発行日:2019年3月19日
・照明探偵団倶楽部活動1/Sea the Light @ Street of Clans (2019/03/08-03/10)
・照明探偵団倶楽部活動2/第63 回街歩き:目黒川桜ライトアップ(2019/03/25)
・照明探偵団倶楽部活動3/第61 回照明探偵団サロン(2019/04/17)
Sea the Light @ Street of Clans, Bukit Pasoh Road, シンガポール・デザイン・ウィーク
2019. 3. 8 -10 Sherri Goh + Niken Wulandari Sutanto + Quratuaini Bte Jamil + Tang Chia Xing

ブキ・パソ・ロードに繋がる路地裏
シンガポール・デザイン・ウィークは3月4日から17日まで開催され、「ブレインストーム・デザイン・フォーラム」や「国際家具見本市」、デザインと歴史を辿るヘリテージ・トレイル、地区活性化プロジェクト、クラフトマーケットなどが主な見どころとなりました。
ブキ・パソ・ロードで展開された「ストリート・オブ・クランズ(一族の通り)」は、人々、歴史、そして文化を繋ぐ「Empower my Community(コミュニティに力を)」というイニシアチブの一環です。クランと呼ばれるシンガポールの民族の多くは、かつて海峡植民地の一部であったこの通り沿いを定住地と定め、シンガポールにやってきたばかりの移民たちを家族のように支えてきました。
今回のイベントの照明のコンセプトは、深い海を渡り、未知の土地へと旅をしたクランの人々の道のりと経験から着想を得ています。「Sea the Light」は、静寂に包まれた深い紺色の海を漂う感覚を表現した照明インスタレーションです。夜の冷涼な空気の中に灯る温かなランタンが、人間と自然の関係を橋渡ししています。

ガン・クランの紹介
照明探偵団は、ブキ・パソ・ロードの小さな一角をその場所を人々が夜に思わず足を運びたくなるような、インタラクティブで心躍る空間へと変貌させました。
路地は、波の動きのようにかすかに揺らめく海のような青い光に包み込まれ、同時に開催されたワークショップでは、参加者が自分だけのオリジナルランタンを制作し、イベント期間中に他の作品と一緒に展示するという形で、参加者も照明インスタレーションの一部へと。会場を彩った数々のランタンは、訪れる人々を温かく迎え入れるような、どこか懐かしく心地よい雰囲気を作り出しました。

Martin社の機材を用いた照明プログラミング

自分たちの作品を自ら展示する参加者の皆さん
このコンセプトを実現するために、照明探偵団はシンガポールの照明メーカー各社と協力し、準備から設置までの全工程において多大なサポートをいただきました。イベントの数週間前から、Martin Lighting by Harman社および遠藤照明社との調整を開始し、本番に向けてすべての照明器具が確実に使用できる状態を整えました。限られた準備期間や会場における様々な制約はありましたが、イベントに対する我々の情熱と高揚感に後押しされて、無事にインスタレーションを完成させることができました。

海に浮かぶランタン

光と影によって浮かび上がってくる水
イベントに先立ち、会社内でセッションを行い、会場のベースとなる雰囲気作りとインスタレーションのプレビューを兼ねて、50個のランタンを制作しました。
また、照明器具を固定するためのディテールにも工夫を凝らしました。オフィスで不要になったスツールを固定台として再利用し、これらすべてを自社内で製作しています。これは、デザイン・フェスティバル全体のテーマでもある「アップサイクル」を支持し、体現するための取り組みでもありました。

