探偵ノート

第56 号 – 照明と睡眠

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Interviewer: 細野恵理奈

細野: 突然ですが、私が照明デザインをやろうと思ったきっかけが、自分の睡眠の持病が照明でコントロールできるようになったことです。過眠/不眠問わず睡眠に問題を抱えている人に役立てばよいなと思い、今日は睡眠改善に役立つ照明についてお話ししたいです。

面出: あなたの睡眠障害とはどういうものだったの?

細野: 私は特発性過眠症といって、受験中や食事中、歩行中にも発作的に寝てしまう異常な眠気で、普通の生活が難しい症状が15年程続きました。その治療薬のためにアメリカに留学もしていました。

面出: 今は大変じゃないの?

細野: 今は普通の人と変わらない生活ができるようになりました。

面出: あなたの家は、朝はわーって明るくなるようになっているの?

細野: Philipsのウェイクアップライトという、時計と連動して太陽のように明るくなる目覚ましを使っています。さらに部屋に3つデコラティブ照明があるのですが、それらもPhilips hueのスマート電球で、目覚ましに合わせて明るくなるようにしています。1つは大きなフロアランプで、枕の真上にシェードがくるようにして、直射日光を浴びるような感じで起きています。

最初は留学中にその目覚まし時計ひとつから始めたのですが、それまで経験したことのない程の気持ちの良い目覚めで、部屋全体にhueの電球をどんどん増やしていきました。他に、照明の使い方として健康的ではないですが、課題などで寝てはいけない状況の時、携帯の懐中電灯や貰い物のレントゲンボックスに顔をうずめて、無理やり頭を覚醒させたりもしました。

面出: そういう病理に近いものを持っている人が、光によって治癒する方法はたくさんあるよね。北欧では、日照時間の短い季節に、精神的に不安定になったり自殺する人が多くなったりする。色々な生物が住みやすい状況は、太陽が上がって明るい時間と、太陽が沈んで暗い時間が大体一定の地域。細野さん自身だって、今も夜が明けて明るくならないと目覚めないんでしょ?世の中には、とんでもないフライトの後だと起きれない人も多いようだけど、僕はどこでも自分自身をだますことができて、目覚まし通りに起きれる。

細野: それは羨ましいですね。

面出: 体温が上がって、1日体を動かしてエネルギーを使って体が疲労し鎮静していって夜に眠りについていく。ところが現代人は昼に体を動かす仕事をして疲れるっていうことがあまりないから、色々なバランスが悪いよね。自然に眠りを誘われるのがいいね。僕なんていつも適度に眠気があるんですよ。だから時差ボケとかもあんまりない。逆にいつも時差ぼけみたいな感じだから。結構うるさいとこでも眠れるし、真っ暗なところでも明るいところでも眠れる。睡眠は個体差が激しいね。

細野: どうしたら眠れない人が気持ちよく眠りにつけるんでしょうね。

面出: 昔「照明のデザイン展」を開催した時に、簡単なプロジェクターで、天井に出入りする羊が映し出される仕掛けを考えたことがある。「ひつじが1、ひつじが2…」とかってね。『眠りにつく照明』、それはパロディみたいな感じだけど、頭の中に引っかかっていることがどこかにいって、「ひつじがかわいいな〜」みたいなたわいもないところに気がいって、他のストレスが和らいだ頃にすっと眠りに落ちれるのかなと考えた。

キャンプファイヤーもいいね。夕日が沈むのを見ながら空がどんどん暗くなって、星を見ながら眠りに落ちるとか、そういうのやりたいよね。

細野: いいですね!

面出: いつも自然光に学べと言ってるけど、太古の時代から自然な眠りに大切なことは、フェードタイム。緩やかに消えていくとか、カチッと消えないこと。または、F分の1的な、揺らぎのような、自然光の中にある所作が自然な眠りとか目覚めっていうのに関係しているんだろうね。

細野: 私も夜は一定の時間になると、hueの色温度と照度が30分かけてフェードしていく設定にしています。もともと家の天井に照明がついていないこともあり、とてもリラックスできます。

面出: 気持ちのいい眠りを誘うには気持ちのいい仕事をすることが大切。ストレスなく、体を疲れさせたり汗をかいたりすれば、頭の中のもやもやも解消される。結論は、自分のリズムで快く生活し、エコロジカルに生きることが大事ということだね。

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