探偵ノート

第022号 – 光を教えるということ

Update:

テーマ:「光を教える」
Interviewer: 瀬川 佐知子

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身近にある光を敏感に感じることが重要

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光の三原色を体験する授業

瀬川:今日は「光を教える」ということについてお話ししたいと思います。

面出:瀬川さんはもともと私のゼミ生だったよね。教育という現場に興味があるのかな。

瀬川: はい、それもあるのですが、このテーマを選んだ一番の理由は私の母です。母は元教員だったので幼い頃からいつも「教育者」の身近で育ってきたというのもあります。 家にいる時は私たち姉妹の「母親」なのですが、他の子供たちからみたら「先生」なわけで、そういう2つの顔を見て育ってきました。 私は教育の道には進まなかったのですが、最近、仕事上で新入社員やアルバイトの人に教えることもあり、つくづく人に何か教えるということは難しいと感じているところです。面出さんは10年間武蔵美で教えて来られましたが、難しいと感じたことはなかったですか?

面出:私はあまり難しく考えてこなかったな。ただ私のゼミは「光のゼミナール」といってもゼミ生全員が照明デザイナーになりたい!というようなモチベーションを持っているわけではなく、10人中2、3人いればいい方。いろいろなモチベーションを持った学生たちを相手に、技術的に教えた方がいいのか、それとも感覚的に教えた方がいいのかというのは考えていたかな。

瀬川:特に光とはそのものには実態がないので、教えるのは難しいと思っています。 私は以前、ストックホルムの学校で建築照明デザインを学んでいたのですが、そこの教授はいつも光を大きく括った概念的な話からしていました。おもしろいお話だったのですが、学生の中ではもっと技術的なことを学びに来たのにと不満を持っている人もいました。

面出:光を教えるのはそこが難しい。もちろん、技術的なことを教えることは可能だけれども「照明デザイン」となると数値的なものだけでは頭でっかちになってしまう。 美大ということもあるのだけど、私のゼミでは「光を見ること、感じること」に重点を置いていた。まず自分の好きな光を感じさせて、その光が「どうなっているのだろう?」と興味を持たせるところから始めていた。光を教えるということは、まず光をいかに感じさせるかだと思うよ。

瀬川:今ならその言葉が分かります。ただ、実際に教えるとなると光は本当に難しいジャンルだと思います。 最近、照明デザインを教える学校やコースが増えてきたと思いますが、それでもやはり建築学科やインテリアの中の1コースでしかないことがほとんど。 実際、学生の中でも初めから照明デザインを学びたくてやってくる学生は少ないと思います。私もそうでしたし、面出さんも本で書かれていたように初めから照明デザインをやろうと強い志を持ってこの世界に入ったわけではないのですよね。

面出:私は環境デザインを学んできたのだけど、建築は好きだったし造詣も深かった。ヤマギワという照明メーカーに就職してから照明デザインというものを学び始めたけど、はじめは照明学会が出している技術書を読んだりして光学技術や照度計算の仕方とかを勉強していたよ。照明デザインを教えるものとしてはそのようなものしかなかった。

瀬川:もちろんそういうことも大切ですよね。私はあまり数字に強くないのですが、照明デザインをする上で感覚的だけでなく、ある一定以上の数学的根拠は必要だと思っています。 先程、面出さんが教えていたゼミ生の大半は照明とは関係ない世界に進んでいったということでしたが、結果的に照明デザイナーにならず主婦になったとしても、光を学んだということで日常生活の中でも少し光に敏感になってもらえばいいのではないですか。そういうことが積み重なって照明デザインのすそ野が広がっていくのが理想だと思います。

面出:そうだね。少しずつでも底辺的に照明の知識がある人が増えるといいよね。

瀬川:今後はどのような形で「光を教える」のですか。何か新しいアイディアはありますか?

面出:子供たちに光や影を教えたいね。数年前から照明探偵団で年に数回やっている「こどもワークショップ」はとても面白いので続けていきたい。これまでは主に小学生を対象としているのだけど、もう少し大きくなった中高生にもやってみたいと思うよ。アプローチはずいぶん変えないといけないだろうけどね。 それとは真逆にリタイアしたご老人なんかを集めて「こんなに明るい日本にしたのはあなたたちの責任だ!」と説教してみるのも面白いかもしれない。  

瀬川:それは新しいですね。

面出:最近は生涯学習できるところも増えているし「光の断食道場」をつくってみるのもいいかもしれないね。

瀬川:歳を重ねた人の意識を変えるのはなかなか難しいかもしれませんが、新しい挑戦ですね。こどもと老人に対しての光の教育ですか・・・。 私も教える機会が段々増えてきたのですが、いつまでも私自身が「光を感じること」を忘れず、好奇心を持って光を学んでいきたいと思います。 なるほど。何事もこなせるかどうかはモチベーションで決まるということですね。モチベーションは物事に興味があるかないかで決まると今までずっと思っていました。興味のないことを工夫して好きになり、つまらないと思うことを工夫して楽しくすること、これから違う角度から考えながら仕事と向き合ってみます。

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