ワークショップに参加する子供達
イベント当日にはこどもワークショップも開催し、地元の皆さんにランタン作りを体験していただきました。テーブルには、色とりどりのトレーシングペーパー、黒の画用紙、マーカー、色鉛筆、ハサミなどの工作道具、また今回のフェスティバルのためにデザインされた特製テンプレートも用意し、それらを自由に使って描いてもらえるようにしました。実際に始めてみると、参加した子供たちがテンプレートに縛られることなく、自分の好きなテーマや対象を自由に、そして想像力豊かに描くことを好むことに気がつきました。それは私たちの当初の想定や意図とは少し異なるものでしたが、ワークショップは大盛況で、非常に喜んでいただけました。子供たちは自分たちの作品の出来栄えにとても満足気で、多くの子が「家に持ち帰って飾りたい」と言い出すほど。しかし、そこをなんとかお願いして、海のような青い背景の中に黄金色に輝く路地の階段へと、彼らのランタンを展示させてもらいました。我々にとって、この光景はまさに地元の若い芸術家たちの「想像力の海(SEA OF IMAGINATION)」を象徴するものであり、イベントの成功を実感することができました。
イベント当日は、当社のスタッフのみならず、協賛会社の方々までボランティアとして駆けつけ、運営をサポートしてくださいました。ワークショップの設営が整うやいなや、人々が次々と集まり始め、1日を通して子どもから大人まで幅広い層に好評を博し、一時は用意していた座席が足りなくなるほどの盛況ぶりでした。参加者の方々が落ち着いて、そして我々スタッフからの十分なサポートのもとで制作に取り組めるよう、途中で新規の参加者の数を制限する場面もしばしば。事前にオンライン予約を受け付けていたものの、当日の参加者の多くは、照明のセットアップやワークショップの賑わいに惹かれて立ち寄った方々でした。参加者の皆さんは、ワークショップで自分だけのランタンをデザインし、今回のテーマ「Sea the Light」に合わせて、路地の好きな場所に自分の作品を飾るという形でインスタレーションに参加しました。
最後になりますが、機材提供をいただいたHarman社、Martin社、遠藤照明社、ワークショップ会場を提供してくださったKadampa Meditation Centre、そしてこの参加の機会をくださったOuterEditおよびシンガポール・デザイン評議会に心より感謝申し上げます。(Sherri Goh)
第 63 回街歩き:目黒川桜ライトアップ
目黒川沿いの桜のライトアップを見に行こう!
2019.03.25 小口尚子 + 太田高志 + 石川新 + 東悟子
都内でも人気のお花見スポット目黒川。今回の街歩きではルートを中目黒→目黒、五反田→目黒の2つに分けて、それぞれ桜をどのようにライトア ップしているかを探りました。
ライトアップすることにより桜の魅力が増しているのか、お花見するのにいい演出となっているのかを調査。また周辺の環境には光害などの影響を与える危険性はないのかを考察しました。

色温度が高い白い照明でライトアップされた中目黒周辺の桜
Team 1 (東急東横線中目黒駅→ JR 目黒駅)
中目黒から目黒にかけて街歩き。中目黒駅周辺の目黒川はライトアップ自体もさることながら、屋台や飲食店からの光も活気があり、また桜に対しては高い色温度(6500K)の投光器でしっかりとライトアップされていました。色温度については議論がありましたが、色温度が高いことで花びらの白さを印象的に見せていたように思います。ただ設置場所によっては歩行者の目線に刺さり眩しく感じました。ライトアップの傍ら無数の提灯も延々と連なっており、賑やかで華やかな桜の季節を演出していました。また街路灯が少ない道の安全性を提灯が確保している箇所もありました。目黒方面へ進むと駒沢通りを境に投光器でのライトアップはなくなり提灯のみとなり、隣接する飲食店の自主的なライトアップが時々見受けられるのみとなります。店舗壁面からスポットライトで照射したりポータブルの投光器を設置したりとそれぞれの工夫がありましたが、やはり地面から照射しているのは眩しく感じました。
桜のライトアップが主役とすると、低木に常設されているイルミネーションや街路灯、輝度の高い看板、オフィスの白い明かり等は犯罪者の要素を感じます。その対策として、運営や安全面を考えると難しい課題があるとは思いますが、ライトア ップの時期だけはタイマー制御にしたり街路灯自体にライトアップの機能を持たせる等の改善案が上がりました。
目黒川のライトアップは見に来る人の期待感や特別感が強いので、桜がライトアップされていればそれだけで盛り上がる雰囲気はありました。だからこそ、街灯の計画や店舗などの周りの環境によ って桜の見え方が変わるのもよくわかりました。提灯は近くで見ると特別に美しいものではないのですが、連なっている景色はとても綺麗で、更にその提灯が水面に映る景色が一番印象的で美しいという意見が多く、真の英雄は水面なのではないかという結論に至りました。 (小口尚子)

行灯の光源を確かめる団員達/span>
Team 2(東急東横線中目黒駅→ JR 目黒駅)
2 班で話題になったのは3点。桜は何色の光でライトアップすべきか、目黒川で目立っていた提灯は必要か、桜をどのように当てるのが正解か。まず 1 つ目の色に関しては、色温度の低い電球色で当てるのがいいのか、それとも日中の色温度に近い昼光色で当てるのがいいのか、少し赤みを帯びたピンク色っぽい色を当てるのがいいのか、意見が分かれました。電球色だと桜の色の再現性に欠けるということで、演色性の高い昼光色を好む意見が多かったように感じます。ただ周りの出店や提灯が電球色だったので、遠景から見て統一感があるのは電球色なので電球色が好ましいというメンバーも。
2 番目の提灯に関しては外国人観光客にとっては日本らしさやにぎやかさの創出に寄与しており、好まれるかもしれませんが、主役である桜より目立っており、少しうるさいという意見も出ました。 3 番目の照明手法ですが、中目黒駅近辺のライトアップは川の両サイドの手すりに長方形の照明器具が取り付けられ、桜の枝先を広範囲に照らしていました。地面に置かれた照明や店舗横に取り付けられたスポットライトで人の目を指す挟角の照明より少し高い位置から広範囲に照らし上げるものが好まれていたように思います。
街歩きを通して一番好印象の声が上がっていたのは水面にうつる提灯のあかりでした。やはり桜を差し置いてという感じはしますが、桜と水面に反射するあかりが幻想的な景色を作り出している景色は見る人の心を打つようです。
一長一短がある桜のライトアップですが、結局のところほんの束の間の桜の開花を友人や家族でにぎやかにお酒片手に楽しみたい人にとって桜がどんなふうに照らされていても、非日常的空間にな っていれば楽しめるではないかと思いました。 ( 東悟子)

