発行日:2014年12月04日
・ライトアップニンジャ@School of the Arts, Singapore(2014/08/29-08/30)
・第 49 回街歩き:虎の門ヒルズ(2014/08/29)
・第 41 回研究会サロン@照明探偵団事務局(2014/09/08)
ライトアップニンジャ@School of the Arts, Singapore
シンガポールで行われたアートイベント ” ナイトフェスティバル ” に去年に引き続き参加しました。誰でも参加できて楽しめる光と影のインスタレーションを行いました。
2014.08.29-08.30 池田 俊一
イベントポスター
■ライトアップニンジャ・リターンズ!
シンガポール照明探偵団では、昨年に引き続き、ナショナル・ヘリテージ・ボード(NHB) が運営するナイトフェスティバルに招致され、このイベントに参加しました。(http://www.brasbasahbugis.sg/SNFPortal/)
私たちのイベントは 8 月 29 日 ( 金)、30日(土)の2日間、午後7時半から9 時半までの 2 時間に渡って行われました。今回は、光と影を使った誰もが参加できて楽しめるイベントとして” Come Play with Light and Shadow!” をテーマに企画し、日本の夏祭りのような賑わいのある雰囲気の演出も試みました。
会場となったのは、シティエリアの Brasbasah に位置する School of The Arts( 以下 SOTA) にある大階段周辺のパブリックスペースでシンガポールの中でも人通りが多い場所の一つです。
イベント本番
当日は午後 3 時に現地に集合し、はじめに当日ボランティアを含む総勢 40 名のスタッフでミーティングを行い、2 日間に渡るイベントの流れを確認しました。その後、チームに分かれて一斉にインスタレーションの準備に取りかかりました。
午後 7 時半イベント本番開始。予想以上の数の来場者が続々と訪れ、イベント開始直後から会場は大混雑状態になりました。スタッフが通行人の誘導を試みましたが、それでも長蛇の行列ができる始末となりました。初日は開始後に間もなくして不運にも豪雨に降られてしまい、一時イベントを中断せざるを得ない事態になるなど天候の急変にも翻弄されて、なかなか大変な滑り出しとなりました。
会場に配置された 7 つのインスタレーションを来場者が効率よく安全に楽しむことができるように導線を設けて順番に作品を体験できようにしました。また新たにスタンプラリーを導入し、4 つの参加型インスタレーションを回ってスタンプを集めるとコットンキャンディーショップで光る綿あめと交換できるという特典付きです。最終的には用意していた光る綿あめ用の 1000 本の光るスティックがあっという間になくなってしまうほどの大盛況でした。
今回の目玉企画の” ルミナス ・ コットンキャンディー”
ポップで不思議な光る綿あめをもらって子供たちも大喜びでした。
■ 7 つのインスタレーション
蓄光シートのキャンバスに光で絵を描く “Glow in the Dark Painting”
UVランプによって描いた文字が浮かび上がる”Black Light Painting”
カラーシャドーを使った影絵パフォーマンス “Shadow Play”
カメラのレンズを開放して光の軌跡を残す写真アート “Light Painting”
“グローインザダーク・ペインティング” は、スロープの壁面に設置された蓄光シートのキャンバスを LED ライトで照らすと、照らされた部分だけが 15 秒から 20 秒ほど残光して見える遊びです。
“ブラックライト・ペインティング” は、通路にキャンバスと UV ランプを設置、蛍光ペンで描くと UV ランプの効果によって描いたものが光り浮かび上がって見えてきます。絵を描く子供やメッセージを綴る若者などでキャンバスがびっしりと埋め尽くされました。
“シャドープレイ” は、RGB のスポットライトを使用したカラーシャドーの影絵パフォーマンスです。通行する人々の導線をスクリーンとスポットライトが挟むように設置していて、通行人が通る度にその影がスクリーンに投影されて、会場正面にいる人たちから見える仕組みになっています。
“ライト・ペインティング” は、カメラのレンズを開放にして接写時間を長くし、光の軌跡を撮影する写真アートで、参加者は 10 秒間 LED のライトを使って自由に表現することができます。ぐるぐると腕を振り回す人や文字や何かの形を描く人など表現は様々で、総勢 100 組以上の皆さんに楽しんでいただきました。撮影した写真はその場で壁面にプロジェクションされました。またFacebook(Singapore Lighting Detectives)にも公開されています。
ほかにも私たちとのワークショップで SOTAの学生が制作した白傘を使ったアイコニックな作品展示もありました。組み重なった傘は日中は強い日差しから身を隠して読書などが楽しめるシェルターとなり、夜は発光する光のクラスターへ変化します。建物上方からのムーンライト照明がドラマチックに空間を演出をしています。
