見通しの利く中央のテーブルに腰を下ろしたのがいけなかった。あっと言う間に5人の店員が押し寄せ、競って注文を取り出した。好味園(香港)、白鳳軒(台湾)、サラン屋(THAI)、鴻伝楼(上海)、椰加達(INDONESIA)などなど・・・。メニューは一冊の手作りファイルにまとまっているが、どうもそれぞれの店が独立採算となっている様子だ。何とも韓国とインドの料理が見あたらないのが残念だが、何を注文しても味はまずまず、特にがっかりさせられるものは出てこない。
さて、この空間のあかりは全く洗練されていない。天井に威張って付いている40W直管蛍光灯器具。よく見るとピンク色、白色、そして青白い蛍光ランプまで、無造作に混じり合っている。それに加えて白熱ランプが入った和風提灯と、看板を照らす安物の眩しいスポットライト。何処と言って考えられた形跡などないが、それでいながら既にエスニック気分にさせられている。いつの間にかリトルアジアのまっただ中という感じで、統一感やルールと言った西洋的なものとは無縁の世界。カオスの光の魔力とでも言うべきか。
ここでは誰が店員で誰が客なのかもよく判らない。働いている人と遊んでいる人の境がない。どの人が日本人でどの人がタイ人なのかさえ。つまり、何から何まで意識のブレンダーにかけられ、それが混迷のアジア・エスニック世界の出来事を象徴している。意味不明の会話を背に旨い料理に舌鼓を打っていると、私がアジアの民であることに徐々に安堵してくる。今まで学んだ西洋的な照明デザインは、どこまで有用なのだろうか。
面 出 | 探偵A | 探偵B | 探偵C | |
あかりの味/雰囲気や気配のよさ | 5 | 5 | 3 | 4 |
あかりの量/適光適所・明るさ感 | 4 | 5 | 3 | 5 |
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス | 5 | 3 | 4 | 4 |
あかりの個性/照明デザインの新しさ | 1 | 2 | 1 | 2 |
あかりのサービス/保守や光のオペレーション | 2 | 3 | 2 | 3 |
合 計 | 17 | 21 | 13 | 18 |
総合評価 | ★★★ (17.25点) |
1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点
あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文 淺川 敏/写真