「すみだ水族館」街歩きレビュー
2017.03.16 玉野有花
2 月に開催したすみだ水族館での街歩きをレビューするサロンを開催しました。すみだ水族館のテーマ“魅せる光・観せる光” になっていたかどうかを議論しました。
3 月16 日、春らしい食事とともに和やかな雰囲気の中、すみだ水族館街歩きのレビューがありました。すみだ水族館街歩きでは4つの班に分かれ、「観せるあかり」と「魅せるあかり」に重点を置き調査を行いました。街歩き後の懇親会でも調査結果の発表はありましたが、サロンでは各班の意見をスライドにまとめ、さらに深い考察が行われました。今回のサロンでは、エンターテインメント施設ならではの光の英雄が多くあった一方、「良い光がある分これは残念…」といった光の犯罪者の意見もありました。
まず、施設の世界観に引き込むための第一印象となるエントランスから最初の水槽にかけての階段は、英雄という意見が多かったです。海の中にいるようなゆらゆらした光が壁一面に映し出され好印象でしたが、階段で後ろを向くとプロジェクターの光が直撃。隠すのはなかなか難しそうな環境でしたが、対策が必要に思います。
魅せる光と観せる光のスコアシート
どの班でも評価が高かった水槽照明
東京大水槽を英雄の1位に
水槽には、海の生物の魅力を最大限に伝えるための工夫が凝らされ、この水槽が良かった、悪かったと様々な意見が出てきました。光の英雄の水槽としてはサンゴ礁、東京大水槽などが挙がりました。光の屈折、反射などの現象を上手く使うことで、光源が見えない状態で魚たちを観るための明るさがしっかりと確保されており、なおかつ幻想的な空間を演出していました。
光の犯罪者として挙がってしまった水槽では、水槽を照らす光が目に入ってしまう、不要な光のカットが必要との声が。企画展示で行われていたクラゲの水槽には賛否両論でした。しかし、水槽に関して全体としては良い評価が多かったのでは、と思います。
逆に、天井の照明やスロープのフロアライトなど、空間全体のあかりに対して光の犯罪者とする意見が多かったように思います。スロープのフロアライトでは、班全員で光源を隠し、ライトがない状態とどっちが良いか検証する班も。
すみだ水族館では日中と夜間では照明が変わり、違った雰囲気が楽しめるようになっていますが、夜を表した青い光には「良い雰囲気」「水族館のイメージとは一味違う」という意見の一方で、「魚やペンギンを見るつもりで来た人にとっては、見づらい」という意見がありました。
私としては、ペンギンたちの寝る時間と、人それぞれの水族館に来る人の目的(魚をじっくり見るため、良い雰囲気の空間を求めて、など)の両方に合う光はなかなか難しい、という印象です。夜だから青、というイメージが強すぎる、という意見があり、確かに現実世界の夜は青ではないと気づき、ハッとしました。イメージや思い込みとは怖いものです。
鑑賞物(水族館の場合、海の生物など)を照らすことに細心の注意が払われていると考えられ
る水族館で、光の英雄の多くに水槽が選ばれ、光の犯罪者の多くに展示空間全体の照明が選ば
れたことは、力の入れた箇所とそうでない箇所にはっきり分かれたのかな、と考えられます。
照明探偵団として、水族館を「ひかりの調査」という視点で見ることができ、「観せ」て「魅
せる」ことを考えた光の使い方や工夫、また問題等を観察することができました。(玉野有花)