街歩き・サロン

第71 回街歩き:八重洲&大津

2023.03.24 & 04.21 
田村聡+ 小谷弥+ 東悟子+ 小泉彰也+ 刑部もあな+ 稲川陽菜

2023 年初の探偵団活動は八重洲での街歩き。3 月にミッドタウン八重洲が開業し、今後も大規模な開発が予定されている八重洲エリアを3 班に分かれて歩きました。開発前のエリアを記録するのと同時に開発が進んでいるエリアの新しい光環境を見て回りました。ビルの取り壊しが決まっている本多財団の鈴木さんにも街歩きに参加いただき、このエリアの歴史やホンダビルの解説も頂きました。

ノスタルジックな雰囲気の飲み屋街


■ 1 班:八重洲通り北側
1 班は、主に八重洲通りの北側を中心に回りました。再開発工事中で仮囲いに囲まれて入れない箇所も多かったですが、昔ながらの飲み屋街や再開発前の古い建物を見ることができました。その古い建物の中には犯罪者もいましたが、飲み屋街の方は55lx,4,500K 程度の程よい明るさでノスタルジックな印象を演出しており、満場一致で英雄となりました。この街並み、雰囲気はぜひ再開発後の八重洲にも残していってほしいという意見が大多数でした。

美しいが、ライトアップに課題の残る桜並木

この日一番の英雄はさくら通りの桜並木。街歩きの日はちょうど満開の下を歩くことができました。ここでは、仮設照明を後から取り付けて、街灯を消灯しており、桜をきれいにライトアップをしようとしている努力の跡は見えましたが、もっといい照らし方があったのではないかと議論になりました。道路標識等の周囲環境が思わぬ悪さをしている所もあり、自然物をライトアップすることの難しさを感じました。 また、通りごとに街路灯を統一しており良いという意見も出ましたが、今後街のシンボルとなっていくであろう新しい街路灯は、直下を照らすスポットライトがグレアになっていたり、ランタンの色味が悪かったりと犯罪者よりの意見が多く少し残念でした。 今回の八重洲街歩きでは、新しくなる前の街をまわって記録することができました。特に当日は本田財団の鈴木さんにエリアの解説をしていただきながら街をまわることができ、非常に貴重な経験を得ることができました。本当にありがとうございました。ぜひ再開発後の生まれ変わった八重洲の街を歩いて比較してみたいと思います。

スポットライトが眩しい街路灯


最後の懇親会も大勢で集まって開催でき、桜に負けず話にも花を咲かせることができ楽しかったですし、心配された天気も街歩きの時間は調査をできる程度には何とか持ってくれて、非常に充実した街歩きでした。(田村聡)

悪目立ちのエスカレーター

■ 2 班:八重洲ー京橋
2 班は八重洲から京橋までのエリアを中心に街歩きを行いました。八重洲ブックセンターから京橋エドグランの途中にある居酒屋の照明が、電球の種類や色温度が無秩序でただ明るければ良いという日本の典型例。賑わっていたお店だったのに残念だという評価で「犯罪者」に。 京橋エドグランは、全体的に低めの色温度で設計されている中、メインエントランスには寒色で光が強いエスカレーターが。「空間を台無しにしている。」「エスカレーターを主張してどうするのか。」「暖色でパワーを抑えた照明でも十分に空間として際立つのではないか」という散々な言われようの「犯罪者」でした。 八重洲ミッドタウンでは、壁面を照らしている照明が凹凸のある壁材に反射して滝が流れて照明に無頓着な日本人いるように見える英雄を発見しました。外に噴水があったので「水が流れている」という演出テーマの一貫として表現しているのではないかいう意見が出ました。

滝が流れるエントランス


八重洲ミッドタウンの向かいにある建設現場では、普通単色のテープライトが使われる中、色が変わるものが使用されていました。 工事柵にSDGs と書かれておりSDGs を強調するために採用されたのではという意見が。ディスプレーモニターでただ伝えるのではなく 何気ない照明で意味を持たせているという点で英雄に選ばれました。

高さ30m 出揃っている


本多財団の鈴木さんの説明で、建物の高さが30m で規制がかかっていることや明るい八重洲の中でぽつんと暗く、照明が駐車場看板灯しかない場所が疲弊した社会人が自然と集まる休憩スペース( マナー的にいいかは置いといて)
になっていること「街の現状を知り、理解し、解釈する」という楽しい街歩きになりました。(小谷 弥)


■ 3 班:八重洲地下街ヤエチカ
3 班は新しく完成したミッドタウン八重洲と八重洲地下街ヤエチカを中心に街歩きを行いました。金曜日の夜で桜も満開近かったこともあり、夜の八重洲は人でにぎわっており、活気のある東京の玄関口が戻ってきた感がしました。3 班が見つけた最大の犯罪者は八重洲ミッドタウンの5 階空中庭園から東京駅を望んだ時に目に飛び込んでくるグランルーフを照らす投光器の照明。グランルーフはきれいに照らされており八重洲口のアイコンになっていますが、ミッドタウンから見下げると折角の高所からの景色も台無しに。グランルーフ建設当初は対面に建つ高層ビルからの視点場を想定していなかった、ということもないように思いますが、とても居心地よく景色もいい空間なのに勿体ない感じがしました。