スタジオミウさんによる夏祭りを感じさせる風車の作品や、日本人小学校の子供達による手作り行灯が会場を彩りました。
こうして 2 日間のイベントは大盛況のなか終了しました。半年間に渡る企画と準備、そしてイベント当日の大混雑と突然の豪雨にも挫けずに最後まで乗り切ってくれたシンガポールのスタッフの皆さん、大変お疲れ様でした。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。 ( 池田 俊一 )
会場協力:School of the Arts
協力:
Krislite Pte Ltd
Griven S.r.l
Studio Miu Art
The Japanese School. Primary School Changi Campus 4-4
SOTA の学生による傘と光のインスタレーション
夏祭りをイメージした風車のインスタレーション
日本人小学校の子供たちによる手作り行灯
忍者の格好のスタッフも一緒にイベントを盛り上げました
スタッフ集合写真
第 49 回街歩き:虎の門ヒルズ
~東京新名所!?トラのもんの街のあかりをウォッチする~
2014.08.29 三宅博行 + 東悟子
夏休みもおわりに近づいた 8 月 29 日、東京の新名所「虎の門ヒルズ」で街歩きを行いました。最新スポットの照明環境はどうなっているのか、30 名を超える団員が集まり、華やかな装いの施設に興奮しながらの街歩きとなりました。
今夏誕生した新しい東京の観光スポット虎の門ヒルズ。その照明環境はどのようになっているのか、新しいことがおこっているのか、調査してきました。
虎の門ヒルズ外観。 落ち着いた雰囲気が好印象
■ホテル
虎ノ門ヒルズは超高層ビル一棟型の再開発ですが、多くの同型のプロジェクトと同様、最上階にはエリア全体のイメージを左右するホテルブランドが入居しています。ホテルアンダーズ東京のエントランスからレセプションフロアまでを最初に見て回りました。
一階にあるホテルエントランスは小さく、車寄せに比べて非常に照度が抑えられており、ある程度知っている人でないと見過ごしてしまいそうなほど。
明るさにメリハリをつけることでホテルと外界とが切り離された世界であることを印象付けていました。左右の壁面には白熱電球がクリアのグラスの中に納まるように設置されていて、電球が直接見えているデザインとなっていました。しかし、十分に調光されているため眩しいということはなく、空間が非常に低い色温度の光に包まれている感じがしました。
ただ、グラスのカットによって光条が壁に鋭利な模様を描いており、もっと柔らかい印象のほうが似合う気もしました。
ホテル廊下
エレベーター内部
エレベーターに乗ると、奥には和紙を立体的に形作った繊細なアートがあり、その陰翳を最大限に活かすように光が左から伸びてきています。和紙と光と言えば透過してくる行灯のような光を見慣れているため、この見せ方は非常に印象に残りました。
レセプションフロアでは、障子のような光が床の高さで柔らかく広がっていました。高天井のモダンな空間なのですが、随所にある和を感じさせる要素のおかげで、どこか見覚えのある空間になっています。レセプションカウンターの細木細工なども、間接照明で美しく照らされてます。それだけに、所々で非常に強く出てしまっているスカラップが残念に思われました。(しかし壁への割り付けも合わせてあることから、意図的なものかもしれません。)
客室エリアには今回はお邪魔できませんでしたが、それ以外のエリアは全体的に、ホテルの高級感を演出するのには少し明るいかなとも感じました。しかし、全体的には眩しかったり主張しすぎたりするような光は無く、和のテイストを取り入れた落ち着いた雰囲気で構成されていました。 ( 三宅 博行 )
つよくでているスカラップが残念
ホテル 51 Fからの眺望
■虎ノ門ヒルズ低層部の商業エリア
低層部南面の2階アトリウムは 3 層吹き抜けで、昼間は高さ 18m のカーテンウォールから自然光が降り注ぎ、開放感のある居心地の良い空間です。
夜間の地明かりは、同フロアにあるレストランやバーのベース照明と演出照明、3階・4階の飲食店やバルコニーから落ちてくる光、植栽をライトアップしているバウンド光が担っていました。
階段降り口の床面照度は 15 ルクス程度で(色温度 3400K)、ゆったりと落ち着ける大人の光空間となっており、メンバー一様に高評価でした。一方、店名を示した白いサインや風除室上方の天井面の白い光だまりには周囲との輝度バランスを求める声がありました。
低層部北面の2階及び3階のオフィスロビーに接してカフェやレストラン、ショップがあります。
