探偵ノート

vol.11 上・中・下のライトアップ ~MM21・オフィスビルの外観~

Update:

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超高層ビルの外観照明には手を焼くことが多い。建築のデザインもただ単純な墓石のような物でもまずいので、いろいろと表情のアレンジを試みるわけだが、結局ガラスのカーテンウォールは、夜のビル外観を画一的にしてしまう。ガラスのファサードを光で照らしあげてもエネルギーが無駄なだけ。第一とんでもなく高照度なオフィス内部の照明は、夜の外観を整える暇も与えない。一体どうすりゃいいんだ。

昨今の照明デザイナーは超高層ビルの外観を[上・中・下]に分割して考える癖がついている。つまり、上=スカイラインとの接点のビル頂部、中=半ば諦めかけたオフィス階、下=人間性重視の低層階足周り、という三種類の部位について照明デザインの苦労をすることになる。また、時には美しい夜のランドマークを作るために[遠景・中景・近景]という眺められ方の理屈を付けることがある。しかし多くの技を労してさえも、超高層ビルの足元から頭の先まで全部が美しくはならない。オフィス照明の光洪水と、夥しい数の航空障害灯の赤い光のせいである。 今回の酒の肴は横浜MM21地区にできたばかりのクイーンズスクエア横浜の外観。ランドマークタワーからパシフィコ・国際会議場までの間に3棟の連結超高層ビルが並んで、巨大な壁のように見える。スカイラインを演出する頂部の光はなかなかだ。階段状に配置された3棟の頂部を水平に縁取るライン照明。流れるような光のラインは遠方からも印象的だ。そして低層部には、飲食を楽しむ人達のために白熱色の温かいあかりが充満している。仮設遊園地の電飾乗り物も賑わいを作っている。

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しかし問題はその上下を結ぶ真ん中の照明だ。ここだけはビカーっとしていて、霞ヶ関や丸の内のブロイラーオフィスとなんら変化はない。超高層の先輩、米国の諸都市では、こんなにまで高輝度な蛍光灯に苛まれることがない。反射ガラスのカーテンウォール、グレアレスの蛍光灯器具、適正な低照度、などがオフィスビル中層部の外観をおとなしくさせている。 日本の超高層ビルの中層部は問題だ。ダルマ落としでひっこ抜きたい。


面 出 探偵A 探偵B 探偵C
あかりの味/雰囲気や気配のよさ 3 4 2 3
あかりの量/適光適所・明るさ感 2 3 3 4
あかりの値段/照明設備のコストパフォーマンス 3 3 3 3
あかりの個性/照明デザインの新しさ 3 3 3 2
あかりのサービス/保守や光のオペレーション 2 3 2 2
合 計 13 16 13 14
総合評価 ★★
(14.00点)

1項目5点が最高、合計25点満点。★は5つが満点


あかりのミシュランは、雑誌「室内」に連載されました。
面出 薫+照明探偵団/文  淺川 敏/写真

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