目黒川沿いのお店が独自に設置した照明があちこちに

往来客にはまぶしすぎるスポットライト
Team 3(JR 五反田駅→ JR 目黒駅)
3 班は JR 五反田駅からかむろ坂・目黒にかけて街歩きを進めました。
始めは目黒川、住宅街にそって街歩きを進めていましたが、桜のライトアップがされておらず暗か ったため、目黒川から少し離れて、満開のかむろ坂桜並木のライトアップを鑑賞。桜の木が一本一本、白色LEDの光で照らし上げられて桜のトンネルが遠目でも認識でき、非常に綺麗に見えました。その一方で桜の木に近づいてみると、ライトアップのための仮設支持物が木に沿って建てかけられ、デリケートな木を保護しているかと思いきや、隣の木まで電気配線されており、多くの荷重を掛けていたことが非常に残念にでした。またフラッドライトの据付け位置が適切でなく、幹を不必要に照らしていて、残念ながら英雄の光と言えるものではありません。照射方法の改善の余地が多いと思いました。
しかし太鼓橋付近では、目黒川のぼんぼり(20W白熱ランプ)の桃色面を通過した温かい光によって照らされた桜の花が暗闇に慎ましく、薄紅色に光って、風情を感じました。また、川面に写りこんだぼんぼりのオレンジの光が揺らいでとても美しく英雄だと感じました。今回桜が咲いていなか ったので分かりづらかったのですが、桜が綺麗に照らされるのは提灯のおかげもあるのではないかと思います。
街歩き終盤の目黒新橋ではたくさんの眩しい照明を発見。親柱の 4 面に取り付けられたレトロな形状のブラケット照明は乳白カバーで覆われているものの、輝度が高く、不快グレアを出していました。目黒新橋につながる権之助坂商店街歩道では、天井にデザイン配置されたアーケード照明の白色光が、昭和の昔ながらの雰囲気が残る飲食店街をリズミカルに明るく活気づけているという意見がある一方、数多くの蛍光灯の照明がとても眩しいという感想もありました。
今回の街歩きでは、思った以上にライトアップがされておらず、暗闇が多いと感じましたが、それとは反対に多くの英雄の卵が存在していると感じました。 (太田高志)

目黒から中目黒方面見た様子 桜はライトアップされていない

水面に写る提灯の光 _ 英雄
Team 4(JR 五反田駅→ JR 目黒駅)
4 班は、3 班同様に JR 五反田駅から目黒駅までの目黒川沿いを街歩きしました。五反田駅を出て少し行くと “さくらまつり” と書かれたのぼり旗が並んでいました。すぐに川沿いには行かずに桜伝いに歩いて行くと、学研の東京本社があります。学研前の並木を照らすライトが1つだけ暖かい色になっており班員での議論が始まるいいキッカケになってくれました。
五反田周辺の目黒川沿いは三月下旬でも桜が咲いておらず、提灯のみで桜のライトアップはされていませんでした。しかし、だからこそ気付けたこともあったと思います。川沿いのマンションの常設灯は、普段ならいい照明 ( 英雄 ) かもしれないが提灯の暖かい光との相性は良くないもの ( 犯罪者 )でした。また、常設灯が桜の枝を邪魔しているようなところも見受けられました。照明は一度設置したら終わりではなく、設置した後もどのように人々の生活や周辺の環境に関わっているのか見届けることも重要なのだなと考えさせられました。今回私は街歩き初参加でしたがとても楽しむことができました。参加者は様々な所属の人がいて、各々の視点を持ち感想も多種多様で、同じ照明でもいろんな見方が出るのだなと感動しました。また、普段自分は照明を仕事や研究対象にしているわけではないので圧倒的に知識不足も感じました。照度がよくわからないので定量的な判断を下すのは難しかったですが、定性的ながらも光を感じ取り英雄と犯罪者の判定はできたかなと思います。街歩きで特に気になったのは照明の統一感と環境への配慮です。今後街を歩く際にはその点に注意して見たいです。 (石川新)

