2014.08.29 三宅博行 + 東悟子
夏休みもおわりに近づいた 8 月 29 日、東京の新名所「虎の門ヒルズ」で街歩きを行いました。最新スポットの照明環境はどうなっているのか、30 名を超える団員が集まり、華やかな装いの施設に興奮しながらの街歩きとなりました。
今夏誕生した新しい東京の観光スポット虎の門ヒルズ。その照明環境はどのようになっているのか、新しいことがおこっているのか、調査してきました。
虎の門ヒルズ外観。 落ち着いた雰囲気が好印象
■ホテル
虎ノ門ヒルズは超高層ビル一棟型の再開発ですが、多くの同型のプロジェクトと同様、最上階にはエリア全体のイメージを左右するホテルブランドが入居しています。ホテルアンダーズ東京のエントランスからレセプションフロアまでを最初に見て回りました。
一階にあるホテルエントランスは小さく、車寄せに比べて非常に照度が抑えられており、ある程度知っている人でないと見過ごしてしまいそうなほど。
明るさにメリハリをつけることでホテルと外界とが切り離された世界であることを印象付けていました。左右の壁面には白熱電球がクリアのグラスの中に納まるように設置されていて、電球が直接見えているデザインとなっていました。しかし、十分に調光されているため眩しいということはなく、空間が非常に低い色温度の光に包まれている感じがしました。
ただ、グラスのカットによって光条が壁に鋭利な模様を描いており、もっと柔らかい印象のほうが似合う気もしました。
ホテル廊下
エレベーター内部
エレベーターに乗ると、奥には和紙を立体的に形作った繊細なアートがあり、その陰翳を最大限に活かすように光が左から伸びてきています。和紙と光と言えば透過してくる行灯のような光を見慣れているため、この見せ方は非常に印象に残りました。
レセプションフロアでは、障子のような光が床の高さで柔らかく広がっていました。高天井のモダンな空間なのですが、随所にある和を感じさせる要素のおかげで、どこか見覚えのある空間になっています。レセプションカウンターの細木細工なども、間接照明で美しく照らされてます。それだけに、所々で非常に強く出てしまっているスカラップが残念に思われました。(しかし壁への割り付けも合わせてあることから、意図的なものかもしれません。)
客室エリアには今回はお邪魔できませんでしたが、それ以外のエリアは全体的に、ホテルの高級感を演出するのには少し明るいかなとも感じました。しかし、全体的には眩しかったり主張しすぎたりするような光は無く、和のテイストを取り入れた落ち着いた雰囲気で構成されていました。 ( 三宅 博行 )
つよくでているスカラップが残念
ホテル 51 Fからの眺望
■虎ノ門ヒルズ低層部の商業エリア
低層部南面の2階アトリウムは 3 層吹き抜けで、昼間は高さ 18m のカーテンウォールから自然光が降り注ぎ、開放感のある居心地の良い空間です。
夜間の地明かりは、同フロアにあるレストランやバーのベース照明と演出照明、3階・4階の飲食店やバルコニーから落ちてくる光、植栽をライトアップしているバウンド光が担っていました。
階段降り口の床面照度は 15 ルクス程度で(色温度 3400K)、ゆったりと落ち着ける大人の光空間となっており、メンバー一様に高評価でした。一方、店名を示した白いサインや風除室上方の天井面の白い光だまりには周囲との輝度バランスを求める声がありました。
低層部北面の2階及び3階のオフィスロビーに接してカフェやレストラン、ショップがあります。
3階フロアでは業種の異なる5店舗がトータルコーディネートされており、殊にコンビニエンスストアでは照明器具の存在を感じさない、心地よい光が設えてありました。入口近くの机上面照度は 400 ルクス程度(色温度 2800 K)で、従来のコンビニの光とは全く異なる光環境であり、つい長居しそうな空間でした。新鮮な情報やカルチャーを提供する新しい形のコンビニでは財布も緩んでしまうでしょう。
同ビルには他にもドイツビアパブやアジアンダインニング等、居心地のよい光の店舗が多数ありましたので、またゆっくり行こうと思います。 ( 古川 智也 )
アトリウム。 開放的で心地いい空間
照度が低くおさえられたコンビニエンスストア
夜の音楽イベントなどが開催される。
■全体の感想
印象的な影
エスカレーター付近
ビル内は、ONとOFFを区別するかのようにその明るさや雰囲気もはっきりと分かれている空間でした。オフィス側は明るめで仕事のやる気を起こさせ、レストラン側やホテル内は落ち着いた雰囲気といった印象。そんな中でも、数々の工夫がされていますが、参加されたみなさんの意見は人によりさまざま。感性で判断の分かれる照明の灯りはやっぱり難しい、そんな印象を持ちました。
個人的にはオフィス側の明るさはちょうどよいと感じましたが、所々ちょっと意図がわからなかったり、間接照明なのに、器具が丸見えだったりする、どうかなと思うような照明もありました。
対してレストラン側は、ちょっと暗めの印象。ホテルも落ち着いていて、大人の雰囲気です。とらのもんがいて、子連れに優しいと思いきや、全体的には暗めで子供を連れてくるような場所ではない感じがしました。
ヒルズ外回りの照明ですが、階段は器具の工夫で影を作ったり、水中の器具は星型になっていたり、さまざまな工夫がされてるのが印象的でした。レジテンスの入口は、オフィスの人込みから離れ、ひっそりとたたずむような気配が落ち着いた雰囲気を醸し出しており、好印象でした。 ( 坂口 真一 )
あまり広くない施設でしたので、街歩きの1.5 時間を持てあますのではないかと思っていましたが、参加されている皆さん細かくチェックされており、あまりに集中していたせいなのかはぐれてしまう方が多数でました。皆さんの虎の門ヒルズに対しての期待度が高いのだなと感じた今回の街歩き。前回の中央線沿線街歩きから懇親会でも簡単なレビューをすることになり、歩いたその日に感想がきけるので、より新鮮なコメントがきけるようになりました。
またサロンには参加できない方も、ただ歩くだけでなく、座って意見交換をじっくりできるので、このスタイルはしばらく続けてみたいと思っております。 ( 東 悟子 )
様々なアイテムが仕込まれている。
好きな個所、 嫌いな個所を、 議論中
1Fホテルエントランス部分
階段での集合写真