現在完成しているエリアでは放電灯、蛍光灯などの従来光源とLED照明が混在しているような状態でしたが、どんどん進化していくLED 照明も出てくる中、これから完成するエリアがどういった照明器具を使用していくか興味深いところだと思います。
震災直後にオープンしたショッピングセンターは、アトリウムの上から通路を照らしている照明器具が半分消灯しており、今も節電点灯が行われていました。照らされているところは700lx くらい、照らされていないところは70lx と多少照度差がでていましたが、歩くのには問題のない範囲でした。全点灯したときにどういった表情の違いが出るか気になるところです。
(瀬川佐知子)
公園へとぬけるパッセージ。 人通りもまばらなので、 明るさだけが目立つ。
通路にしてはあかるすぎるのではという意見も。
■二子玉川西側
駅出口付近の天の川のような天井照明のあるアトリウムを抜けると、玉川通りに面して高島屋など大型のショッピングセンターがあり、さらに奥に進むと昔から残る閑静な住宅街が広がっています。シティコートの細い路地では駅から離れるに連れ、高さやタイプが異なる様々な街路灯が並んでおり、照度は街路灯の下でおよそ15lx、中間で5lx 程度となっています。駅からの帰路としては安全に歩くだけの十分な明るさは確保されているように感じました。ボラード照明など基本的に低い位置の照明は温かみのある電球色の光で計画されていて、全体的に落ち着いた雰囲気となっています。
谷川緑道はその名の通り花や緑が多く自然豊かな通りです。夜間はというと・・散歩道にしては多少明る過ぎるのでは?と感じるポール灯が煌々と輝いており、周囲の景観も比較的暗いため灯具だけが目立ってしまっている状態です。おそらく近隣の住宅への光害も予想される為、現状の全方向照射タイプではなく灯具の眩しさは抑えて下方向だけに効率良く光を落とせればより魅力的な緑道になるのではないかと思いました。一方、通りの分岐点に設置されているポール灯にはソーラーパネルが搭載されており災害時の対策も考えられているようで、さすがは緑道の造成に力を入れている世田谷区といったところでしょうか。
(池田俊一)
二子玉川西川住宅街: 左側のマンションは低い色温度で統一されているが、道路灯の白さとの違いがアンバランスとなっている。
通の左右で意匠の違う街路灯が設置されている。
通りの右と左とで街路灯の意匠が違い、統一感にかけ眩しい印象。さらに低い位置のボラードも設置されており、バラバラで盛りだくさんのあかりという印象が否めませんでした。
UR都市機構管理の住宅シティーコートは、ボラード、駐輪場、階段スペースなど電球色で統一され、落ち着いた雰囲気でここだけが別世界のようでした。調査の開始から1 時間が経過したあたりから小雨が降りだし、あっという間に豪雨に。しばらくは調査を続けましたが、あまりにひどい落雷で中止を余儀なくされました。東側を充分にみれていなかったのが心残りです。
懇親会では、街歩き中に話題にのぼった青色LEDの多用について、青い色が人にもたらす影響の解説があり、光と色とが及ぼす精神活動への影響は、照明設計を行う上で重要な検討要素であることを実感しました。
(東悟子)
強烈なまぶしさが、住宅に光害をもたらしている。
眩しいわりには、足元がそれほど明るく照らされていない。
第37 回研究会サロン
@照明探偵団事務局
内容:二子玉川街歩き報告
2012.05.08
東悟子
■調査発表
2 班毎に同じ地区を歩いたのですが、同じ道を
暗くて不安だと感じる班があったり、現状で
ちょうどいいと感じる班があったりと、性別、
年齢などにより、同じ灯りでも感じ方は様々で
した。生活に密着している住宅街のあかりが
焦点だったからなのか、出席者20 名でも多様
な意見が聞かれました。個人の明るさに対する
好みがよく発表内容に反映されていて、さまざ
まな人が行きかうパブリックな場所を照明計画
していくむずかしさが、出席者の意見の違いか
らも感じられました。
発表内容で特に印象に残ったのは、『暗いのに眩しい』という意見。谷川緑道沿いは路面照度3~5lx と低い照度なのですが、街路灯のあかりは全方向にでるタイプなのでこのような街路灯としては最悪の評価につながったのだと思われます。また公園のポール灯も、人がいないのに煌々と照らしており、無駄な光を灯しているとの声も。
また思いのほか、住宅周辺に青色LEDを多用することに対する反対意見が多かったことも驚きでした。
発表に際して、みなさんよく話し合われており、照明について語り合うということに真摯に取り組まれていて、身が引き締まる思いでした。
次回街歩きは7 月下旬を予定しております。夏らしい企画にしたいと思っておりますので、ご期待ください。
皆様のご参加をお待ちいたしております。
(東悟子)
■街歩き企画担当SQUAD感想
2012 年最初の街歩きのテーマは、「住宅街のあかり」。どこの街を選ぶかがポイントでした。駅前の大規模再開発で話題のニコタマの他に、多摩ニュータウンの大型団地や女性に人気の自由が丘等も事前調査しました。日ごろは通過するだけの住宅街ですが、それぞれの街で心地よい素敵なあかりや、そうでないあかりに出会いました。街歩き当日は突然の雷雨で中断せざるを得なかったので、機会を見つけてリベンジしたいと思います。
(古川智也)
二子玉川の街歩きでは、以前からある街並みを歩きましたが、これまであまり明かりについて気にしていなかった夜の街を歩くということを、気にしながら歩い
てみて場所によってさまざまな表情があることを改めて感じました。違う色温度の照明器具が付いていたり、無機質にLEDで光っている看板、コンビニの明るすぎる照明、周りの家に明かりが入ってしまっている街路灯等、改善したほうがいい点がたくさん見えてきました。色温度の違い、照明器具の位置、数等によっていろいろな感じ方があります。これらを統一して夜も安心して、心地よく歩くことができる街並みを作っていくのは難しいだろうなとも感じました。人それぞれの印象が異なる場所がありましたが、これは歩く順番によるところもあったのではと思いました。暗いところから明るいところ、明るいところから暗いところへ歩くときの人の印象は違うと思います。明かりひとつとっても感じ方は人それぞれであり、照明計画って難しいなと改めて感じることができました。
(坂口真一)