第 63 回街歩き:目黒川桜ライトアップ
目黒川沿いの桜のライトアップを見に行こう!
2019.03.25 小口尚子 + 太田高志 + 石川新 + 東悟子
都内でも人気のお花見スポット目黒川。今回の街歩きではルートを中目黒→目黒、五反田→目黒の2つに分けて、それぞれ桜をどのようにライトア ップしているかを探りました。
ライトアップすることにより桜の魅力が増しているのか、お花見するのにいい演出となっているのかを調査。また周辺の環境には光害などの影響を与える危険性はないのかを考察しました。
Team 1 (東急東横線中目黒駅→ JR 目黒駅)
中目黒から目黒にかけて街歩き。中目黒駅周辺の目黒川はライトアップ自体もさることながら、屋台や飲食店からの光も活気があり、また桜に対しては高い色温度(6500K)の投光器でしっかりとライトアップされていました。色温度については議論がありましたが、色温度が高いことで花びらの白さを印象的に見せていたように思います。ただ設置場所によっては歩行者の目線に刺さり眩しく感じました。ライトアップの傍ら無数の提灯も延々と連なっており、賑やかで華やかな桜の季節を演出していました。また街路灯が少ない道の安全性を提灯が確保している箇所もありました。目黒方面へ進むと駒沢通りを境に投光器でのライトアップはなくなり提灯のみとなり、隣接する飲食店の自主的なライトアップが時々見受けられるのみとなります。店舗壁面からスポットライトで照射したりポータブルの投光器を設置したりとそれぞれの工夫がありましたが、やはり地面から照射しているのは眩しく感じました。
桜のライトアップが主役とすると、低木に常設されているイルミネーションや街路灯、輝度の高い看板、オフィスの白い明かり等は犯罪者の要素を感じます。その対策として、運営や安全面を考えると難しい課題があるとは思いますが、ライトア ップの時期だけはタイマー制御にしたり街路灯自体にライトアップの機能を持たせる等の改善案が上がりました。
目黒川のライトアップは見に来る人の期待感や特別感が強いので、桜がライトアップされていればそれだけで盛り上がる雰囲気はありました。だからこそ、街灯の計画や店舗などの周りの環境によ って桜の見え方が変わるのもよくわかりました。提灯は近くで見ると特別に美しいものではないのですが、連なっている景色はとても綺麗で、更にその提灯が水面に映る景色が一番印象的で美しいという意見が多く、真の英雄は水面なのではないかという結論に至りました。 (小口尚子)
Team 2(東急東横線中目黒駅→ JR 目黒駅)
2 班で話題になったのは3点。桜は何色の光でライトアップすべきか、目黒川で目立っていた提灯は必要か、桜をどのように当てるのが正解か。まず 1 つ目の色に関しては、色温度の低い電球色で当てるのがいいのか、それとも日中の色温度に近い昼光色で当てるのがいいのか、少し赤みを帯びたピンク色っぽい色を当てるのがいいのか、意見が分かれました。電球色だと桜の色の再現性に欠けるということで、演色性の高い昼光色を好む意見が多かったように感じます。ただ周りの出店や提灯が電球色だったので、遠景から見て統一感があるのは電球色なので電球色が好ましいというメンバーも。
2 番目の提灯に関しては外国人観光客にとっては日本らしさやにぎやかさの創出に寄与しており、好まれるかもしれませんが、主役である桜より目立っており、少しうるさいという意見も出ました。 3 番目の照明手法ですが、中目黒駅近辺のライトアップは川の両サイドの手すりに長方形の照明器具が取り付けられ、桜の枝先を広範囲に照らしていました。地面に置かれた照明や店舗横に取り付けられたスポットライトで人の目を指す挟角の照明より少し高い位置から広範囲に照らし上げるものが好まれていたように思います。
街歩きを通して一番好印象の声が上がっていたのは水面にうつる提灯のあかりでした。やはり桜を差し置いてという感じはしますが、桜と水面に反射するあかりが幻想的な景色を作り出している景色は見る人の心を打つようです。
