2000年5月26日
2000年度、新しい年度に入り初めての研究会サロンが5/26開催された。今回のサロンのテーマは3つ。まずは5/22に行われた照明探偵団街歩きの報告から始まった。参加者が自ら歩き、見て、感じた街の光をあらためて考察した。今回の街歩きのテーマは、“まぶしさ”。街にはどんな眩しい光があり、その光はなぜ眩しいのか意識すること、それがメインテーマであった。照明設計者が最も神経を使うことの一つにこの”まぶしさ”がある。無神経に扱われた光は往々にして不快な眩しい光“グレア”となり私達の視覚を痛めつける。なにはともあれ、最初の一歩はグレアとなる光がどんなものか知ることが必要だ。何が正しくて何が悪いのか。光の設計者はこのクエスチョンに自信をもって答えていかなければならない。街には良い材料がたくさんころがっている。日頃の鍛練が重要。街歩きの大きな意義の一つはここにある。
次のテーマは宮島達男さんの展覧会(5/14迄東京オペラシティーアートギャラリーで開催)の報告と幾つかの事例が紹介された。宮島達男さんの近年の代表的な作品としてまず頭に浮かぶのは、LEDによる作品であろう。今回の展覧会のMega Death。壁面一面にグリッド状に設置されたLEDカウンターがランダムな間隔で9から1までカウントダウンしていく。そしてある時突然おとずれる闇は大量の死、つまりMega Deathを暗示する。心の中に染みわたる空虚感と寂寥感。闇の中で何を人は思うのか。ところが、闇の中から生まれる新しい光は冷たい青い光を不思議と暖かく感じさせる。生命の誕生を暗示するこの光。生命の誕生が人に与える希望。そんなことを実感させてくれた。
最後の“テーマ”は動く光。街の中の動く光を東京の街に出て取材した記録が報告された。技術の進歩は様々な場面で街並みを大きく変えているが、照明もしかりである。渋谷の駅をハチ公口から出るとあのQ-FRONTがそびえ立つ。ガラス壁面に組込まれたLED達は絶え間なく映像を作り出し情報を発信し続けている。一方で東口の交差点を見上げると、大量のネオン管が単純なオン・オフ制御で芸術的なネオン看板を作り出している。ローテクだけれど思わず見入ってしまうネオン看板。同じ渋谷の街に混在するハイテクとローテク。そんな報告の中である団員がつぶやいた。照明設計って何なのか?LEDのような光の素子が集まることで、それが映像となりそして情報を発信する巨大な装置となる。どこまでが照明設計でどこからがそうではないのか。境界線が曖昧になりつつある。スタティックなものからダイナミックな照明設計へ。そんなことを実感させられる報告であった。
次回のサロンではどんな光の話ができるのか?これからも街に出た時は上をみながら光について考えていきましょう。