第13回世界照明探偵団フォーラム in 京都
世界照明探偵団フォーラム) を2002年の東京大会を皮切りに、ニューヨーク、北京、ストックホルム、シンガポール、マドリード、台北などほぼ毎年、全12 回のフォーラム、ワークショップを世界各都市にて開催してきました。
世界照明探偵団の発足の地である東京から12 都市を巡回したところで、再び日本に戻り、京都市民や学生と共に、京都の町あかりを考えるフォーラムを開催。
3 日間のフォーラムでは京都らしい明かりとは何かの議論を積み、京都の町あかりのプロポーザルを作成。
そのプロポーザルを試す仮設ライトアップ(ライトアップニンジャ)を実施しました。
コンテンツ
世界照明探偵団フォーラムは主に以下の4つのコンテンツで構成されました。
①トークイベント
フォーラム共通テーマ「Heritage」を基調としたトークイベントを開催
・プレゼンナイト『京都+ 光の文化遺産を語る』
・トークイベント『歴史都市の光- メキシコシティー、ベルグラード、マドリード、京都』
②学生ワークショップ
ライトアップの班ごとに分かれたグループディスカッション
③ライトアッププレゼンテーション&講評
・学生による4つのエリアのライトアップとデザインコンセプトの発表
・照明探偵団メンバーによる講評
④パーティー
イベントにご協力いただいた方を招き、パーティーを開催
・Welcome Party
・Farewell Party
プレゼンナイト 6 月8 日@京都文化博物館 別館ホール
テーマ:『京都+ 光の文化遺産を語る』
トークイベント会場となった京都文化博物館別館ホール
登壇者:
・京都造形芸術大学
・京都大学建築学専攻居住空間学講座+ 石田 研究室
・京都市立芸術大学環境デザイン研究室
・京都工芸繊維大学阪田研究室
内容:京都在住の大学生が今気になる夜のスポットの光環境を調査。
そこは光の英雄?それとも犯罪者?光の提案まで盛り込んだプレゼンテーション。
②光のプロフェッショナル7 人のリレートーク
テーマ「Heritage」
・面出薫
・葛西玲子
・Jan Ejhed
・Charles Stone
・Lisbeth Skindbjerg
・Christof Fielstette
・Uno Lai
内容:世界を代表する照明のプロフェッショナルによる、あかりのリレートーク。
京都文化博物館で開催されたトークイベントは大学生による街歩き調査の発表からスタート。京都の観光エリアからローカルエリアまで様々なエリアの光環境に対し、光の英雄か犯罪者か独自の考察をし、同時に改善案の発表も行いました。門川京都市長による講評では、学生たちの調査を称えつつ京都が抱えている光環境の問題点や今後の展望について話されました。
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学生による京都の光の英雄と犯罪者の発表が行われた
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熱心にプレゼンテーションを聞く探偵団メンバー
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京都への提案も発表
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門川京都市長が挨拶
後半のリレートークでは海外の探偵団メンバーがそれぞれに自国の「Heritage の照明」に関して7分間のプレゼンテーションを行いました。持ち時間の短い中で、バラエティーに富んだ内容をスピード感ある軽快なトークが続き、一瞬たりとも飽きさせない充実したトークイベントとなりました。
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探偵団海外メンバーによるリレートーク
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自分の街の遺産への照明について語った
トークイベント 6 月10 日@ロームシアター京都パークプラザ3階共通ロビー
『歴史都市の光- メキシコシティー、ベルグラード、マドリード、京都』
レクチャー&パネルディスカッション
登壇者:Gustavo Aviles/Ignacio Valero/Aleksandra Stratimirovic
モデレーター:面出薫
街並み自体が歴史的な価値を持つメキシコシティー、マドリード、ベオグラードの照明の現状や問題点、役割をそれぞれ紹介。
大切な文化遺産を夜の景観の重要な要素としてどのように取り入れていくかや京都の夜景への期待なども話されました。
100名ほどの参加者からは積極的に質問も上がり、会は盛況のうち終了しました。
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会場は100名を超える参加者で大盛況
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各都市の遺産への照明について語られた
学生ワークショップ 6 月9 日@ロームシアター京都 & ふれあい会館
9日午前中はライトアップの担当班ごとに集まり、前日のシンポジウムで発表した「京都の光の英雄と犯罪者」のディスカッションを行いました。京都らしい夜の景観とはどんなものなのかを、照明探偵団海外メンバーも交えて意見交換をし、街における照明の役割の造詣を深めました。
午後には、午前中の話し合いも踏まえながら、ライトアップ本番に向けての最終案の詰めを行いました。海外メンバーからの意見を聞くことで学生のオリジナル案にさらに深みが増したようでした。
夜はライトアップの現場に赴き、本番に向けての具体的な作業の段取りや最終案の照らし方、演出方法など実験を行いました。
実験中も通行人から何のイベントか質問され、ライトアップイベントへの関心の高さがうかがえました。
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ROHMシアター内でのワークショップの様子
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ライトアップの最終プランを検討
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松原通チームのワークショップの様子
ライトアップ現場実験 6 月9 日