一長一短がある桜のライトアップですが、結局のところほんの束の間の桜の開花を友人や家族でにぎやかにお酒片手に楽しみたい人にとって桜がどんなふうに照らされていても、非日常的空間にな っていれば楽しめるではないかと思いました。 ( 東悟子)
Team 3(JR 五反田駅→ JR 目黒駅)
3 班は JR 五反田駅からかむろ坂・目黒にかけて街歩きを進めました。
始めは目黒川、住宅街にそって街歩きを進めていましたが、桜のライトアップがされておらず暗か ったため、目黒川から少し離れて、満開のかむろ坂桜並木のライトアップを鑑賞。桜の木が一本一本、白色LEDの光で照らし上げられて桜のトンネルが遠目でも認識でき、非常に綺麗に見えました。その一方で桜の木に近づいてみると、ライトアップのための仮設支持物が木に沿って建てかけられ、デリケートな木を保護しているかと思いきや、隣の木まで電気配線されており、多くの荷重を掛けていたことが非常に残念にでした。またフラッドライトの据付け位置が適切でなく、幹を不必要に照らしていて、残念ながら英雄の光と言えるものではありません。照射方法の改善の余地が多いと思いました。
しかし太鼓橋付近では、目黒川のぼんぼり(20W白熱ランプ)の桃色面を通過した温かい光によって照らされた桜の花が暗闇に慎ましく、薄紅色に光って、風情を感じました。また、川面に写りこんだぼんぼりのオレンジの光が揺らいでとても美しく英雄だと感じました。今回桜が咲いていなか ったので分かりづらかったのですが、桜が綺麗に照らされるのは提灯のおかげもあるのではないかと思います。
街歩き終盤の目黒新橋ではたくさんの眩しい照明を発見。親柱の 4 面に取り付けられたレトロな形状のブラケット照明は乳白カバーで覆われているものの、輝度が高く、不快グレアを出していました。目黒新橋につながる権之助坂商店街歩道では、天井にデザイン配置されたアーケード照明の白色光が、昭和の昔ながらの雰囲気が残る飲食店街をリズミカルに明るく活気づけているという意見がある一方、数多くの蛍光灯の照明がとても眩しいという感想もありました。
今回の街歩きでは、思った以上にライトアップがされておらず、暗闇が多いと感じましたが、それとは反対に多くの英雄の卵が存在していると感じました。 (太田高志)
Team 4(JR 五反田駅→ JR 目黒駅)
4 班は、3 班同様に JR 五反田駅から目黒駅までの目黒川沿いを街歩きしました。五反田駅を出て少し行くと “さくらまつり” と書かれたのぼり旗が並んでいました。すぐに川沿いには行かずに桜伝いに歩いて行くと、学研の東京本社があります。学研前の並木を照らすライトが1つだけ暖かい色になっており班員での議論が始まるいいキッカケになってくれました。
五反田周辺の目黒川沿いは三月下旬でも桜が咲いておらず、提灯のみで桜のライトアップはされていませんでした。しかし、だからこそ気付けたこともあったと思います。川沿いのマンションの常設灯は、普段ならいい照明 ( 英雄 ) かもしれないが提灯の暖かい光との相性は良くないもの ( 犯罪者 )でした。また、常設灯が桜の枝を邪魔しているようなところも見受けられました。照明は一度設置したら終わりではなく、設置した後もどのように人々の生活や周辺の環境に関わっているのか見届けることも重要なのだなと考えさせられました。今回私は街歩き初参加でしたがとても楽しむことができました。参加者は様々な所属の人がいて、各々の視点を持ち感想も多種多様で、同じ照明でもいろんな見方が出るのだなと感動しました。また、普段自分は照明を仕事や研究対象にしているわけではないので圧倒的に知識不足も感じました。照度がよくわからないので定量的な判断を下すのは難しかったですが、定性的ながらも光を感じ取り英雄と犯罪者の判定はできたかなと思います。街歩きで特に気になったのは照明の統一感と環境への配慮です。今後街を歩く際にはその点に注意して見たいです。 (石川新)