Singapore Archifest 2025
2025.07.18 Josephine Kwan
シンガポールで毎年開催される建築フェスティバル“Archifest 2025”に招待いただき、街歩きを開催しました。今回の街歩きの舞台となったのは、イーストコーストに位置するKatong-Joo Chiat地区。この地区は、豊かな歴史や文化遺産、活気ある食文化、そして進化し続けるライフスタイルで広く親しまれているエリアです。

■はじめに
シンガポールで毎年開催される建築フェスティバル“Archifest 2025”。その一環としてKatong地区での街歩きを主催しました。
建築業界関係者と一般の方を合わせた合計30名で、2つのルートに分かれ、このプラナカン文化の街並みの夜の魅力を探して歩きました。この地域独特の個性と変わらぬ美しさは、今も多くの人々の心をとらえ続けています。
■街歩きエリアの背景
20世紀初頭、裕福なプラナカンコミュニティの人々は、Telok AyarやAnn Siang、Tanjong Pagarなどの混みあった都心エリアから郊外へと移り始めました。彼らはより静かで広々とした住宅地を求め、特に土地が手頃で海も近くにあるKatong-Joo Chiatのイーストコーストエリアに目を向けました。
Joo Chiatでは、プラナカンたちが特徴的な建築様式を取り入れた住宅やショップハウスを建てました。装飾的なファサードタイル、鮮やかな色彩、精巧な木彫り、花模様などが特徴です。これらの住宅の多くは、家族の住居であると同時に、ビーズ細工のアトリエやベーカリー、日用品店などの小規模な商売の場としても使われていました。
プラナカンの家族が増えるにつれて、Joo Chiatは活気ある文化的な街区へと発展。寺院やコピティアム(コーヒーショップ)、仕立て屋、屋台などは、豊かなニョニャ文化を映し出していました。また、祭りや結婚式、各種の儀式が街や家庭を彩り、色とりどりの光景や香り、歌声であふれていました。
■建築物とストリートアート
Joo Chiatは色彩豊かなプラナカン様式のショップハウスが立ち並ぶ街として広く知られています。特にKoon Send Road沿いには、パステルカラーの外観や細やかなセラミックタイルが並び、中国・マレー・ヨーロッパ文化が融合した独特の雰囲気を感じられます。
またこの地域には、Grafunktのショールーム、Red Houseショップハウス、Sri Senpaga Vinayagar寺院といったアールデコ様式のランドマークも点在しています。
フォトジェニックな街並みと濃厚なプラナカン文化の魅力で、SNSで一気に人気が広がったJoo Chiat。今ではライフスタイル系の撮影やインディーブランド、コーヒーカルチャーの発信地として注目を集めるようになり、若い地元の人やクリエイターたちがカフェやバー、そしてユニークなビジュアル背景を求めて訪れる人気スポットとなっています。

ショップハウス



■ 街歩きin Katong
7月18日金曜日、午後7時。Joo ChiatにあるArchiHouseに集まり、今回の街歩き企画をスタートしました。参加者の方々と一緒に夜のJoo Chiatの街を歩きながら、その光の魅力的なポイントや、改善できる場所を探して歩きました。
参加者は2つのグループに分かれ、この地区の多彩な商店や住宅街を巡りました。道中光の英雄と犯罪者を見つけたり、気に入った店先や飲食店の照明デザインをチェックしていきました。この体験を通して、Joo Chiatの鮮やかなプラナカンカラーが夜になるとどのように変化するのかが明らかになりました。照明によって引き立てられることもあれば、影に沈んでしまうことも。
Mayumi率いるチームでは、こうした文化的特徴の強い建築物に本当に照明が必要かどうか、議論が交わされました。アクセント照明によって訪問者を増やせる可能性がある一方、住宅地の静かな日常のリズムを乱してしまうかもしれません。チームはまた、Joo Chiatの細い路地の多くが薄暗いことにも注目しました。ここは活用の余地があるかもしれませんが、本当にそれが必要かどうかはまだ議論の余地がある、という意見でした。
一方Tan率いるチームは、明るく照らされたファサードに出会いました。目を引く一方で周囲への光漏れが目立っており、その光の強さが過剰だと感じる参加者もいました。この体験を通じて、有名な建築も照明の扱い次第でさまざまな印象に変わることが分かりました。








この街歩きでは、さまざまな照明の実例を見ることができました。シンガポールの都市照明ガイドラインに沿ったものもあればそうでないものもあり、それらが入り混じった結果、夜の街に豊かな表情を生みだしていました。ある場所では昔の記憶がよみがえり、参加者たちはJoo Chiatのかつての姿や、その変遷、現在の姿に至るまでの変化について語り合っていました。
街歩き後はArchiHouseに戻り、それぞれの気づきや感想を共有しました。このセッションを通して、照明がJoo Chiatの独自性を表現するうえで重要な役割を果たし、街の夜景の印象を形作ることが改めて確認されました。
照明探偵団のウェブサイトでは、これまでのイベントの様子をご覧いただけます。また、今後参加できるイベント情報も随時お知らせします。次回の街歩きで皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!(Josephine Kwan)