3階フロアでは業種の異なる5店舗がトータルコーディネートされており、殊にコンビニエンスストアでは照明器具の存在を感じさない、心地よい光が設えてありました。入口近くの机上面照度は 400 ルクス程度(色温度 2800 K)で、従来のコンビニの光とは全く異なる光環境であり、つい長居しそうな空間でした。新鮮な情報やカルチャーを提供する新しい形のコンビニでは財布も緩んでしまうでしょう。
同ビルには他にもドイツビアパブやアジアンダインニング等、居心地のよい光の店舗が多数ありましたので、またゆっくり行こうと思います。 ( 古川 智也 )
アトリウム。 開放的で心地いい空間
照度が低くおさえられたコンビニエンスストア
夜の音楽イベントなどが開催される。
■全体の感想
印象的な影
エスカレーター付近
ビル内は、ONとOFFを区別するかのようにその明るさや雰囲気もはっきりと分かれている空間でした。オフィス側は明るめで仕事のやる気を起こさせ、レストラン側やホテル内は落ち着いた雰囲気といった印象。そんな中でも、数々の工夫がされていますが、参加されたみなさんの意見は人によりさまざま。感性で判断の分かれる照明の灯りはやっぱり難しい、そんな印象を持ちました。
個人的にはオフィス側の明るさはちょうどよいと感じましたが、所々ちょっと意図がわからなかったり、間接照明なのに、器具が丸見えだったりする、どうかなと思うような照明もありました。
対してレストラン側は、ちょっと暗めの印象。ホテルも落ち着いていて、大人の雰囲気です。とらのもんがいて、子連れに優しいと思いきや、全体的には暗めで子供を連れてくるような場所ではない感じがしました。
ヒルズ外回りの照明ですが、階段は器具の工夫で影を作ったり、水中の器具は星型になっていたり、さまざまな工夫がされてるのが印象的でした。レジテンスの入口は、オフィスの人込みから離れ、ひっそりとたたずむような気配が落ち着いた雰囲気を醸し出しており、好印象でした。 ( 坂口 真一 )
あまり広くない施設でしたので、街歩きの1.5 時間を持てあますのではないかと思っていましたが、参加されている皆さん細かくチェックされており、あまりに集中していたせいなのかはぐれてしまう方が多数でました。皆さんの虎の門ヒルズに対しての期待度が高いのだなと感じた今回の街歩き。前回の中央線沿線街歩きから懇親会でも簡単なレビューをすることになり、歩いたその日に感想がきけるので、より新鮮なコメントがきけるようになりました。
またサロンには参加できない方も、ただ歩くだけでなく、座って意見交換をじっくりできるので、このスタイルはしばらく続けてみたいと思っております。 ( 東 悟子 )
様々なアイテムが仕込まれている。
好きな個所、 嫌いな個所を、 議論中
1Fホテルエントランス部分
階段での集合写真
第 41 回研究会サロン@照明探偵団事務局
2014.09.08 東 悟子
8 月末に行われた虎の門ヒルズの街歩きレビューを開催。施設の関係者も出席しての意見交換の場となり、有意義な会になりました。
8 月 29 日に行われた虎の門ヒルズの街歩きレビューを行いました。施設関係者も参加頂き、他の参加者の質問に丁寧にお答えいただくことができました。いつもは疑問があっても直接関係者に聞く機会がないので、とても貴重な機会となったのではないでしょうか。
各班の発表スライド。 細かく写真撮影を行い、 照度も測定。
各自のコメントもたくさんいれて頂いています。
今回のサロンで多かった意見は、虎の門ヒルズは、照明デザイナーがはいって照明計画がされているので、全体として心地の良い照明空間になっているという意見。コンビニエンスストアの照度や色温度が抑えてあったり、アトリウムや共有部も均一に明るく照らされているわけでなく、落ち着いた空間になっているというような好意的な意見が多く聞かれました。内照式の看板の輝度が高くなく見やすいという意見や入館ゲート、消火器のマークが目立ちすぎずよかったという意見も。反対にエスカレーター部分の照明が暗い、壁面にあたっている光が気になるという感想も多数あり、これに対して施設関係者は、そのような声がすでに上がっており、対応を検討している状況と説明されていました。共有部と店舗との色温度の差が気になるという意見や、ダウンライトの数が多いという辛口なコメントもあがり、関係者の方は、まだ調整すべき課題はあるが、順次改善していきたいとのことでした。
施設全体を通しては、明るいところと暗いところの狙いがはっきりしていて、機能性と快適性がうまく調和されているのではないかというのが概ねな意見だったように思われます。またさまざまな光の演出がみられて楽しいという感想も多く上がり、全体的にはとてもいい評価が多かったように感じました。
今回の虎の門ヒルズのように大型の施設は周辺の夜の景観に大きく影響してくるので、考慮して開発していくのが大事なのではないか、という意見で最後は締めくくられました。
今後周辺の道路の整備も進み、ますます照明環境も整って行くかと思いますが、たくさんの光の要素を持った虎の門ヒルズが夜の景観づくりの担い手となりさらに開発が進んでいくのではないかと思います。 ( 東 悟子 )
和やかな雰囲気ですが、 辛口なコメントも。