街歩き・サロン

第30回照明探偵団街歩き 月明かりの庭 – 横浜・三渓園 街歩き

2006年10月6日

夏の暑さも忘れた10月の初旬、照明探偵団は横浜本牧にある三渓園へ行った。今回の目的は、三渓園で行われる観月会、つまり月見だ。日本古来の民俗行事である月見を通して、月光を体感しようという計画だったのだが、当日の天気はあいにくの雨。それでも夜に晴れれば良いだろうという楽観的なムードで、意気揚々と目的地へ出発したのだが…。

嵐の三渓園

街歩き2006:月明かりの庭 - 横浜・三渓園 報告
暴風雨庭園内遊覧之図

街歩き2006:月明かりの庭 - 横浜・三渓園 報告
面出団員による緊急レクチャー

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三重塔に寄添う月

総勢22名の団員は電車とバスを乗り継ぎ、16時頃三渓園に到着。三渓園は、京都や鎌倉など日本各地から移築された重要文化財建造物12棟を含む、17棟の建築物が、広大な敷地の起伏との調和を考慮して配置された開園100年の由緒ある日本庭園だ。この日は、十五夜に合わせて夜間の入園が可能となっていた。ところがこの日の午後、運悪く伊豆諸島沖で停滞していた低気圧が発達。遊覧するにも一苦労の暴風雨となった。当然園内には団員以外は見当らなかった。傘を裏返され、下半身に雨水をたっぷり含ませて、園内を回ること小一時間。最初は常軌を逸した状況に興奮気味だった団員の顔にも疲労が見え始め、日没にさしかかった頃に月夜の庭園を諦めるのだった。

探偵団初の緊急企画

自然の厳しさに、探偵魂と体温を低下させた団員は、鶴翔閣へと集った。鶴翔閣は園内にある茅葺き屋根の住宅建築で、三渓園の主、原三渓の邸宅だったものが一般にも利用できるようになった施設で、岡倉天心、横山大観といった芸術家が創作のために泊り込んだというなんとも文化的な場所だ。団員達はまず、大正独特の和風ロマンを感じる部屋で、空腹を満たした。当初の計画では、食事後に夜の庭園を撮影する予定だったが、天気はこのありさま、満月の光を期待できるわけがなかった。そこで、事前に三渓園を下見したときに撮った写真のスライドショー、「月光」というテーマで写真を撮り続けている石川賢治という写真家の作品映像、さらに面出団長による「日本のあかり」と題したレクチャーの3本立てのメニューをもって緊急企画を催すことになった。この緊急企画は、このような事態を予想して準備されたもので、部屋の真っ白な漆喰壁にプロジェクションして行われた。そうして、なんとか波乱の街歩きは終焉を迎えたのだった。

日本建築と月

実は、下見の時も優れた天気ではなかった。しかし、夕刻が過ぎる頃、見計らったかのように雨雲は消え、そびえ立つ三重の塔に添うように月が出現したのだった。歓喜余って激写したのが右の写真だ。この時は満月ではなかったが、やはり日本建築と月はコーヒーと煙草のように相性がいいと思った。観月という行為が日本独特の風習であることからも分かるとおり、日本建築もまた月と深く結びついている。多くの寺院や楼閣に観月台があり、桂離宮は月の出る方向を消失点に遠近法を用いて設計されたと言われている。また、龍安寺石庭や京都御所の庭など、多くの庭園の砂に反射率の高い白砂を用いているのも月との相性だと考えられている。三渓園は周りが山に囲まれており光害がほとんどなく、肉眼で見える月の明るさは都会で見るそれとはわけが違った。とりわけ、夜間に油を灯して得られる明かりだけが頼りだった時代、月光は多くの人を魅了したに違いないと思うのだった。そして、月光鑑賞に優雅な悦びを覚えるという日本の文化に感覚の豊かさを感じたのだった。(服部祐介)

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