第62回街歩き:渋谷川
ニューフェイス渋谷、~ダブルラインの光を探せ~
2018/11/16 古川智也+高野はるか+東悟子
開発が何年にも渡り続いている渋谷。今回の街歩きは9月にオープンした渋谷ストリームから出発。渋谷川沿いの遊歩道を渋谷ブリッジまで歩き“渋谷川再生への挑戦”を検証する街歩きとなりました。渋谷川と東横線跡のダブルラインの光を探せをテーマに街歩きの班を3つに分け、それぞれ歩行者、クリエイティブワーカー、都市環境の視点で見て回りました。
団長の説明に耳を傾ける団員達
青色のレーザー光で壁際の川面を照らされる渋谷川
■Team1(クリエイティブワーカー視点)
1班は、面出団長と初参加者4名を含めた全11名、「クリエイティブワーカーの視点」で感性を刺激・魅了されるような光を探して街歩きしました。調査ルートは、渋谷ストリーム→首都高速3号渋谷線高架下の国道246号横断デッキ→エクセルホテル東急→渋谷川沿い遊歩道→渋谷ブリッジ→マスタードホテルです。
渋谷ストリームは、吹き抜けや開口部が多く開放的で、照度が抑えられた居心地の良い光環境でした。国道246号横断デッキには、東横線旧渋谷駅ホームの特徴であった「かまぼこ屋根」や「貝形の側壁」が再現され、鉄道のレールも埋め込んであり、当時の面影が色濃く残されたデザインを懐かしく思えました。白い側壁とレール周りをスポットライトで照明して、バウンド光によって高架下にありがちな圧迫感を感じさせない光空間となっており(床面照度5~10lx)、英雄としました。
しかし、該空間に設置された渋谷ストリームのロゴのサインは輝度が高く、暗順応している団員にとって「目が痛くなる、眩しい」光として犯罪者になりました。また、ストリーム2階のイタリア系飲食店ではスポットライトによる看板照明が適切でなく、お店にとって大事な店名が見えない!という失敗例が見られ、お洒落なお店だっただけに勿体なく思われました。
壁泉によって水の流れが蘇った渋谷川は、稲荷橋と金王橋に挟まれた川面の壁際を橋の袂から青色のレーザー光で照明されていました。手法として賛否がありましたが、肯定派は再生された渋谷川に自然と目が行く「特別な青い光」に好感が持てるという意見でした。
渋谷ブリッジの通路天井には、架線を想起させる2列のライン照明が施されており、リズム感のある光は建築にマッチしていて、自然と建物の奥へ導かれました。その先にあるマスタードホテルは建物全体に統一感があり、過度な装飾や光がなく、切符売り場をモチーフにした受付は遊び心が感じられて、全員一致で英雄になりました。渋谷駅周辺は再開発が進行中ですが、「渋南」は渋谷唯一の親水エリアとしてクリエイターや訪問者に憩いや潤いを与え、「春の小川」を口ずさみたくなるような魅力的な場になって欲しいと思います。(古川智也)
東横線旧渋谷駅の面影が残る横断デッキ
渋谷ブリッジの架線を想起させるライン照明
手すり照明により場の連続性と統一感を演出
川沿いにくつろげるスペースが出現
■Team2(歩行者目線)
2班のテーマは「歩行者目線、歩行者ネットワークを整備して新たな人の流れをつくる」。渋谷が夜の歩行者にどのように見えているかを探りました。
2班はストリームの大階段の前から渋谷川沿いに遊歩道を進み、渋谷ブリッジまで歩きました。渋谷川の遊歩道は元々東急東横線の線路が走っていた場所ということで渋谷ブリッジ内から遊歩道へ線路跡を残しています。
渋谷ブリッジでは足元の線路のモチーフが天井の照明にも反映され、土地の歴史を継承する役割も果たしていて英雄という評価でした。遊歩道全体で英雄として評価されたのは、誰も寄りつきたくなかった渋谷川沿いを整備し、統一感のある照明を施すことで憩いの場所を創出したことです。遊歩道の手すり照明は、統一感を持たせ、心地よい落ち着いた光で遊歩道を照らしていました。遊歩道沿いの店舗看板の照明もあまり悪目立ちせず、この情景を作るために地域全体の照明のバランスを取っていたのが評価されました。
一方で犯罪者として目立ったのは、歩道橋の硝子面に映りこんでしまうポール灯の光であったり、バリアフリーのために後付けで設けたと思われる手すりと同じ高さで立っているボラード照明など、別々に進行した工事計画のバッティングが生んでしまった照明でした。
街歩き当日は、クリスマスシーズンが近づきつつあるためか、川の上に仮設のイルミネーションが設置されていました。このイルミネーションに関しては班内でも英雄か犯罪者か、賛否両論ありました。仮設の安っぽさや目に入る光のちらつきに犯罪者ではないかという意見もある一方、季節感があってよい・高い場所から見た時に光の道のように見えるという肯定的な意見もありました。(高野はるか)
賛否両論あったすだれ式の仮設イルミネーション
上から見ると光の道のようで高評価
渋谷ストリーム内 東横線の線路のデザインを要所に取り入れている。明るすぎない照明が高評価
店の裏側が照明をつけたことで悪目立ちしている
ストリーム大階段 光と音とを手動で動かせるインスタレーシ
■Team3(都市環境視点)
3班は都市環境視点で街歩きを進めました。渋谷川の再生が成功し人の流れが変わったのか、人が夜楽しめる環境になっているのかに着目。
まず気になったのが、明治通りから渋谷駅に向かう人の動線。まだ駅の工事が途中だからなのか、ストリームの中を抜けて駅に向かうという人は少なく、外にあるエスカレーターから駅に向かう人が大半のようです。ストリームにあまり物販がなく飲食中心の施設なので、ただ家に帰る駅周辺のワーカーには通り道にもなっていないようでした。
ただストリームのアイコンになっている大階段にある光と音とインタラクティブに遊ぶ機能を持つインスタレーションは議論はありましたが、3班では英雄と判断しました。光で人を誘い込み楽しんでもらう演出は、手法としては新しくないものの一定の効果があるという意見でした。
他に意見が割れたのは渋谷川のレーザー照明と仮設のすだれイルミネーション。この二つがあることで、人が立ち止まって写真を撮っているので、渋谷川への注目度も上がっているようですが、器具が安っぽかったり店の裏側が悪目立ちしていたりと、解決すべき課題も多く見受けられました。
懇親会会場のお店のオーナーにストリーム開業後の人の流れを聞いたところ「オープン当初は人通りが多くなったが、今は開業前に戻ってしまった。遊歩道が代官山までのびるので、それに期待している」とのことでした。渋谷川沿いの歩道は車道と交差する所に横断歩道がなかったり柵があったりと連続して歩くのに適していません。明治通りの方が人が多いのは、動線の悪さと川沿いの店舗の少なさにあり、都市環境視点からも改善すべき箇所が多くあるように思いました。(東悟子)
遊歩道が柵で中断されており、渡れな状況
明治通りの方が賑わいを感じる
手すりとボラードの高さが同じ