昔ながらの面影が残る商店街 花見後に寄りたくなる雰囲気

熱心にメモをとる団員
第 61 回照明探偵団サロン
目黒川桜ライトアップ街歩きレビュー
2019.04.17 細野恵理奈
花見シーズンも終え、ようやく暖かさが到来した4 月 17 日、目黒川桜ライトアップの街歩きレビ ューが行われました。
団員達の多くが英雄と認めたのが、桃色の提灯の連なりが映り込む目黒川の水面。上ではライトア ップされた桜の枝や花が揺れ、水面では灯りがゆらめく様子が幻想的で美しかったとの声が集まりました。しかし、それらを照らす投光器や光の色味、ライトアップを取り巻く環境については、多くの賛否両論が上がりました。

桜は何色でライトアップするのがいいのかの議論が白熱
桜まつりの主役である桜のライトアップの色味について、まず議論が三分。「目黒川といえば白い桜」の期待通り、白色の光で照らすのべきとの意見や、電球色がよいという意見。また、「花見はお酒が目的なので、もはや何でもいいのでは?」という正直な意見も。赤の演色性が高い光源を用いて、淡い桜色を生かした照明を試したいという声には、皆同意しました。
桜を照らす投光器については、大多数がグレアを指摘。特に目黒川周辺の店が自主的に設置していた投光器について、水平に照射することで対岸への強いグレアを発生させていた例や、軒先から床置きで桜を照らそうとして歩行者を容赦なく照らしていた例に犯罪者認定が集中。しかしながら、自主的にライトアップしようとする行為自体は英雄だとして皆で称えました。
次に、目黒川沿いに並ぶ提灯については、桜色の淡さに対してピンクの色味がきつすぎるという意見も。一方では、その色がお祭りの雰囲気を演出していたり、桜をほんのり桃色に染めたりするので欠かせないとの意見もありました。光源は、 20W の白熱電球と LED 電球の 2 種類があり、提灯の暖かさや風情を感じさせる白熱電球に高評価が。点光源で白さと輝度が悪目立ちしていた LED電球ですが、電力を考えて LED 化すべきという声も。団員が一列に並び、提灯をひっくり返して電球チェックをしていた様子については、「傍から見れば私達が軽犯罪者では?」というコメントも出ました。提灯のピッチに関しては、密に設置した方が水面への映り込みや遠景が綺麗だとする声の一方、桜の花が未開花の箇所では、遠くからは「工事現場の三角コーンや高速の渋滞に見える」ため犯罪者だとする指摘も。

新メンバーも臆せず、独自で調査した内容を発表

解説を加える面出団長
周辺環境では、高輝度の白色の街灯やオフィス照明が、桜祭りの雰囲気を壊すとして糾弾され、ライトアップの時間帯は遮光するなどの配慮を欲する声も。桜のライトアップに対しても興味を持っている店とそうでない店が混在しているため、町に対してもっと働きかけを行うと、全体の統一感が増すのではとの声も出ました。
その他、五反田から目黒へ向かった班から「桜のトンネル」で有名な「かむろ坂」の紹介が。桜が目線より高い位置からライトアップされ、グレアフリーの夜桜を楽しめたという声の一方、投光器の取り付け位置が不適切で、幹を途中で分断するような鋭い光が照射されているなど、改善の余地が大きいとの意見もありました。
桜以外の照明環境もシェアされました。権之助坂商店街では、天井に配置された蛍光灯が、昔ながらの通りをリズミカルに活気づけているという見方があった一方、テトリスのような蛍光管が非常に眩しく、終電間近に化粧をした姿では歩けないという切実な声。その他、ある個人宅の玄関用照明でしだれ梅が球状のランプに覆いかかる姿や、オフィスビルの本棚照明が好評を集めました。また、雅叙園 1F のラウンジ空間は、種類豊かなデコラティブ照明や間接照明、ダイニング内の暖炉などから全体の明かりが構成され、光のレイヤーが幾重にも重なる空間として絶賛されました。
各班のプレゼン後には、弘前桜まつりや千鳥ヶ淵など、全国の夜桜の名所の紹介も。さらに京都から参加した団員が二条城や祇園白川のライトアップの様子を紹介し、街灯として機能する暖かみのある行灯、風情ある町並み、すべてが調和のとれた様子に、皆から歓声が。最後には団員のひとりから「桜の色を魅せる照明の考察」というミニ講義が行われ、桜の色が最も魅力的に見える照明手法の解が導かれました。
次回は 7 月に2階建てバスで首都高を1周する街歩き ( 走り? )。首都高からの夜景はどう見えるのでしょうか。乞うご期待ください。



