日没後に行われた現地での照明実験では、本番用の機材を使用して、プロポーザル案を実際に現地で創り上げ光の効果を確認しました。思い描いていたイメージとは異なる、迫力のある生の光の効果に学生達から驚きの声も聞こえてきました。照明器具の配置や照射角度、RGB のカラーライティングの色味に至るまで、探偵団メンバー指導のもと活発な意見交換と実験が行われ、翌日のライトアップ本番に向けた現場調整が深夜まで続きました。
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実際の器具を使用しての実験
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平安神宮は場所が広いので、使用する機材も大量
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演出効果を何度も確認
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使用する機材の確認
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現場での最終確認
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水に入っての調整も
ライトアップニンジャ 6 月10 日
@松原通
担当チーム:京都大学建築学専攻居住空間学講座+ 石田 研究室
松原通りを担当したのは、事前に地域住民に向けてプレゼンテーションを行い、建物の所有者への挨拶など入念に準備を進めてきた京都大学チーム。烏丸通を挟み西側の3 カ所(末冨・aeru gojo と新玉津島神社)では鮮やかなカラーライティングを用い、東側の2 カ所(今井邸・因幡薬師)は電球色をベースとし京都らしいライトアップとなりました。青と緑に照らされた電柱が突如現れたり、篠笛の奏者に連れられ海原を連想させるプロジェクションを施された参道を歩くなど、プレゼンテーションでは聴衆に驚きを与えました。
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メンバーによる講評も行われた
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新玉津嶋神社 非日常の空間を演出
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因幡薬師前の参道 篠笛奏者にいざなわれ境内へと向かう
@平安神宮 & 応天門
担当チーム:
平安神宮境内:京都工芸繊維大学阪田研究室
応天門:京都市立芸術大学環境デザイン研究室
砂利の中での器具運搬に加え、防犯センサー対応など予想外の試練にも多くの汗を流した平安神宮チーム。応天門を挟んで、門前は京都市立芸術大学、境内は京都工芸繊維大学の学生がそれぞれ担当しました。社殿建築に興味津々の海外探偵団メンバーと学生と熱心に議論を重ね、最終案を決定。青色の松を両脇に、朱色が内側からにじみ出るような応天門をくぐると、青く染まった広場に並ぶキャンドルが視線を大極殿まで誘導。奥行きのある夜景を演出しました。社殿の朱色が引き立つような赤や、日本古来の青色については学生たちの希望の色となるまで調整を行いました。境内から立ち上る光柱を目印に、多くの人が参拝に訪れ、静かなライトアップを楽しんでいる様子でした。
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学生によるコンセプトプレゼ
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探偵団メンバーによる講評
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応天門のライトアップ
@疏水 & 大鳥居 & 白川
担当チーム:
疏水&大鳥居:京都造形芸術大学
白川:京都市立芸術大学環境デザイン研究室
疏水・大鳥居のライトアップは京都造形芸術大学の学生達が計画。学生達は大鳥居と疏水をひとつの景観として考え、その先にある平安神宮のライトアップとも連続性のあるライトアップを思案しました。仁王門通と並走する護岸のテクスチャをサーチライトでなめるように照らし、大鳥居は彩度のあるオレンジの光で陰影を演出し情緒的な光景をつくりました。講評の際はオーディエンスの誘導場所やプレゼンテーション中に光のオペレーションをみせるなどの工夫を凝らしました。
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普段闇に沈んでいる疏水に照明を施す
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大鳥居にも存在感が
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多くの通行人も足を止めて見学
疏水からの支流・白川を担当するのはデザインを勉強し始めて2 週間の京都市芸術大学2 年生。与えられた素材でオリジナルランタンを作り、川沿いにならべて落ち着いた雰囲気のライトアップを提案。LED キャンドルが灯されたランタンを並べると、低い色温度のゆらゆらした光が半透明の素材を通して、おぼろげでリズミカルな光が細い歩道を演出。世界初の試みとなるファイバーを白川に漂わせ” 光の西陣織″と称し、白川に非日常な光をもたらしました。
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穏やかな流れにあうあかりを演出
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学生手作りのランタンが30個並ぶ
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丁寧にコメントを返すメンバー
照明探偵団の本部がある日本での15年ぶりのフォーラム開催ということで、過去最大で内容の濃いもの、そして地元京都にとっても意義のあるものにするというスローガンのもと約1年に及ぶ地道な下準備を経て、無事終了させることができました。ご協力いただきました関係者の皆さま、心より感謝申し上げます。夜景について語り合うプラットフォームを作るのが探偵団の目的。今回のイベントもそのきっかけになったのではないでしょうか。