ルーフを照らす照明の光がミッドタウンからだとまぶしい


ミッドタウン横のYanmar ビルアトリウムの植物育成用の照明が2 番目の犯罪者に。屋内の植物を育成するのにこの紫の照明は不可欠なのかもしれませんが、緑が伸びて器具が見えなくなるまでは、人がいない時間帯に点灯するなどの工夫があってもいいのではないかとの意見がでました。

植物育成用の紫の照明に違和感
ライン照明が続き、圧迫感なく空間の広がりを感じさせる


ヤエチカには犯罪者の名残りを発見。天井を見上げると、所狭しと並ぶコンパクト蛍光灯が入っていたとみられる穴が。現在はその1/4程度が点灯していました。それでも1200 ルクスあり明るすぎるほどの照度が取れていました。全部点灯したら、どれほどの明るさかと思うと想像を絶します。

天井にはコンパクト蛍光灯用の穴が多く残っている


英雄として挙げられたのは、八重洲ミッドダウンの5F の空中庭園の照明。周りの高層ビルからのあかりがあるので、空間全体の照明は落とされており、穏やかな足元の照明が心地のよい空中庭園を作り出していました。地下街は、ちぐはぐなダウンライトが煌々とついている共用部は犯罪者との声が多かったですが、縦に伸びる通路はライン上の間接照明のみで構成されていることで低天井にありがちな圧迫感や直接照明のグレアを感じることなく快適な通路となっていたので英雄となりました。

決して明るい空間ではないが、安心感のある心地よい空間


途中から大雨になり天候はよくなかったのですが、満開の桜と賑やかな八重洲を堪能出来ました。新しいビルがどんどん完成し、、洗練された夜景が出来てくるのは喜ばしい反面、赤ちょうちんが灯るふらっと立ち寄りたくなるあかりもいつまでも残っていってほしい、ほとんどの参加者がそのように思ったのではないでしょうか。消えゆく風景にちょっと寂しさも残る街歩きとなりました。(東悟子)

■関西班:大津
日本最大の湖、琵琶湖とそれを囲む近江の町や自然が織りなす湖国特有の夜景を求め、今回は大津周辺を街歩きしました。ルートはびわ湖ホールから大津港までを、対岸を眺めながら湖岸沿いに歩いていきます。

大津の街歩きは学生中心の班になりました
首振り照明の街路灯

■水平面上の照明
やはり日本一の湖というだけあり、ここまで広々とした夜景を水平線上に眺めることが出来るのは珍しいのではないでしょうか。海とは違い、光が近くもあり遠くもある不思議な感覚です。前回街歩きの神戸のような派手さはありませんが、湖が感動の代わりに落ち着きを与えてくれるような夜景でした。

■海岸沿いの首振り照明
湖岸沿いの道は照明の設置間隔が広いためとても暗く、寂しく感じました。照明器具は球体のメカニックでどこか船を連想するようなフォルム、首を振って角度を変えられる等のデザイン面に関しては好評でした。しかし私たちの意見としては、街頭っぽくなく、明るさだけが必要とされる野球場のナイターのような暴力性を感じました。湖岸沿いの落ち着いた道には街頭らしいデザインと暖かい色を用いたノスタルジーなシークエンスを演出してもいいのではないでしょうか。
また照明の角度に関しては、道路側にしか向いておらずびわ湖ホール側が暗かったことが大人から好評でしたが、360 度照らしてびわ湖ホール側にも滞在できる空間があれば素敵だと私たちは思います。

琵琶湖華噴水の様子


■琵琶湖花噴水
特に話題に上がったのはびわこ花噴水です。緑とオレンジ色の毒々しい色でライトアップされており、今回の犯罪者として挙げられた中でも際立っていました。
・学生からの改善案稲川:角度によっては綺麗に見える箇所も。単色で照らせばどこから見ても綺麗なのでは。
刑部:噴水の高さと色がバラバラで統一感がない。色をそろえるべき
小泉:原色が強すぎる。白色光でプロジェクションのようにエフェクトをかけるべき


■琵琶湖ホール
次にメインのびわ湖ホールです。動線空間の明暗がはっきりしていて、ハロゲンランプならではの温かい色が琵琶湖のリラックスした雰囲気とマッチしているように感じます。しかしハロゲンランプは寿命が短いため所々切れている点が残念です。意図的ではないかもしれないですが、昼には見えない壁のタイルによる微妙の凸凹が照明によって際立っており、夜ならではの表情を演出していました。首振り照明の街路灯大津の街歩きは学生中心の班になりました 街歩きルート琵琶湖華噴水の様子水平面の彼方に見える対岸の街明かり

急に明るくなる商店街


■まとめ
お節介な話かもしれないですが、予算が足りていないためか湖岸沿いは全体的に道が暗く、照明が不足していたように感じます。どの分野にも言えることですが、このボトルネックを解消しない限りはデザインが活躍する場所がありません。専門外と割り切らず、ソフトへの積極的な取り組みがこれからのデザイナーは求められるのではないでしょうか。
( 小泉彰也 刑部もあな 稲川陽菜)

びわ湖ホールの大階段  ドラマチックな雰囲気

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