探偵ノート

第018号 – 光の建築家

Update:

コーヒーブレーク: 面出さんと私
Interviewer: 山本 幹根

テーマ:『自然光のとらえ方』

幹根:今日はいい天気ですね。日本では四季があり様々な表情を見せる自然光はとても気持ちいですよね。 ところで、僕は8年前に入社しその時の志としては、建築の昼光照明をデザインしたいと考えていました。

サーリネンやルイスカーン、安藤忠雄の建築が上手く自然光を取入れていて、建築自体が照明装置としてデザインの一部となり機能しているところに感動しました。 学生の時は時間があればよく建築を見に行ったのですが、美術館などは空間全体を印象的に演出しとても感動的な空間になっていると感じました。

建築は体験することが重要だと考えています。時間とともに様々な表情の変化が楽しめて感動を与えてくれます。 まず、自然光のとらえ方として、北欧とアジアでは基本的な感性が違いますよね。

面出さんは様々な国の人と交流があるので、その人たちとの会話の中で何か違いなどは感じられますか。

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キンベル美術館
ルイスカーンのキンベル美術館

MITクレスギ礼拝堂
サーリネンのMITクレスギ礼拝堂

面出:どちらが優れているのかは言いにくいけれど、感覚的に鋭く繊細なのは北欧の人たちではないかと思うね。 北欧の街の方が太陽高度が低く建物の内部まで光が差し込んできたり、沈む太陽や昇る太陽を考えて街のつくりができているように感じる。 その長い影がとても印象的で、影があるから光の印象も強く感じられ赤道付近に住む人たちと比較して太陽の恩恵の少ないことが、そんな感性を育てたのだろうね。

幹根: そうですね。影をデザインすることにより、より光が強調されることもあるし、グラデーションの様に柔らかな光として感じられることもありますね。
近代の建築家は、特に自然光を取入れる工夫をしていた様に思います。その土地の自然光を取り入れることで空間に表情を与えています。
実際見に行っていないのですが、近代建築でいうとルイスカーンのキンベル美術館やアアルトの北ユトランド美術館などは、 建築自体が照明装置となっており、近いうちに是非見に行きたい建築です。
面出さんは海外でいろいろと建築を見ていると思いますが、特に印象的だった建築はありますか。

面出:今まで様々な建築を見てきたが、サーリネンのMITクレスギ礼拝堂が素晴らしいと感じた。
祭壇に光が上から降りてきて神の存在を演出しているけど、素晴らしいのは周りの水盤から反射した光が壁面を照らし、巧妙な演出があるからこそだと思う。
月並みだけど、コルビュジェのロンシャンの教会でも涙が出そうな自然光に出逢ったよ。午前から午後へ空間への採光がドラスティックに変化していった。もちろん、キンベル美術館には何度も行っている。

幹根:自然光を巧みに取り入れる建築設計の手法やディテールなどは、照明デザイナーの興味や責任範囲と重複する様な気がします。
照明デザイナーの仕事をそこまで拡大したいところですが、実際にはなかなか仕事として成立しない難しい領域だとも思っています。
経験的な事であれば、建築家に対して昼光についてもアドバイスやアイディアなどの提案はできると思いますが。

面出:僕たちは建築設計を変えるくらいの生意気なことを言うしかない。
照明デザイナーは、ずけずけと建築家の脳みその中に入り込んでものを言うべきなのです
。 土足で相手の家に入り込んで叱られないような関係になることが大切だと思う。
もちろん、建築家は光に対するアイディアは持っている。
建築家が自らゾクゾクする様な昼光デザインのスケッチなどを沢山持っていると嬉しいね。

幹根:光に対しては、頼まれもしないアイディアや生意気なことをいうことも必要ということですか。 リスペクトした建築を、皆で良くするための共同設計者でもありますしね。

面出:照明デザイナーは、光のフィルターをかけた建築設計者なんだよ。

幹根:なるほど、建築照明デザイナーは、光のデザインという技をもって建築設計に参画しているのですね。照明の領域が広がった感じがします。 照明デザイナー以外の職能を表す言い方はないものでしょうか。

面出:光の建築家なんていうのはどうかな。。

幹根:ああ、それ好きですね。 今まで、なんとなく照明デザイナーという言葉に引っかかっていた気がします。 何かすっきりしたような気がします。 一層精進して、これからは光の建築家という名に恥じない仕事をします。

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